Webサービスを立ち上げるなら知っておきたい4つのビジネスモデル

わが社は受託が中心の会社ですが、自分たちでもWebサービスを作ってみたいと考えており、新しいWebサービスを日々模索してたりします。ただ、面白い企画を思いついても、じゃぁどうやってお金を稼ぐの?という段階で止まってしまうことも多いです。

出発点は思い付きでもアリと思うのですが、アイデアを煮詰める段階では、マネタイズに向きあわなければならなくなります。であるならば、Webサービスにおける典型的なビジネスモデルのパターンと特性は、基本知識としてある程度持っておいた方がいいんじゃないかな、などと思うようになりました。

というわけで、Webサービスによく見られるビジネスモデルの分類と特徴を整理してみました。だいたい以下の4種類に大別されるのではないかと思ってます。

アイデアは出しやすいが、膨大なトラフィックを求められる「広告モデル」

新規ビジネスを考える際に思いつきやすいのが、この広告モデルではないでしょうか。所謂バナー広告やテキスト広告を表示させること以外に、タイアップコンテンツを掲載したり、スポンサードを受けることも、広告モデルの一環と言えます。このモデルが優れているのは、サービスと収益の仕組みが分離されているため、発想の自由度が比較的高い点です。

一方、トラフィックが最低ラインに届かないと、事業が成立しないモデルともいえます。月数十万程度のPVでは事業を成り立たせられないことも多く、またTwitterのように、膨大なトラフィックをさばくコストと広告収入のバランスがとれず、なかなか黒字化できないこともあります。サービスに欠陥やトラブルがなくても、外的要因で収益性が低下することもあり、経済基盤としては安定性を欠くモデルです。

アイデア先行で考えると広告モデルに走りがちですが、事業として成立させるためのハードルは意外に高いです。このモデルを採用するには、以下のようなことを十分に検討する必要があるでしょう。

  • 目標とする売り上げを上げるために、どのくらいのトラフィックを必要としているのか?
  • 膨大なトラフィックをどうやって集めて、どうやって軌道に乗せるのか?
  • ユーザ数を増やすだけでなく、利用率を高めるにはどうすればいいか?
  • トラフィックをさばくインフラの運営コストは、広告収入と見合うか?

成功したときの利益率は高いが、質を求められる「課金モデル」

サービスの利用料を主な収入源とするのが、課金モデルです。DropboxやEvernoteのように、基本は無料で、オプションで利用料がかかるフリーミアム型も多いです。LINEのスタンプやソーシャルゲームのアイテム課金も、この派生型といえるでしょう。ユーザ数やアクティブ率が減らなければ、外部要因で収益性が変わることも少なく、広告と比べて安定性の高いモデルです。

一方、利用料を払ってもらうには、コンテンツなりサービスなりに、お金を出したいと思えるくらいの魅力が求められます。圧倒的に便利、圧倒的に得する、圧倒的に楽しいといった、お金を払ってでも得たいと思う価値です。無料でなんでもできるWebの世界で、有料でも使ってもらえるサービスを作るというのは、非常に大きな障壁です。課金単価が低い場合は、広告モデル同様に規模も求められてきます。

課金モデルのサービスを始めるのであれば、そのサービスを通して得られる情報や体験に、どこまで経済的な価値を乗せられるか、という部分の設計が肝になります。それもふまえ、以下のようなことを入念に検討する必要があるでしょう。

  • ユーザがお金を払ってでも得たいと思うコンテンツや仕組みが提供できるか?
  • そのコンテンツや仕組みを安定的に供給するには、どういう体制が必要か?
  • ユーザが支払いたいと思える価格設定になっているか?
  • 想定する単価だと、どのくらいのユーザを集める必要があるか?その方法は?

大きくスケールしなくても利益は出せるが、在庫・流通管理が大変な「ECモデル」

説明するまでもないですが、モノを売って収入を得るのがECモデルです。実在するモノを売るため、課金モデルに比べると、ユーザがお金を支払う上での動機づけは比較的容易と言えます。取り扱う商品の特性によっては、比較的小規模でも事業を黒字化させることもできます。単に売り切るのではなく、定期購入のように継続性を持たせるモデルも増えています。

一方、ロジスティックを必要とされるのが、他のモデルとの一番の違いです。製造業、卸売業、小売業には参入しやすいですが、それ以外の新規参入者にはハードルが高いモデルといえます。魅力的な商品を見極める力、キャッシュフローのバランス感覚も、ECモデルで成功する上で必要でしょう。

ネットで完結しない故の難しさはありますが、以下のようなことを十分に検討し、解決できれば、他に比べると比較的継続性の高いモデルかもしれません。

  • 商品の調達から発送に至る物流はどういう体制で行うのか?
  • 無理のないキャッシュフロー、事業を続けるのに十分な利益を作り出せるか?
  • 魅力的な商品を集めてくることができるか?
  • 想定される利益だと、どのくらいの顧客を集める必要があるか?その方法は?

やはり規模の勝負に出なくてもいいが、専門的な知見と根回しを必要としやすい「仲介モデル」

サービスの提供者と、それを求める利用者を繋ぐことで収益をあげるのが仲介モデルです。サービス提供者もしくは利用者が定額の利用料を支払う場合と、成果報酬で仲介料を受け取る場合があります。不動産、人材活用、結婚支援から、仕事のマッチング、オークションに至るまで、業態・業界は多岐にわたります。コンテンツや在庫が必要なく、また価格設定次第では、規模に頼らなくても黒字化させることができるメリットがあります。

一方、サービスを設計するには、ターゲットとする業界の専門知識やネットワークを必要とされることが多いです。サービス提供者に対する人的営業など、事業基盤を整備するためには手間がかかる部分も多く、ネット以外での根回しが大きな障壁になりやすいモデルです。

ただ一方で、以下のようなことが十分に検討できれば、先行者利益を活かして事業を継続させやすいモデルともいえるのではないでしょうか。

  • 定額利用料にするか?成果報酬にするか?対価として妥当な金額設定は?
  • 利用者だけでなく、サービス提供者をどうやって集めてくるか?
  • 利用者とサービス提供者がWin-Winの関係になれる価値を提供できるか?
  • 想定される金額設定だと、どのくらいの成約数が必要になるか?

まとめ

実際には、この4つのタイプの一つだけを採用するのではなく、複数を組み合わせているケースも少なくありません。また、どのモデルにも長所と短所が存在しますが、短所の大きさは、参入障壁の高さであり、ある面では新規参入を食い止める防波堤になっていたりもします。

事業を作るというのは簡単なことではなく、どのモデルを選択しても、成功に至るまでには地道で泥臭い作業もたくさん必要になってくるでしょう。やってみなければ分からないことも多いと思います。

しかしそういった前提があるにせよ、猪突猛進で収益モデルを安易に決めてしまうのではなく、自分が選択するモデルの長所・短所をあらかじめ掴んだ上で選択することは、決して無駄にはならないのではないかな、などとも思っていたりします。というわけで、この情報が皆さんの参考になれば幸いです。