文章を書くときや、誰かに自分の考えをうまく伝えたいときに「知っているはずの言葉が出てこない」という経験はないだろうか。実はそれこそが、言語化が苦手であることのサインだ。
「言葉が出てこない」と感じる原因そのものについては、枌谷さんが昼礼で見せてくれた分析が非常にわかりやすい。
発想が出てこない → 思考力
言いたいことが整理できない → 編集力
うまい言葉が出てこない → 表現力
これら三つの力はいずれも重要だが、理論を学ぶことで身につけることは不可能ではない。実際、関連する本は数多く出版されているし、日々努力を続けている人もいるだろう。
でも、もしそれなりに努力を重ねているのに、とっさに言葉が出てこないことで悩んでいるのなら、もっと根本的な問題を疑ってみる必要がある。結論を先に言えば、「普段から使っていない言葉は、そもそも出てこない」ということだ。
使っていない筋肉を急に動かすとひどい筋肉痛になるように、普段あまり料理をしない人が調理すると時間ばかりかかるように、慣れていないことはまず上手にできないものだ。絵を描き慣れていない人が急にうまい絵を描けるわけでもない。
私たちは「知っている言葉は、いつでも自由に使える」と思いがちだが、これらと同じように知っているだけでは技術(スキル)としては使いこなせない。敬語に慣れていない新入社員に入社研修が必要なように、普段から使い慣れていない言葉はいざというときにスムーズに出てきてくれないのだ。
言語化における基礎体力とは、言い換えれば「語彙と表現力を鍛えること」だ。繰り返しの学習が効果的であることは多くの場面で実感されているが、言葉の場合も同じだ。インプットをするだけでなく、多くの表現をアウトプットし、意識的に使うことで自分に馴染ませることが重要になる。
学習というとついインプットすることにフォーカスしがちだが、こうした地道なアウトプットの積み重ねがいつの間にか強力な武器になってくれる。もし「言葉が出てこない」ことで悩んでいるなら、まずは普段からさまざまな表現を使うことを意識しつつ、「自分の言葉として“使える技術”にまで高めていく」ことを目指してみてはどうだろうか。