組織のマネジメントに携わる中で「プロフェッショナリズムとは何か」を自問自答することが増えた。中日ドラゴンズのチーム改革について書いた『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』を読んでから、それがさらに加速している。
突き詰めていくうちに、プロフェッショナリズムの本質とは「普通のことを確実に、淡々と、結果が出るまでやる」であることが見えてきた。自分と雇用主(あるいはそれに代わる存在)との契約や期待関係のもとで、求められていることを徹底的にやり抜く。与えられた権限を最大限に活用し、勝利や売上達成というゴールのために行動し続けられる人こそが、プロフェッショナルと呼べる。
では社員がプロフェッショナルとして行動できるようになるためには、どのようなサポートが必要だろうか。これまで私が実践してきたチームや社員の育成をベースに整理してみよう。
社長であれ一般社員であれ、仕事で結果を出すまでには、以下の成長段階を踏むことがほとんどだ。誰もが同じような壁にぶつかるだろう。
具体例を挙げてみよう。過去に私は「商談で成約できない」という組織課題に直面した。そこで、まずは自分自身が「常にできる」ようになることから始め、二年をかけてノウハウを組織へ展開していった。現在では自分が商談に関わらなくても、コンスタントに成約が生まれる状態が作られつつある。「できない」から「コンスタントにできる」段階へとジャンプできたように思う。
成長段階によって必要なアプローチは大きく異なる。「できない」から「たまにできる」へステップアップできないケースでは、圧倒的にティーチングが不足していることが多い。
たとえば営業において一定の提案力があっても、「レスポンスが遅い」「返事を忘れる」「相手を見て話さない」などの、基本的なビジネススキルが欠けていると成約には至らない。この段階にいる人に「あなたはどう思うの?」といった安易なコーチングをしても意味がない。まずは「基礎を改善しましょう」と明確に指摘すべきだ。
ここをテコ入れしないと、土台が不安定なまま、いびつな形でステップアップしてしまう。ジュニア層や基礎的なミスが多い人には、まずは大リーグボール養成ギプスのような具体的なフィードバックを行う。その改善に集中させ、着実に積み重ねていけば、自然と「たまにできる」「コンスタントにできる」状態へとステップアップしていける。
といっても、成長のタイミングを予測することは難しい。いつ、どんなきっかけでステップアップできるのかは、誰にも分からない。
そのため、とくに「たまにできる」段階にいる人は、成功パターンの分析が効果的だ。自分がどんな状況において「できる」のか特定し、その条件を見極めることが次の成長につながる。
昨年ベイジではマネジメント研修を実施した。マネジメント層が経験学習理論を実践し、ジュニア層へ成功体験の分析を促せるようになった。それをきっかけに「次の段階へ進めた」との手ごたえを得られた社員も出てきている。
「たまにできる」状態から「コンスタントにできる」状態、そしてさらに上の段階へ進むためには、どのような条件下でも揺るがないパフォーマンスを発揮することが求められる。そのためには、違うタイプの顧客へ対応する、違ったサービスを扱ってみるなど、場数を増やすと同時に、これまでとは異なる性質の経験を増やすことが重要だろう。
さまざまな顧客・案件においても継続的に安定したパフォーマンスを発揮している人は、顧客へ提供する価値の総量が高くなっていると言える。
メンバー間で成長のスピードが異なるのは自然なことだ。それぞれが自分なりの葛藤を抱えながら前に進んでいる。しかしベイジは社員一人ひとりがコンスタントに高いパフォーマンスを発揮できる状態を目指したい。そしてそれぞれのステップアップが互いに刺激を与えあえるようになることが、私たちが目指すべき次の成長段階だと考えている。