チーム定例ミーティングで時間をいただき「藤本塾」を開講した。
チーム発足直後に会社の利益についてレクチャーしたきり、約半年ぶりの実施となる。私自身のアウトプットの場としての意味もあり、チームマネージャーとは以前から定期的な勉強会について話していたが、諸事情によりなかなか着手できずにいた。そんな中、メンバーのサイト分析へのフィードバックをきっかけに「何かできることないかなぁ」と考え、「やるなら今でしょ」と決意するに至った。
前日の夜にChatGPTにアウトラインを作成してもらい、修正指示とドキュメント出力で準備時間は実質30分程度だった。この効率の良さには理由がある。日頃から書評を書く際に「実務でどう活用できるか」という視点で考えていたこと、そして過去の自分がつまずいたポイントをAIにインプットしていたことだ。
初回のテーマは「正しく、深い思考を行うためには」とし、日々の業務における思考の質とアウトプットの関係性について、自身の経験を交えながら展開した。
塾開講に踏み切れたのは「私だからこそできるレクチャーがある」と発想を転換したからだ。つまずいてきた経験があるからこそ、課題の原因と改善策を見極められるようになり、リアルな体験を添えて説明することができる。
自分の経験に基づく内容である以上、全ての人に当てはまるわけではないだろう。しかし、参加者が自ら考えてアクションを起こすためのきっかけになってくれれば、それで十分な価値があると考えている。
なぜ塾を開講しようと思ったのか。結論から言うと、次の3つの要素が重なり合って塾開講に至った。
大元は今期のOKRで定めた「メンバーの成長促進ができるディレクターになる」があった。しかし自身の課題とも向き合う必要があったため、すぐに行動できずにいたのだがタイミングが重なり悩むのをやめて行動することができた。
メンバーの成長を促進する前に、自分自身が成長しなければならないという前提がある。成長するためには経験が必要だが、とある成長メソッドによれば「知識と体験が揃ったときにはじめて経験になる」という。この視点で自己分析すると、当時の私には更に深めるべき知識と積むべき体験が不足していた状態だ。
知識獲得の転機は同僚からの「1日3冊読んでインプットした」という言葉だった。これをきっかけに読書法を根本から見直し、「自分の業務への応用」や「疑問点」などを積極的に書き込むアクティブラーニング式に変更したことで、自分でもインプットの質が変わったと認知できるようになった。
一方、体験の獲得については正直悩んでいた。仕事の中での体験機会は限られていると思い込んでいたからだ。
1つのプロジェクトで得られる体験の場数は限られているため、これまで何度か「体験の場を増やさなければ」と考えていたが、振り返ってみると「どうやって体験を増やすか」という方法論から入っていたため、根本的な解決に至らなかった。本当に考えるべきは「体験の場がなぜ限られていると感じるのか」という問いだった。
体験の場が限られているのではなく、自分が行動していないから体験の機会が少ないように見えていただけだ。顧客とのやり取りだけが体験ではない。日報の作成、書籍レビュー、フィードバック、チーム定例ミーティング、ディレクター会議など、周囲には体験の場が溢れていた。それらを成長機会と捉え、積極的に行動することが重要だったのだ。
最近メンバーへのフィードバックに力を入れているのは、自分の体験の場を増やす意図もあるが、本質的には私が長く抱えてきた悩みと同じ課題を持つメンバーには、もっと効率的に次のステップに進んでほしいという願いからだ。
自分自身が試行錯誤した経験から確信していること。それは「私ができることは、他のメンバーもできるはず」ということだ。できない理由はない。だからこそ諦めてほしくないし、本人が諦めない限り私も徹底的にサポートする姿勢で臨んでいる。それは全く苦ではなく、むしろ喜びですらある。
こうした背景に加え、マネジメントをテーマにした全社昼礼が背中を押してくれた。「マネージャーでなくてもできること」「私だからこそできること」を考えた時、真っ先に思いついたのが「塾」という形だった。
「藤本塾」という名称は、元々は社内のゲーム仲間へのアドバイスから自然発生したものだ。「勉強会」よりもキャッチーで親しみやすく、メンバーに受け入れられやすいと考えた選択だった。
この取り組みはまだ始まったばかりだが、チームメンバーからの反応は上々だ。「塾」という形式を選んだことで、形式ばらない雰囲気の中で知識や経験を共有できる場が生まれている。
今後は当初のOKR通り定期的な開催を通じて、メンバー同士が互いに学び合い、成長し合える文化を醸成していきたい。個人の成長が組織の成長につながり、最終的には顧客の成功に寄与する—そんな好循環を生み出す第一歩として、この取り組みを大切に育てていきたいと考えている。