「マネジメント研修は管理職だけのもの」——多くの企業でこのような考えが今も根強く残っているのではないでしょうか。
ベイジでは元々マネージャー層だけが受講していた坂井風太さん(株式会社Momentor代表)のマネジメント研修を、現在はほぼ全社員が受講しています。「マネジメント研修」と聞くと、管理職の立場の人だけが受けるものだと思われがちです。実際、私も最初はそう思っていました。
しかし、今ではマネジメントの考え方を全社員が共有することが重要だと考えています。会社としても、研修だけに留まらず、代表が昼礼でマネジメントの考え方について話すなど、組織全体への浸透を様々な形で図っています。
なぜマネージャーだけでなく、全社員がマネジメント研修を受けるのか?
この取り組みについて、私たちの事例を紹介しながらお伝えしていきます。
マネジメント研修を全社員が受講することで得られる最大の利点は、「共通言語」が生まれることです。
坂井さんが提唱するマネジメントの考え方やフレームワークが社内の共通言語となり、コミュニケーションがスムーズになります。例えば、誰かにフィードバックをする際も「マネジメント研修の観点を活かせた内容だったか」と振り返ることができ、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
具体的な例を挙げると、「リアリティショック」という概念を共有することで、新入社員へのサポートがしやすくなります。リアリティショックとは、入社後に理想と現実のギャップに直面する現象です。研修を通じて「誰にでも起こりうるもの」として理解されているため、新入社員自身も過度に自責したり不安を感じずに済みます。また、周囲の社員もその時期を予測してサポートしやすくなるという利点があります。
特にフルリモート環境では、物理的な距離を超えて心理的な距離を縮める共通基盤が重要です。研修で学んだ内容を全員が理解していることで、組織内の意思疎通がより円滑になります。
マネジメント研修は、マネージャーのスキルアップだけでなく、「マネジメントされる側」の受け止め力を向上させる効果もあります。
私はまだ誰かをマネジメントする立場にはありませんが、研修を受けたことで「マネジメントされる側としての心得」を学びました。マネージャーがどのような意図でフィードバックを行い、何を目指しているのかを理解することで、受け取るフィードバックの質が変わるのです。
特に印象的だったのは、「変われそう感、やれそう感」がフィードバックの重要な要素だという考え方です。研修を受けてから、マネージャーたちが常にこの「やれそう感」を意識してコミュニケーションを取っていることに気づきました。このような意図を理解することで、以前は単なるアドバイスとして受け止めていたものが、自分の成長を促すための工夫だったと分かり、マネージャーの意図や配慮に感謝の気持ちも生まれるようになりました。
特に新入社員など、職場でのフィードバックに慣れていない段階で研修を受けることには大きな意味があります。漠然とした自責思考をロジカルに分解する方法を学べるため、より建設的な自己成長に繋げることができるようになります。
社内昼礼で、代表・枌谷さんは「どんな仕事を選んでも結局はマネジメントの理解が求められる」と語りました。マネージャーにならなくても、マネージャーの補佐や同僚との協働において、マネジメントの考え方は不可欠です。
また、生成AIが台頭してきた現代においても、人と人との関係性を築くマネジメント力は薄れることのない重要なスキルです。そのため、マネジメントの考え方は全社員が知っておくべきであり、全社員に浸透させてこそ意味があります。
マネジメント研修を通じて私が最も強く感じたのは「組織として成長するためには、マネージャーだけでなく全社員が共通認識を持ち、支え合う文化を作ることが重要」ということです。
マネージャーの考えや意図を理解することで、社員も適切に行動できるようになり、組織全体の成長が促進されます。お互いの役割を尊重しながら協力し合うことで、個人と組織の両方が成長できるのです。
学んだマネジメントの知識を実践で活用するのは簡単ではありません。しかし、全社員が同じ研修を受けていることで、お互いに学びを共有し、実践における気づきを伝え合える環境があります。
全社員がマネジメントについて学ぶことで、個人としての成長と組織としての成長、両方を実現することができます。共通言語を持ち、相互理解を深め、より強固な組織文化を築いていくこと。マネジメントする側もされる側も、同じ視点を持つことで生まれる相乗効果は、リモートワーク中心の環境においても、組織の大きな強みとなっています。
マネジメントの考え方は、役職や経験に関わらず、ビジネスパーソンとして成長するための重要な要素です。皆さんの組織でも、「マネジメント=マネージャーのもの」という固定観念を超えた取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。