Webディレクターがやってはいけない13の行動

Webディレクターというのは、プロジェクトを推進するうえで欠かすことのできない存在です。しかし、Webのディレクションという行為が曖昧で多岐にわたり、それゆえに職務にグレーゾーンが発生し、その認識の違いでコミュニケーションエラーが発生しているという面もあるのではないでしょうか。

そういったリスクを最小限に抑えるために、うちの会社なりのWebディレクターの定義をはっきりさせようとずっと考えていたのですが、その一環で、Webディレクターがやってはいけない行動、というものをまとめてみました。今日はこれを紹介したいと思います。

1. クライアントの言いなりになる。

クライアントの心象を害さないことを最優先に考え、言いなりになってしまってはいけません。クライアントは専門家ではないので、間違ったことを言うこともあります。また、現実的なスケジュールを考えずに要望を安請け合いすれば、プロジェクトが混乱して、品質も下がりかねません。

クライアントの発言や要望は客観的に判断し、必要であれば説得するのもWebディレクターの仕事です。こういった調整を煩わしく思い、事なかれ主義でそこから逃げるのは、職務怠慢といってもいいでしょう。

2. 制作者の言いなりになる。

制作のバックグラウンドがないディレクターが落ち入りがちですが、制作者に嫌われまいとするあまり、制作者の言いなりになってしまうことがあります。制作者の主体業務はあくまで制作です。クライアントのビジネスのことを完全に把握しているとは限りません。技術的な理想を優先させて、ビジネス的に大切なことを見落してることもあります。

Webディレクターは、制作者、クライアントのどちらかに肩入れするのではなく、等しい距離感を保ち、客観的な視点からのベストな判断にこだわるべきです。

3. 自分の意見を持たない。

ビジネスに正解はありません。だからこそ、クライアントと制作者の間に立つWebディレクターの意見が羅針盤として必要になる時があります。Webディレクターが意見を持たず、ただ単にクライアントと制作者の間で伝言ゲームをしているだけでは、プロジェクトがスムーズに進みません。

プロジェクトとして最終的にどういう判断になるかは別として、クライアントと制作の両方の状況を等しく理解する立場のWebディレクターは、これはこうあるべきと思う、という主張を常に持っておくべきです。

4. 期限を明確にしない。

例えば、クライアントが期日までに必要な素材を用意できなかった時、「忙しいでしょうから、大丈夫ですよ」とだけいって終わらせてしまうWebディレクターがいます。紳士的に思えるかもしれませんが、このような余計な気遣いで期限をぼやかしてしまうことは、結局誰の得にもなりません。

スケジュールが変わった時、タスクが発生した時は、新しい期限をセットして常に明確にし続けるのも、Webディレクターの職務です。

5. 今できることを後回しにする。

後でもできることは後回しにして、今の負担をできるだけ減らそう、と考えるのが人間です。しかし、Webディレクターはそうであってはいけません。今できることは、できる限り今終わらせよう、と考えるべきです。例えば、打ち合わせという場を設けながら、その場で確認できることをわざわざ持ち帰り、あとからメールや電話でやりとりするのは、タスクを水増しするだけの無駄な行為です。

慎重を期す場合にはいいですが、基本的な発想として、今できることは今やる、その場で解決できることはその場で解決する、後回しはしない、という姿勢が、無駄なくプロジェクトを進める上で大切です。

6. 代替案を提示しない。

実現が難しい要望を受けたとき「できません」というのは簡単ですが、それではプロジェクトが良い方向に向かいません。またそのように要望を拒絶することで、不親切な印象を与える可能性もあります。

実現が困難でも、トレードオフで実現できたり、手段を変えれば近い目標が達成できたりすることもあります。「こういう条件なら実現できる」「こうすれば、似たことができるのでは」といった代替案を必ず提示し、プロジェクトをより良い方向に導くことが、Webディレクターには求められます。

7. ステータスを共有しない。

検討が長引き、プロジェクトとしては進んでいるが、次のアクションがまだ始まらない、という状態になることがあります。こういう時は、必ず関係スタッフに途中経過を報告しましょう。途中経過を知らないと、心構えもないまま、いきなりアクションを実行しなければならなくなります。また、状況が分からないでいることは、精神的にも気持ちよくありません。

当事者のアクションが発生しなくても、進捗状況は随時報告し、いざとなったときにすぐに動いたり相談したりできる状況作りをしておくのも、Webディレクターの仕事です。

8. 口頭ですべて済まそうとする。

会話や電話などで、話して伝える方が早い場合があります。しかし、会話や電話では記録に残らない、同時に情報を伝えられない、状況を整理して伝えにくい、結果、抜け漏れが発生しやすい、といったデメリットもあります。

メールやドキュメント作りが苦手なWebディレクターは、用件をなるべく口頭で伝えてしまいがちですが、口頭では伝達漏れや勘違いが発生することも多々あります。自分がやりやすい方法ではなく、目的に適した方法を選択するという発想は、ディレクターならば必ず持っておかなければなりません。

9. メールの返事をしない。

Webディレクターは、クライアントからも、制作側からも連絡が来る立場なので、メールは比較的多いでしょう。しかし、その返信を煩わしく思い、いつまでもしないのは、Webディレクター失格です。ディレクターがすぐに返事をしないことで、制作者が本来しなくていい作業を進めてしまったり、クライアントの意思決定が遅れたりといった事態を招くこともあります。いつも返事が遅いと、そもそもの信頼も失います。

忙しくて返事がしにくいときも当然あるとは思いますが、簡単な一次回答だけでも先にする、メーリングリストを活用して、代理の者が返信できる体制を整えておくなど、やりようはいくらでもあります。メールが来た時間にもよりますが、半日以上まったく音信不通になるのは避けなければなりません。

10. 議事録を書かない。

打ち合わせ後、すぐに議事録を書くのもWebディレクターの仕事です。議事録で状況を整理して共有し、認識違いがあればすぐに解消します。人は細かいことは覚えておけないものです。「言った」「言わない」にならないためにも、Webディレクターは必ず議事録を書き、1営業日以内に共有すべきです。

議事録といっても、難しく考える必要はありません。決定事項と検討事項を箇条書きで書くだけで十分です。ただ、第三者が読んでも分かる内容というのは気を付けましょう。不用意に主語を抜いたり、「てにをは」がおかしかったりすると、誰に向けての発言かわからなくなり、誤読させてしまいます。正確に記録できる最低限の文章作成力も、Webディレクターに求められるスキルです。

11. 技術的な話から逃げる。

「私は技術専門じゃないので分かりません」と堂々と言って技術的な話に加わろうとしないディレクターがいます。営業ならまだしも、Webディレクターとしては感心できません。技術的なことにも関心を持ち、問題があれば、それはなぜかと理解するのがWebディレクターです。技術の詳細は分からなくても、一ユーザの立場として言えることもあるはずです。問題なのは、技術的な話から逃げることで、誤った判断や伝え方をしたり、技術的な課題やトラブルに無責任になったりすることです。

Webというものを扱っている以上、技術的なことはできるだけ理解する、という強い意識が、Webディレクターには必要です。

12. 資料を確認せずに横流しする。

Webディレクターが、ドキュメントや成果物の受け渡しをすることがあります。この際、双方から受け取ったものを、中身を確認せずそのまま横流ししてはいけません。クライアントの資料は制作者が本当に必要とするものか、補足説明が必要ではないか、ということを把握し、問題があればすぐにクライアントに確認と再提出を実施すべきです。制作者から上がってきた成果物も、要件を満たしているか、ミスがないかなどを、きちんと確認すべきです。

Webディレクターがここを実施するか、怠るかで、プロジェクトが効率よく進むかどうかが左右されます。プロジェクトに関する資料は全て目を通し、妥当性をチェックするのも、Webディレクターの仕事です。

13. 自分の役割にしか責任を持たない。

クライアントと制作のパイプ役となるWebディレクターは、時にその両者の職域まで踏み込んだ行動をしなければなりません。例えば、原稿をクライアントが用意する場合に、原稿管理をできるだけしてあげたり、収集に便利な情報を提供したりすることで、プロジェクトがうまく進むことがあります。逆に、それはWebディレクターの範疇じゃないから、と他人事のように割り切ってしまうと、作業を依頼する相手のスキルや特性に委ねる領域が大きくなり、スケジュールや品質がぶれる要因にもなりえます。

もちろん負える範囲に限界はあるでしょうが、守備範囲はできるだけ広く、いつも自分事で考える、という心構えはとても大切です。