失敗を成功に変える10の条件

失敗をしないで生きるのは不可能です。新しく挑戦をするときに失敗がつきものなのは当然ですが、やり慣れたルーチンワークの中にも、大きな落とし穴が潜んでいて、時にそこに足を取られることもあります。

失敗は成功の元とよく言われますが、必ずしもそうとは限りません。今まで出会った人の中には、いつも同じ失敗をする人もいれば、失敗するたびに成長する人もいたのではないでしょうか。あるいは自分自身を振り返ってみても、同じ失敗を何度も繰り返してしまったこともあれば、失敗しなければ手にできなかった成功体験もあるでしょう。

失敗はただ経験すればいい、という訳ではないのです。失敗を活かすための考え方や行動をしなければ、良い経験に転化しないものです。それは当たり前のことなのですが、失敗した直後の不安定な精神状態では、この当たり前のことができなくなることも多いです。しかし、失敗を感情で押し流しているだけは、同じ状況になった時に、また同じ失敗を繰り返してしまいます。

不安定な精神状態でも感情に流されない一つの方法は、物事をあらかじめ整理して考えておくことです。というわけで、失敗から学ぶために必要なことをまとめてみました。

1. 失敗の根本的な原因を考える

失敗は、表面的な事象と、根源的な原因との、多重構造になっています。例えば、開発したシステムに誤ったデータが紛れ込んでしまった場合。それが開発者の入力ミスだったとします。しかし入力ミスというのは、あくまで表面的な事象です。ミスを起こしやすい操作、確認できないスケジューリング、ミスに繋がりやすい仕事の考え方など、その事象を引き起こしうる根源となっている原因が、いくつもあるはずです。

このような失敗に対して「入力ミス」という表層的な事象だけを見ていては、根本的な改善策を打ち出すことができず、成長や改善に繋がりません。失敗をした場合には、失敗を誘発した環境などの外部要因、失敗したときに心理状態やスキルなどの内部要因も含めて、多面的にその原因を考えなければなりません。

2. 失敗による周りの影響を考える

失敗をした場合、自分自身の行動を省みることは誰もが行うことでしょう。しかしもう一歩踏み込んで、その失敗によって起こった周囲への影響を考えてみることも重要です。

自分の失敗で、同じチームのスタッフまで信頼を失ったかもしれない。営業担当が謝罪に時間を取られたかもしれない。クライアントの担当者が上司に怒られたかもしれない。そのシステムを使ったユーザの、その企業に対する信頼を損ねたかもしれない。このように、失敗による影響を連鎖的に考えていくことで、自分が携わる業務の意義を改めて理解し、決して同じ失敗は繰り返すまい、という強い意志に変えることができます。

3. 失敗の責任範囲を広く持つ

仕事の中での失敗は、個人が責任を負うことはあまりありません。誰かが失敗すれば、その上司や会社にも責任が発生します。納品後に発生した場合には、顧客にも責任の一端が生じる場合もあります。しかし、このように責任の所在を事務的に切り分けて、自分の失敗範囲を狭くとらえるのは得策ではありません。

失敗体験の多さは、成長スピードと密接に関係します。失敗の責任所在が例え他人であっても、自分の行動で防ぐことができたのでは、と考えられる人は、同じ時間でより多くの失敗体験をするため、より早く成長していきます。このような習慣が、成長する人と成長できない人の差を生み出すのではないでしょうか。

4. 失敗に痛みを伴わせる

失敗に痛みがないと、改善のモチベーションは当然おきにくくなります。自分自身を顧みても、上司に厳しく叱られた失敗の方が、二度と叱られまいと必死に改善に取り組んだ記憶があります。失敗したときに叱責されるのは、辛いことです。できれば「褒めて育ててほしい」などと思い、その辛さから逃げたくなります。しかしそれでは、せっかくの失敗体験が強く心に残りません。

そういう意味で、口うるさい上司や先輩がいる環境というのは、ありがたいことかもしれません。一方、あまり叱ったりしない社風の会社であれば、失敗に痛みを伴わせるような工夫を、自分自身で行う必要があります。いずれにしろ、失敗を良い経験に転化するためには、失敗と痛みをセットにして、その環境を作るなり、選ぶなりしていく必要があります。

5. 失敗するのも良い経験、と最初から開き直らない

失敗は確かに良い経験になりますが、最初から「失敗すると良い経験だから」といって行動してはいけません。失敗するつもりで起こした失敗と、絶対に成功するつもりで起こした失敗では、当然、後者の方が強く心に残るものです。成功するつもりであれば、準備に手間暇もかかるでしょう。それで失敗すれば、失う物も多いでしょう。しかしだからこそ、二度と繰り返すまい、と思えます。

3割打つバッターは「3割打てればいいや」とは考えず、全打席打つつもりでいるはずです。そして打てなかった経験を悔しいと思い、次は絶対に打とうと思うからこそ、成長し、高い目標が達成できるのではないでしょうか。失敗を良い経験にするのは、あくまで事後処理です。行動する前から失敗するつもりでいることは、失敗を良い経験にするためにも、できるだけ避けるべきでしょう。

6. 対策は、精神論ではなく、プロセスで考える

失敗をしたときは当然、失敗を繰り返さない対策を考えなければなりません。成熟度の低い社会人は「気をつける」「注意する」「がんばる」「意識を高く持つ」といったことを対策にしがちです。しかし、こういう精神論は、ようするに根性や気合いで乗り切るということで、集中力が途切れがちな状況下でまた同じ過ちを繰り返すことを意味します。精神論が効果を発揮する領域は確かにありますが、残念ながらそれだけで多くの物事が解決しないのが現実です。

失敗には根源的な原因があります。その根源的な原因は、抽象的な精神論ではなく、具体的なアクションで解決すべきです。絶対に失敗を起こし得ない、あるいは失敗率が明らかに下がるプロセスを実行することを、対策とすべきです。そのプロセスを生み出すことが、失敗から学ぶ、ということなのです。

7. 対策はすぐに考え、すぐに実行する

人の脳は時間とともに忘れるようにできています。失敗の経験も、そのまま放置していては、時間とともに細部の記憶が曖昧になっていくものです。しかしこれでは、せっかくの失敗体験が無駄になってしまいます。失敗をしたら、記憶が鮮明なうちに原因を究明し、対策を考えるべきです。記憶が薄れてからでは、原因の詳細がわからなくなり、適切な対策を考えられなくなります。

また、対策は素早く実施すべきです。対策が実行されてない状態とは、同じ失敗を繰りかえす可能性が高い状態です。失敗をして、1か月対策を行わなければ、その1か月間にまた同じ失敗をするリスクがあるということです。これほど無駄なリスクはありません。失敗の質や内容にもよりますが、できれば失敗の当日に原因究明、翌日から対策開始、というスピード感は持っておきたいものです。

8. 失敗を機会にする

起こしてしまった失敗は、取り返すことはできません。過去の失敗は、有効活用するしかないのです。その一つが原因を究明し、将来同じ過ちを繰り返さないための対策を実行することです。そしてもう一つ。起こってしまった失敗をあえて利用し、チャンスに変えてしまうという方法もあります。

例えば、企業が不祥事を起こした際、その不祥事への対処の仕方で、その企業に対する信頼度が逆に上がることがあります。これこそがまさに、失敗を機会に変える行動の典型です。失敗をしてしまったら、将来への対策だけではなく、謙虚な姿勢や迅速な対応など、失敗したからこそアピールできることを考えるべきです。未来に向けて対策を考えるだけでなく、現在を好転させることができれば、その失敗は、より意義ある体験になることでしょう。

9. 根底にある自信は失わない

失敗に向き合うことは、自分の弱点に向き合うことです。これは一歩間違うと、自信喪失に繋がります。しかし心が折れてしまっては、せっかくの失敗体験を生かすことはできません。まず、チャンスがない人は、そもそも失敗をしません。そしてチャンスを与えられたということは、なんらかの評価を受けたということです。つまり、成功するポテンシャルがあると認められたから、チャンスを与えられたのです。

失敗をしても反省をせず、他責でモノを考える傲慢な姿勢であれば、失敗を成功に結びつけることは難しいでしょう。しかし、自分を責めすぎて自信を喪失してしまうのもまた、失敗の悪い使い方です。冷静に考えて明らかに向いていないと思うことなら仕方ありませんが、そうでなければ、自分のポテンシャルは信じ続け、次の機会に備えての対策をきちんと実行し続けることが大切です。

10. 再び挑戦する

失敗した体験がもっとも活かされやすいのは、失敗したときと似たような状況になったときです。その状況に再挑戦し、成功したときにはじめて、失敗が良い経験へと変わります。再挑戦というのは、失敗を成功に導くための必須中の必須条件です。

確かに一度失敗すると、もうそれを経験したくない、失敗しそうな状況にはなるべく近づかない、と思いがちです。しかし、リスクをとらない保守的な姿勢を貫き、再挑戦しなければ、失敗はいつまでたっても失敗のままです。失敗を分析し、失敗を恐れる気持ちを持ちながらも、自信は決して失わず、再挑戦する。これこそが、失敗を成功に繋げるための最後の関門なのです。