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「コンバージョン率は上がった方がいい」という誤解

Webサイトをリニューアルする際、「コンバージョン率を上げる」を一つの目標にすることが非常に多いと思います。弊社経験では、5割以上のサイトリニューアルが、これをゴールに掲げている印象があります。

確かに、コンバージョン率は、Webサイトの成功を計測する非常に分かりやすい指標です。Webサイトから成約までの経路を完全にトレースできない場合、コンバージョン率で施策の成果を図るのは、妥当な落としどころであるとも言えます。

しかし「コンバージョン率が上がればいい」というのは、大きな誤解です。この思い込みは、本来成功している施策を、失敗と判断してしまう可能性があります。例えば、以下のような場合を考えてみましょう。

コンバージョン率の比較例1

この場合、リニューアルによってコンバージョン率が半分に下がっています。リニューアルの目的が「コンバージョン率の向上」であれば、一見失敗に思えます。しかし、資料請求数に目を向けると、1.5倍に上がっています。リニュールによって検索エンジンにかかりやすい構造になり、流入数が格段に増えるケースなどでは、こういったことが発生します。当然ながら、ビジネス的には、コンバージョン率が下がった後者の方が、Webサイトとして成果を上げていると言えます。

では、コンバージョン率でなく、コンバージョン数をあげればいいのでは、と考えがちですが、これもそこまで簡単ではありません。以下のようなケースも発生しうるからです。

コンバージョン率の比較例2

この場合、コンバージョン率だけでなく、資料請求数自体も下がっています。しかし、資料請求からの成約数は倍以上になっています。リニューアルによってWebサイト上でのユーザのフィルタリングがうまく機能するようになると、コンバージョン率やコンバージョン数が下がっても、ビジネスへの最終的な貢献度は上がるということも起こりえるのです。

Webサイトにおけるこの手の数字の誤解は、コンバージョン率のみならず、その他の指標でも見られます。直帰率は必ず下がればいいわけではありません。問題解決をするヘルプページでは、検索ですぐに表示され、1ページだけ見て帰ってもらった方が、Webサイトとして成功となるケースがあります。1訪問あたりの閲覧ページ数も、必ずしも上がればいいわけではありません。ユーザビリティの改善でユーザが迷わなくなり、1訪問あたりの閲覧ページ数が減ることもありえます。

指標は大事ですが、数字の増減だけを比べることに意味はありません。ログの数値の推移だけをレポーティングするような有料のサービスも存在しますが、これを利用することは無駄な投資といえます。大事なのは、その数字をどのように分析し、どのように判断し、インサイトを導きだすか、ということです。

また、開発時とは違う運用担当者と、制作会社のレポーティング専門スタッフでのレポーティングでは、効果が上がらないこともあります。なぜなら、Webサイトが作られたビジネス的な背景を理解していない場合があるからです。提案能力の無いスタッフがレポートチームにまわされて、テンプレート化したレポートを定期的に納品しているような会社もありますが、このようなレポートサービスではWebサイトを成功に導くのは難しいでしょう。

理想は、Webサイトのビジネスを理解しているWeb担当者と、リニューアルの設計を担当した制作側のスタッフが、アクセスログの解析チームに参加することです。企業と制作側がチームを組み、数字比べではなく、ビジネスの文脈を踏まえて、しっかりと時間と手間をかけて分析することが、結局はもっとも投資対効果の高い活動になるのです。

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