デザインでWeb制作会社を選んで大失敗!よくある失敗例×7

やはり好景気の波がやってきているのでしょうか。企業のWebサイトへの投資が活発になっているようで、検索エンジンで上位表示されている弊社には、ほぼ毎日新規の仕事の依頼が舞い込んできます。

とはいうものの、弊社のように有名ではない会社は、コンペで選ばれることが多いです。コンペ自体は、Web制作会社を選定する方法として、理にかなったやり方だと思います。しかし、コンペの選定条件などを拝見して、あぁ、これはWeb制作会社選びに失敗する典型だなぁ、と思うこともよくあります。

特に、デザインカンプ(と見積書)だけでWeb制作会社を選ぼうとする企業は、要注意です。恒常的にWebを活用している企業ならともかく、Webをどう使っていいか分からない、Webにそんなに詳しくない、というような企業や担当者がこの選び方をすると、失敗率がかなりあがります。

実際、私たちへの依頼の中には、過去にコンペをしてWeb制作会社を選定したものの、失敗して再度選び直している、という企業も少なからず存在しています。なかには、リニューアルして1年もせずに再リニューアルを検討している企業もあります。数百万以上も投資するWebサイトのリニューアルでのこのような失敗は、コスト的にも時間的にも大変な無駄です。

この記事では、デザインだけでWeb制作会社を選んで失敗した発注企業の声のご紹介と、ではどうやってWeb制作会社を選べばいいかという私たちなりの考えをまとめてみました。

失敗例1:検索エンジンに全然ひっかからない・・・

いわゆるSEO(検索エンジン対策)が全く効かないというパターンです。カッコいいWebサイトでデザインは満足している。でも、大事なキーワードでまったく上位に表示されない・・・。

検索結果は完全にコントロールできるものではありませんが、明らかにSEOに不利な作り方をしてしまうと、何をやっても検索にかからないサイトになってしまいます。デザイン志向が強すぎてSEOを軽視している、あるいはSEOのノウハウがないWeb制作会社を誤って選定すると、こういう事態になりがちです。

検索エンジンに好かれやすいWebサイトの作り方というものがありますが、それを実践する能力は、見た目がキレイなデザインを作る能力とはまったく別物です。つまり、デザインカンプの出来でWeb制作会社を選ぶのは、SEOを放棄したWeb制作会社の選び方といえます。

いやいや、うちはSEOに頼らず、マスの露出で集客するんだ、というのであれば、もちろんその限りではありませんが、そうでなければ、デザインカンプでWeb制作会社を選ぶことがいかにリスクのある行為か、ご理解いただけるのではないかと思います。

失敗例2:直帰率が高くなり、ページもあまり見られなくなった・・・

目的にもよりますが、多くの場合、ユーザは情報を求めてWebサイトにアクセスしてきます。少なくとも「トップページできれいな絵を楽しみたい」と思って訪れるユーザは極僅かでしょう。

にも関わらず、トップページでビジュアルの訴求力を高める一方、大事なメッセージやナビゲーションの説明を隠してしまい、結果、何のサイトかよくわからないサイトになることがよくあります。知名度の低いブランドや商材でこれをやってしまうと、ユーザが直帰する最大の要因になりかねません。特にRFPに「リニューアルの目的はブランディング」と漠然と記載している企業が陥りやすいパターンです。

Webサイトは、サイト全体のユーザ動線を考えた上で、トップページなり、下層ページなりの構成やデザインを考えてなければなりません。しかし、Web制作会社をデザインカンプで選ぶというのは、この行程をすっ飛ばし、表層的なデザインの出来(大抵の選定基準は主観的な好み)で選んでしまうということです。

直帰率が上がり、訪問あたりのページビューが減ると、通常、お問い合わせなどのコンバージョン率も低下します。つまり、ユーザ動線をきちんと設計できる会社かを考慮せず、デザインカンプの出来でWeb制作会社を選ぶということは、大事な新規顧客獲得の機会をわざわざ手放すことの第一歩ともいえます。

失敗例3:デザインカンプはキレイだったけど、できたものは使いにくかった・・・

静止画として美しいデザインであることは、使いやすさとイコールではありません。見た目はキレイでも、ユーザにとっては使いにくいサイトになることはよくあることです。

企業は自分たちが発信するコンテンツを知っているので、デザインカンプからWebサイトのその先にある情報を想像できます。一方、ユーザは手がかりの無いままWebサイトに訪問してきます。この前提条件の違いが、企業側が気づかないうちに、ユーザにはわかりにくく使いにくいデザインになる一つの要因です。

また、デザインによっては、やたら重くて処理に時間がかかることや、トラフィックが増えたときにサーバに負荷がかかりやすくなることもあります。こういった配慮ができるWeb制作会社と、できないWeb制作会社が存在するのが実情です。

ある程度の知識があるWeb担当者であれば、デザインカンプからこういったリスクを見抜けることもありますが、多くの場合、そうはいかないでしょう。デザインカンプだけでWeb制作会社を決めるということは、こういったユーザビリティに関するリスクをしょいこんでしまう、ことになりかねません。

失敗例4:更新が面倒で、ちょっとした修正も外に依頼しないといけない・・・

長く使われるWebサイトなら、更新を前提に作られなければいけません。更新のしやすさというのは、時にデザインの美観と相反します。このトレードオフを理解して、Webサイトをデザインすることが、Web制作会社には求められます。

しかし、デザイン志向の強いWeb制作会社に依頼すると、更新性をないがしろにされて制作されてしまうケースがあります。

特にテキストの扱いなどには注意が必要です。タイプフェイスの美しさにこだわるあまり、主要な見出しを画像で制作してしまうと、せっかくCMSを入れているのに、文字を更新するたびに、外部に依頼しなければならない、となることがあります。イニシャルの費用を圧縮しても、更新費用が継続的にかかってしまうようでは、結局コストパフォーマンスが悪い、ということになりかねません。

こういった、更新性に配慮しないでWebサイトを作る会社を選んでしまうという事態も、デザインカンプだけ選ぼうとすると発生してしまいがちです。

失敗例5:プロジェクトが始まったらデザインが変になっていった・・・

実際のプロジェクトでのデザインの制作工程は、コンペのデザインカンプの制作工程とは異なります。(会社によっても違いますが)たいてい、ヒアリング→参考サイト等での認識合わせ→初回デザイン→ブラッシュアップ→最終案というように、何度かやり取りして認識合わせをしながら、デザインを確定します。

一方、デザインカンプは大抵、オリエン→いきなり提案、となります。デザインが発注企業の求めるものになるかどうかは、偶然性に左右される部分が大きいです。デザインカンプのセンスが良ければ、実際のプロジェクトでも良いデザインが出てくるはず、という前提があってのことでしょうが、設計後の、仕様変更や調整のマネジメントが苦手なWeb制作会社だと、修正のたびにデザインが悪化していくことがあります。

このようなWeb制作会社のデザインに対するマネジメント力を、発注企業側が見極められるのであれば、デザインカンプでの選定にも意味が出てきます。しかし実際には、細かいクオリティの良し悪しは判断できず、コンテンツと設計とデザインの問題を混濁させたまま、単にメインビジュアルのセレクトや全体のトーンが好みかどうかで判断してしまうのが現実ではないでしょうか。

Web制作会社の総合的なデザイン力を測るために作ってもらったデザインカンプによって、見た目の好き嫌いに惑わされてしまい、正しいWeb制作会社の選定ができなくなるとすれば、これほどまでに本末転倒なことはありません。

失敗例6:ビジネスの話ができなくてコミュニケーションが取りにくかった・・・

Webサイトにとって、デザインというのは一要素でしかありません。Webサイトをビジネスに活かすためには、企業やビジネスのバックグラウンドに対する理解、マーケティングや設計の知識が必要ですし、発注企業側のタスクも含めた、プロジェクトの管理能力も問われてきます。

一方、デザインカンプでは、Web制作会社のそういったビジネス面でのスキルをうかがい知ることができません。特に、クライアント企業と直接やり取りすることに慣れていないWeb制作会社を、デザインがいいからという理由だけで選定すると、そもそものビジネスコミュニケーションが取れなくて苦労する、といったことになりがちです。

もちろん、発注企業側でWeb制作のフローを厳密に管理するつもりであればその限りではありませんが、ある程度ビジネス的な意図を汲み取ってほしい、制作工程も含めてきちんと管理をお願いしたい、と考えているのであれば、デザインの良し悪しでWeb制作会社を決定するのは、結果的に望まない会社を選んでしまうことになりかねません。

失敗例7:上司が変な制作会社を選んでしまった・・・

ここまで読んだ方は、「では、SEOとか設計とか更新の考え方とかをきちんと提案してもらったうえで、デザインカンプを作ってもらうのがベストでは?」と思うかもしれません。しかし、私自身はそうではなく、「コンペでデザインカンプをWeb制作会社に作らせるべきではない」と思っています。

人間、パッと見の好き嫌いを覆すことは、意外と難しいものです。例えば、最終的な意思決定をする上司がWebに詳しくなく、デザインカンプをやたら気に入ってしまった場合。その他の大事な提案は差し置き、気に入ったデザインカンプを作った会社を選んでしまうとことも少なからず起こっているようです。

あるいは上司ではなく担当者自身も、デザインが直感的にいいと思ったら、他の提案部分で劣っていたり、多少コミュニケーションがたどたどしかったりしても、その会社を選びたい気持ちにならないでしょうか?

例えば恋愛において、第一印象の見た目の好みが、相性の良さとイコールではないように、デザインカンプが好みであるかどうかは、発注企業と相性が良い制作会社であることと、イコールではないのです。しかし見た目がいいと、企業は惑わされてしまい、本来の選定基準を見失ってしまいがちです。

デザインカンプが、Web制作会社の実力を測る物差しになりにくく、さらに正しい選定眼を狂わせるものであるならば、そんなものを作るのに提案までの限られた時間を使わせるのではなく、もっとほかのことを提案させた方がいいと、私は思います。

じゃぁ、どうやってデザイン力のあるWeb制作会社を選べばいいの?

デザインカンプを作ってもらわないと、デザイン力が分からないじゃないか、と思われるかもしれません。しかし、デザインカンプなんかよりも、もっと正確にWeb制作会社のデザイン力を確かめられるものがあります。それは、そのWeb制作会社の実績です。

実際に公開されている実績こそ、実際のデザインプロセスとクライアントとのコミュニケーションの結果から生み出されたものです。1~2の実績ではわかりにくいかもしれませんが、10以上の実績において、デザインクオリティが安定しているWeb制作会社であれば、デザイン力に関してはまず間違いないと考えて良いでしょう。使いやすいサイトを作ってくれるか、といった点も、これらの実績を実際に触って判断すると良いと思います。

一方コンペでは、SEOなどの集客を含む、Webサイトをビジネス的に成功させるための企画案、更新などの運用に対する考え方、会社やプロジェクトの管理体制、価格といった提案に特化すべきです。デザインカンプという、判断基準を鈍らせるような余計な成果物を求めるのは、有効なやり方ではありません。

数百万以上のお金を費やすことになるWebサイト作り。無意味なアウトプットに時間を使わせて提案してもらうのではなく、Webサイトの本質に迫る、中身の濃い提案をWeb制作会社からもらえるような、有意義なコンペを開催するようにしましょう。