積読が大好きだ。今年も多くの良書を積むことができて満足している。しかし何冊かは読了してしまった。読んだ本の中から自分の行動に良い影響を与えた3冊を紹介したい。
MicrosoftのAzureチームでプロダクト開発をしている牛尾剛さんの仕事術。読んですぐにやってみたのが「相手の負荷軽減のために情報量を減らす」こと。意識的に情報を間引いてチャットを送ってみたところ、とくに支障はないようだ。必死に情報をつめこんだチャットを、相手がきちんと読んでくれなかった..なんて経験がある方もいるだろうが、端的なメッセージなら楽に速く読めて理解がしやすい。必ずしも「丁寧は正義」ではないのだ。
ウェブ制作の仕事ではクライアントのビジネスを理解することが必須だ。しかし馴染みのないビジネスだと学ぶのに時間がかかることもある。そんなときはアナロジー「類似のものから推論する」技の出番だ。遠い世界のことでも既知の事柄との共通点を見出だせば、「つまりこういうことかな」と事象の関係や構造に当たりをつけて理解しやすくなる。たとえば未知なる真っ赤な料理を見て「レッドホット・地獄エビチリに色が似てるから辛いかも」と推論し覚悟を決める、といった具合だ。
絶対的推し・ラグビー日本代表の堀江翔太選手が2022年に出版した本。所属チームや日本代表など数々のチームでキャプテンを務めてきた堀江選手。キャプテンの座を若手に譲り「平(ひら)のベテラン」になった現在、堀江選手が心がけているのが「口を出さずにまず動く」ことだそう。私も社会人歴だけ見れば超ベテランの立場だ。とくに社内で新しい試みを始めるときなどには「まず動く」ことを意識するようにした。
この本は堀江選手の「2023年のW杯フランス大会に出たい」という言葉で結ばれている。ふたを開けて見れば、37歳になった堀江選手はW杯の全試合でスタメン出場。イングランド戦では神がかったコントロールでキャリアハイともいえるスクラムを見せた。ご本人曰く現在が「過去イチのフィジカル」。「フロントローのピークは30歳を過ぎてから」と言われるらしいが、昨年36歳でリーグワンの初代MVPになった事実がそれを裏付けている。立ち位置を自覚し賢く「歴」と付き合えば、スポーツでも仕事でも良いプレーを続けられるという最高のお手本だ。堀江選手といえばフィールド内外での視野の広さも折り紙つき。ブルマ風の愛らしいパンツ姿で見せる知を結集させたスクラム、的を射抜くようなラインアウトスロー、トリッキーかつ洒脱なキックやパスに、惜しみない運動量。近年ついた「ラスボス」というニックネームにふさわしい存在感だ。髪型へのこだわりから想像がつくが私服のセンスは抜群で、愛車は1977年式のフォルクスワーゲンという美学あるセレクト。大きな体でウクレレを弾くギャップもとても良し。全方位で推せる。極めつけが奥さまとの馴れ初めだ。転校してきたばかりで友だちがいなかった奥さまに「同じ方向だから一緒に帰ろう」と声をかけたのがきっかけで、結婚に至る..少女マンガ顔負けのほっこりエピソードだ。ちなみにトレードマークのドレッドヘアは奥さまが編んでくれているらしい。どこを切り取っても正真正銘の「代えのきかない」選手と言えるだろう。日本ラグビーの最前線に立ち続けていた堀江選手だが、先日、今季限りの現役引退を表明した。40歳までラグビーやるって言ってたのに..(泣)。今後はトレーナーとしての活動にも関心があるとのことで、新天地でも活躍するであろうことは想像に難くない。試合でその姿を見れなくなっても、ベテランの理想の在り方を見せてくれる人として、これからも推し続けていきたい。
『ベテランの心得』