ベイジでは顧客との商談をコンサルタントが担当しているが、希望すれば他職種のメンバーも参加できる。私はライターチームに所属しているが、BtoB企業のウェブサイト制作の初回商談に同席してみた。
ここで自分へのお土産として持ち帰りたかったことは2つある。問い合わせ時の顧客心理の把握と、見込み顧客からの話の引き出し方だ。
まず制作会社に問い合わせる時点で、顧客がどの程度はっきりとした課題感を持っていて、制作会社にどんなことを期待しているのかを知りたかった。ウェブサイトのコンテンツ設計をするうえでの参考にしたかったからだ。
今回の商談において、顧客の課題感はふんわりしていた。現状のサイトには満足していないが、方向性は見えていないようだ。とりあえず制作会社と何ができそうなのか話してみて整理したい、というのが期待するところなのだろう。
ベイジが制作するBtoBサイトに問い合わせをするユーザーも、問い合わせフォームを送信する時点では、目的や方針が固まっていないことが多いのかもしれない。
そう考えると、ウェブサイトのトップページは主な情報をパーッと流し見できて、「なんとなく良さそう」な印象を与え、問い合わせボタンを気軽にクリックできることが望ましい。ベイジが制作するBtoBサイトはファーストビューに問い合わせボタンを設置することが多いが、これは理にかなった設計だといえるだろう。ライターとしては、ユーザーが流し見して最低限の情報をキャッチできるように、見出しの長さや表現にも工夫をしたい。
では目的や課題感がふんわりしている顧客と接して、どんな情報を引き出すのがよいのか。同席したコンサルタントによると、初回商談では以下の2つを重点的に見極めるとのことだった。
たとえば、ウェブサイトに流入する以前の集客の部分に課題がある場合、ベイジが積極的に関与することが難しい。ECやSEOなどベイジが専門としていない領域においても、内容によっては十分な価値を提供できない可能性がある。
条件面で言えば、ベイジは戦略工程に時間をかけているため、一般的なウェブ制作会社と比べてスケジュールが長くなりやすい。また良いサイトを制作するにはクライアント側の協力も不可欠だと考えていて、対等で建設的なコミュニケーションが取れるかどうかも重視している。
この価値観がずれているとプロジェクトの炎上につながりやすく、双方にとって満足のいかない結果になりかねない。
これらを見極めるために、同席したコンサルタントは「相手がやりたいことを聞かない」という方法をとっていた。「ウェブサイトで何がしたいですか?」「どんなウェブサイトを作りたいですか?」と質問しても、得られる回答は「相手がそう思い込んでいること」かもしれず、課題の中で顕在化している一部分でしかない可能性があるからだろう。
今回の商談相手も、「リードが獲れるサイトにしたい」とのことだったが、実際は現状のサイトでも、それなりにリードを獲得できていた。そこで話を深掘りしていくと、社内のマーケ組織の見直しに合わせてウェブサイトの機能を刷新したい、という側面が大きいことがわかった。
相手が答えを持っているとは限らないし、答えと思っているものが実は間違っていた、ということも大いにあるだろう。だからこそ質問しながら事実を洗い出していって、正解らしきものを導き出すアプローチが必要になる。
目的や課題が明確になっておらず、制作会社に相談相手やコンサルタント的な役割を期待する顧客は、思った以上に多そうだ。するとライターやデザイナーであっても、顧客のリクエストにそのまま応えるのではなく、課題解決やベネフィットにつながることを見極めて提案していかなければならない。そのためには顧客が話す事実から本当の課題を導き出すアプローチが必要になるだろう。
商談に同席し、顧客と直に接してみて得られることは多かった。机に向かって顧客像を空想するよりもはるかに早く、具体的な情報を得られる。価値のあるサービスを提供するためには、ライティングやデザインという行為だけではなく、顧客のビジネスや頭の中にも目を向けて仕事をするべきだ。その第一歩として、デザイナーやライターなどクリエイターの方にも、商談への同席をオススメしたい。