ベイジにはフィードバック文化が根づいている。デザインや原稿などの制作物へ所感を伝えるのはもちろん、商談や顧客提案の後にはオンラインで集合し、「感想戦」としてGoodやMoreを伝え合う。
一般的にフィードバックはメンバーを育成する手法のひとつと言われる。しかし過去イチでフィードバックの交通量が多いベイジで仕事をするうちに、実はフィードバックは「する側」にもさまざまな恩恵があることに気づいた。
自分の制作物の善し悪しを客観的に判断するのは案外難しい。しかしメンバーのアウトプットを見るときは1ユーザーの立場なので、「意味が分かりづらいな」とか「読むときに引っかかりがある」などの改善ポイントを客観的に見つけられる。
そうして第三者視点で見つけた改善ポイントには、自分がよくやらかすものもあったりする。それらを自分用の戒めリスト(=チェックリスト)に入れておけば、自分の成果物を推敲するときに見返せる。一度のフィードバックが二度三度と役に立って、お得感たっぷりだ。
フィードバックするためには、感じたことを言葉にする必要がある。「なんかちょっとアレな気がします」では、考えを相手に共有できない。伝えるために「アレ」がなんなのか必死で深掘りし、ときにはなぜ「アレ」になったのか原因を探しにいく。これが思考の言語化や情報の構造化をするよい訓練になるのだ。
またフィードバックのために普段意識していない仕事のコツやポイントを言語化しておけば、形式知として他のメンバーも活用できる。これをコツコツ貯めていけば、会社のナレッジにもなるだろう。
コンテンツ制作にしろ顧客への提案にしろ、自分が直接手がける仕事の数には限りがある。しかしメンバーへフィードバックをすることで、対象物や体験を自分事化して深く考える機会をつくれる。
さらに人のアウトプットをなぞることで自分にはない思考や手法を学べるし、これが自分の仕事を振り返るきっかけにもなる。当事者として矢面に立っていなくても、自分の経験値を間接的に増やし、次の仕事に活かせるのだ。
フィードバックとは自分の知識や経験をシェアするだけの行為ではない。新たな気づきを得て、思考を整理し、自分の仕事に循環させるクリエイティブな仕事なのだ。キャリアが浅いうちはフィードバックを受ける回数が多いと思うが、積極的にフィードバックを「する側」にもなってみるとよいと思う。