ベイジでは、プロジェクトの開始から終了までには約5~6ヶ月以上かかることも多い。ディレクターである自分はプロジェクトの全体を通して深く関与して推進していく立場だが、トラブルなく進めるために注意しておくべきポイントが幾つかある。
過去のプロジェクトを振り返ると、当初の予定通りに進行して完了するようなプロジェクトもあるが、途中で仕様の追加や変更が入ったり、原稿素材類の準備に時間がかかったりと、その都度スケジュールやコストを見直しながら進めるプロジェクトも一定数はある。
そもそもプロジェクトは不確実性が高く、その前提で柔軟に対応していく必要があるが、トラブルを少なく進めていく上でのポイントをまとめてみたい。
プロジェクトが正式に始まるタイミングでは、クライアントとのキックオフミーティングを実施している。ここでは、プロジェクトにおける前提条件やゴールの共有を目的としているが、想定されるリスクについては事前に伝えるようにしている。
例えば以下のような点だ。
このような点を事前に伝えずに、プロジェクトの中盤以降になってから伝えても受け入れられる可能性は低くなってしまうだろう。想定される懸念事項はリスク管理表としてリストアップしておき、事前に対応策を検討した上で共有しておいた方がいい。
制作会社でクライアントからの無茶な要求が多い、提示されるスケジュールが厳しいといった声を聞くことがあるが、クライアントが要求する内容が必ずしも正しいとは限らない。
サイトの特性やターゲットなどを踏まえた上で、本当に必要なことなのかは制作会社が判断してメリットとデメリットを合わせて伝えるべきで、納得してもらえれば要望を取り下げたり、別な仕様に変更することは多々ある。
クライアントからすると、影響範囲が分からずに無邪気に要望を出していることも多いので、言われるままに受け入れる御用聞き姿勢こそが危険だ。
また、プロジェクトを進める中で発生する要望には、当初のスコープには含まれていない追加機能や影響範囲が広い変更が発生することも出てくるが、追加で発生するコストは交渉したり、対応する優先順位を「高」「中」「低」などに切り分けて進めた方がいい。
計画通りにプロジェクトを進めることは重要ではあるが、品質が担保できないのであればスケジュールを調整した上で品質を高める努力をするべきだ。
問題になるのは、スケジュールが遅れる可能性を感じながらも事前にそのことを伝えずに進めてしまい、リリース間近になって間に合わないことが発覚するケースだ。
これはプロジェクトの進捗確認や報告体制にも問題があるが、関係者からすると順調に進んでいると思っていたのに、唐突に問題が顕在化することになり、リカバーするための影響が大きく出てしまう。
スケジュールが予定通り進んでいない場合には、根性論で何とか乗り切ろうとするのではなく、早い段階で進捗状況を共有し、問題点を分解した上でリソースを組み直すなどして軌道修正していく必要があるだろう。
ディレクターはプロジェクトを円滑に進めるためにハブとなる存在で、社外・社内を問わずコミュニケーションを取る機会が非常に多い。相手に伝えることは重要な仕事の一つだが、「伝えた」と「伝わった」には大きな乖離がある。
打ち合わせなどの対面でのコミュニケーションでも、メールやチャットなどのテキストでのコミュニケーションにおいても、一方的に情報を伝えても相手が理解していないのであれば、それは伝えていないのと同じではないか。
また、同じ事象を伝える場合でも相手の立場や状況に応じて粒度を変えて伝えた方が効果的だ。例えば、プロデューサーのように毎日さまざまな人から大量の報告を受けているような多忙な人には、結論から伝えると同時に確実に理解して欲しいポイントを端的に伝えるべきだ。
一方で、現場レベルでタスクを進める担当者に対しては、事象の背景を丁寧に説明した上で、具体的にやって欲しいことを、できるだけかみ砕いて細かい粒度で伝える必要がある。
いずれにしても、一度伝えたからといって安心するのではなく、定期的にリマインドをしたり、進捗状況や理解度を確認しながら進めるようなコミュニケーションが求められる。
ここであげた内容はどれも当たり前のように感じるかもしれないが、意外と徹底できていないことがあるのではないか。自分自身も過去のプロジェクトでうまく進められなかったケースを振り返ると、これらの配慮ができていなかったと感じている。
共通して言えることは、受け身の姿勢ではなくリーダーシップを持って主体的にプロジェクトを推進していく姿勢を持つべきということだ。
「聞かれなかったから」「先方からの要望だから」「質問が出なかったから」のような責任転嫁するような考え方は止めて、プロジェクトをうまく回すためには先回りして最良と思える提案を続ける姿勢こそが重要なのではないだろうか。