仕事ができる人の条件、みたいな記事をしばしば見かけますが、私の中では「仕事ができる人=メールの返事が早い」というイメージがあります。100%そうとは言い切れませんが、仕事ができる人は結構忙しいはずなのにメールの返事が早い、というのはある程度の確率で当たっているように思います。
では、仕事ができる人は、頭の回転が尋常ではなく、意思決定が超高速だったり、あるいはそもそものタイピング速度が通常の3倍だったりと、超人的な能力を持っているということなのでしょうか。
きっと、そうではありません。仕事ができる人というのは、フィジカルにスピードが速いわけではなく、仕事ができる人特有の「思考パターン」を持っているからだと思います。「メールの返事が早い」というのは、その「思考パターン」がみちびく現象の一つにすぎないのでは、というのが私の考えです。特に、重要度の高くないメールの扱い方に、仕事ができる人の行動パターンが顕著に表れるようにも思います。
もう少し具体的に考えてみましょう。
打ち合わせの出席を打診するメールが来ました。内容は、打ち合わせの趣旨、他の出席者と、それに対する出席可否の回答を求めるものです。出席は必須ではないため、重要度はそれほど高くありませんが、人数を確定させる必要があるため、返信は必ずしなければなりません。内容とスケジュールを確認して返信するまで、5分もかからないような作業です。
受け取った人が、このメールをすぐに返信する場合と、すぐに返信しない場合の、メリットとリスクをまとめると、以下のようになります。
ご覧のように、些細なこととはいえ、メリット、デメリットの差は歴然です。
仕事ができる人にすれば「いつやっても同じなら今やった方がいい」というだけのことかもしれません。しかし、意識しているしていないに関わらず、仕事ができる人というのは、こういう合理的な意思決定が自然とできる人であるように思います。
ここで評価されるべきは、すぐにメールを返信するかどうか、という表面的な行動ではありません。些細なことでも合理的な判断をできるかどうか、という点です。逆にいえば、合理的な理由付けができる状況では、仕事ができる人でもメールの返信を後回しにすることはあるでしょう。
一方、いつもメールの返信を後回しにする人、すぐ返せばいいメールをいつまでたっても返さない人、というのはどうでしょうか。そういう人は、合理的な判断よりも、その場の気分を優先する傾向が高いのではないでしょうか。
メールの返信を後回しにする理由には、メールを出した相手ではなく、自己都合のものが多いです。一方のデメリットを見ると、目の前のことにとらわれて長期的な作業効率を考えることができず、メールを出した人に対する配慮の欠如も見受けられます。自己都合で物事を考え、他者の気持ちを汲み取らない人が、仕事ができる人である確率は、当然低くなるでしょう。
繰り返すようですが、すぐにメールを返信しないから、仕事ができない人だというわけではありません。仕事を効率化するために、あえてある時間帯以外メールの返信をしない人もいますし、当たり前ですが、外出が多い職種の人、立場上、打ち合わせや会議が多い人、他の行動をせず集中することを求められている職種の人などでは、メールの返信がいつも遅くなって当然でしょう。
ただ、メールの返事が早い人には合理的な判断ができる人(=仕事ができる人)が多く、理解できる特段の理由もないのに、メールの返事がいつも遅い人の中には、自分主体で気配りができない人(=仕事ができない人)が多く含まれやすい、というある程度の傾向はあるように思うのです。