部下のマネジメントをするようになった人が、もっとも頭を悩ませるのは「フィードバックのやり方」ではないだろうか。
私はディレクターだが、社内におけるマネジメントも主な業務だ。前職での経験を合わせると、マネージャー歴は通算15年ほど。そんな私も、いまだにフィードバックするときは悩んでいる。
世の中にフィードバックの方法論はたくさんあり、私も勉強中ではあるが、これまでのマネージャー経験の中で最も重要だと感じていることが一つある。それは「タイミング」だ。
フィードバックが必要だと感じたら「スグ」に伝えよう。なぜなら時間が経つほど、フィードバックを受ける側の記憶が薄れ、心に響かなくなるからだ。また、何日も経って忘れた頃に「あの時のことだけど…」と掘り返されるのは気分が悪く、正論であっても素直に受け取りにくい。
具体的なタイミングとして活用しやすいのが、クライアントとのミーティング後だ。ヒアリング力、プレゼン力、ファシリテーション力など、クライアントとのミーティングでは多くのスキルが求められるため、誰にでも改善ポイントが見つかりやすい。あらかじめミーティング後にはフィードバックの時間を確保しておき、気になった点や改善のヒントを「スグ」伝えられるようにするといいだろう。
クライアント先に訪問していた時代は、会社に戻る電車などで自然とそれができていた。しかし、オンラインミーティングでは終了後すぐに各々の仕事へ戻ってしまうことが多いため、より意識的にフィードバックの時間を確保しておきたい。
部下が若手の場合は、とにかく「スグ」に伝えることを意識するだけで、フィードバックは響きやすくなるはずだ。しかし、ある程度キャリアを積んだ部下の場合、それだけでは通じない場合がある。なぜなら、人は仕事に慣れるほど、他人の意見に耳を傾けにくくなるからだ。
そんなときに意識したいタイミングは「仕事が変わる瞬間」である。新しい役職、新しい部署、新しいプロジェクト…。こうした仕事上の役割が変わる瞬間は、誰にとっても不安であり、他人の声に耳を傾けやすくなる。中堅社員へのフィードバックは、このタイミングを逃さないようにしたい。
最後に、フィードバックが上手くなる一番の近道を書いておく。それは自分がたくさんフィードバックを受けること。そして過去に受けてきたフィードバックを思い出すことだ。
私自身、前職時代もベイジに入ってからも、多くのフィードバックを受けてきた。顧客とのミーティングでリーダーシップを発揮できず、終了後すぐにフィードバックを貰ったことも少なくない。しかし、こうしてフィードバックを受けた経験は、マネージャーという立場になって、とても貴重な財産だったのだと気がついた。
いつ、どんな言葉をかけられると納得できるのか。何と言われたら反発を覚えるのか。これは結局のところ、自分がフィードバックを受ける側になってみないとわからない。
悩ましいのは、職位が上がるほどフィードバックをする機会は増えるのに、自分が受ける機会は減っていくことだ。若いうちから一人で仕事ができていた人は、部下を持ったときに苦労することが多い。逆に、上司から耳が痛い言葉をたくさん受けてきた人のほうが、部下へのフィードバックは上手かったりする。
そのためベイジでは、上司・部下に関係なくお互いフィードバックし合える関係を目指している。また、Twitterなど社外に向けた情報発信も、他人から率直な意見がもらえる貴重な機会だ。「フィードバックはタイミングが重要だ」と言われても、いまいち実感が湧かない人は、このように自分がフィードバックを受けられる環境に身を置いて学ぶことをおすすめしたい。