計画を立てて仕事をすることがなぜ大事なのか

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代表取締役 枌谷 力

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どんな仕事でもそうだが、特にWebの仕事をする上で「計画を立てる」というのはとても大切なことだ。と書くと「そんなの当たり前だ」と笑われるかもしれない。では、以下のような質問をされたとき、それでも自信をもって「やっている」といえるだろうか。

  • 月曜日の段階で、その週の計画がきちんと立ててあるか?
  • 当日朝の段階で、その日やるべきことが細かくタスク化され、時間配分されてるか?

この程度のこともせず、「自分は計画的に仕事をしています」とはなかなかいえないのではないだろうか。

個人的には、20代のかなり早い段階で、仕事を小さなタスクに分解し計画を立てる習慣を身に付ける必要があると考えている。さもなければ、時間の先読みもせずにその場の思い付きで仕事をする習慣が染みついてしまう。そのまま30代になると、計画を立てることも、時間の先読みをすることも、時間を効率よく使うことも、どれも苦手な人になってしまう。

仕事において「計画」はなぜ大事なのか。

答えは単純である。ほとんどの仕事には時間的制約があるからである。無尽蔵に試行錯誤はできない。いくら質が高い仕事でも、納期を守らなければ価値が失われる。多くの仕事にはそういった時間的制約が含まれる。

だからこそ「この時間までにこれを終わらせる」という計画性の有無が、その人の仕事の質やその人に対する信頼に直結する。計画性なく仕事をする人に大きな仕事は任せられない。あまりにも行き当たりばったり過ぎる人を見て、「この人は結果を出しそう」とはなかなか思えないだろう。

実はこのような仕事の計画性に対する意識は、大手企業など大きく安定した組織ほど疎いようにも思う。大きく安定している組織ほど、個々人の数分や数時間という時間が業績や成果に与える因果関係がハッキリしなくなるため、時間に対する意識が低くなり、社員は計画を立てて動かなくなる傾向にある。上記のように、その日の仕事を時間刻みで管理している人も少数派になるのではないだろうか。

しかし、高学歴で頭のいい人たちを揃えても、計画的に仕事をする教育がされていないと、場当たり的な対応を積み重ね、合理的でない判断を繰り返し、無駄な仕事ばかりをし、残業続きの職場を作り出してしまう。当然そこで働いていても、時間を読んで仕事をするという、ごく基本的なスキルが身に付かず、その会社の外に出たときに仕事ができない人になってしまう。計画を立てない習慣というのは、徐々にキャリアを蝕んでくるものである。

また、仕事には時間的制約があるからこそ、計画通り進まなくなった際に、周囲との調整や交渉が必要になる。

しかし計画も立てず、行き当たりばったりで仕事をする人は、調整や交渉のタイミングが読めない。結局追い込まれて、深夜まで残業するなど、時間をあてがうことでしか解決できなくなる。しかしこんな仕事の仕方をする人には、永遠に調整力も交渉力も身に付かないだろう。ただ上司やクライアントに言われたまま仕事をし、追い詰められて時間を食いつぶす。このように、計画的に仕事をしない風潮が、労働環境の悪化に繋がっていく。

しばしば「計画を立てても変わるから意味がない」という人がいる。しかし、「計画を立てなさい」という話は「決めた計画通りに動きなさい」という話とイコールではない。

仕事には必ず不確実性が存在する。原因不明のバグが発生して解決に時間がかかった。PCの調子が悪くて修復に半日使ってしまった。体調が悪くて休むスタッフが出た。クライアントの要望が想定以上のボリュームだった。このように、計画通りに終わらないこと、計画していなかった予期せぬ事態が発生することは日常茶飯事である。そもそも、計画通りに進むことなんて稀だ。

しかし、そんな風に計画通りにいかないことがあっても、事前に計画を立てていれば、その遅延が全体にどのくらい影響を与えるのか、どの作業が押し出されるのか、提出までに間に合うのか、間に合わないのならどのタイミングでスケジュールの再調整をかけるべきか、先手先手で動くことができる。

一方で計画をきちんと立てて仕事をしない人は、このペースのままで予定通り終わるのか、あるいはとても間に合わないペースで仕事をしてしまっているのか、どのタイミングで上長の確認を取るのが現実的か、それらが予測できない。結果、ギリギリになって慌てだす。

計画は、計画通り動くために立てるのではない。むしろ想定外のことが起きるときのために立てておくべきなのである。

計画の立て方について最初に悩むのが、分解するタスクの粒度だろう。これをどのくらいにするかは、職種、仕事内容、その人の計画的に仕事をこなすスキルに依存するので、一概にはいえない。

ただ、計画を立てることに慣れていない人は、最初のうちはできるだけ細かく分解して計画を立てるのがいい。

例えば、一日の予定を立てる時に

10:00-19:00 HTMLコーディング×5画面

とざっくりした予定にするのではなく、

10:00-12:00 HTMLコーディング(画面A)
13:00-14:00 HTMLコーディング(画面B)
14:00-15:00 HTMLコーディング(画面C)
15:00-17:00 HTMLコーディング(画面D)
17:00-19:00 HTMLコーディング(画面E)

というように、画面単位で分解するのである。このようにすると、例えば15時の時点でどこまで終わってないとマズいかの目安が分かるし、何か突発的なことが起きた際には、今日中にどのくらいの作業まで終わるのかがすぐに分かる。

これは作業がある程度見えている職種の場合なので、例えばディレクターのように時間が全く読めない仕事の場合には、毎日2時間ディレクションの時間を確保し、他の仕事の進行状況に合わせて、この2時間を細切れで使って行く、というやり方もある。

いずれにしろ、計画を立てて仕事をするということを習慣化していかなければ、時間をコントロールした仕事の仕方は身に付かない。

もし、自分には計画を立てる習慣がない、完了の予想がいつも大きく外れてしまう、ついダラダラと時間を浪費してしまう、ギリギリになって慌ててばかりいる、スケジュール調整のタイミングを見失い追い込まれてしまう、というのであれば、上記のように細かく時間とタスクを区切って仕事をしていくといいのではないか。

私個人の経験でいうならば、これを2年続けるだけで、仕事における時間の使い方が随分とうまくなるはずである。

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