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最近のWebデザイン界隈におけるフラットデザインブームってなんか間違ってませんか?

iOS7の発表で、フラットデザインというものがより一層注目されているように思います。その前からも、私のFacebookのフィードやGunosyには、フラットデザイン関連の記事が、ほぼ毎日のように流れてきており、注目のほどがうかがえます。

ただ、このフラットデザインブームに強い違和感を覚えるのは私だけでしょうか。特にPCサイト向けのWebデザインにフラットデザインを取り入れよう、みたいな動きに関しては、何かが間違っているような気がするのです。その思いを整理するため、少しまとめてみました。

そもそもフラットデザインが成立する条件は?

私が初めてフラットデザインという言葉を聞いたときに思い描いたのは、単にグラデーションや影といった立体表現を行わないデザイン、という程度のものでした。もちろん、フラットデザインとは端的にはそういうことなのだとは思いますが、デザインから立体の概念を消し去ることは、表層的なデザインに留まらず、以下のような要求も生み出します。

  1. ボタンとそれ以外が直感的に区別できる、要素パターンの少ないページ構成
  2. 大きなマージンで情報の塊を際立たせることができる、大ぶりなレイアウト
  3. 1と2の条件に合うページだけで構成できる、Webサイト全体の設計

例えば、ある規模以上の典型的なコーポレートサイトは、上記の条件に当てはまりにくいでしょう。詳細画面では上記に当てはまっても、情報の一覧性とナビゲーション機能を求められるカテゴリトップやホームでは、要素の単純化は難しくなります。また更新に対する拡張性・柔軟性を考えると、フラットデザインが前提では都合が悪い局面もでてくるでしょう。単純にフラットにすることはできるでしょうが、クリック率、CV率が落ちるなどのリスクが高まる懸念は拭えません。

このことは、サービスサイトやブランドサイトでも同様です。情報密度が高く、インタラクション要素と非インタラクション要素が入り組んで混在しがちなECサイトや情報ポータル系のサイトではなおさらではないかと思います。ランディングページの類いでは、フラットデザインの導入は控えるべきタイプかもしれません。絶対に適さないとは言いませんが、適さない可能性が高いとは思います。

そう考えると、上記のような条件を満たせるのは、以下のようなサイトに限られてきます。

  • 1ページに掲載する情報の種類が少なくてもいいサイト
  • テンプレートの種類が少ないサイト
  • インタラクションと非インタラクションがあまり混在しないサイト

デザイナーや制作会社のポートフォリオ中心のサイトならいいかもしれません。あるいは美しいデザインを見せるためのギャラリー的なスペシャルサイトもいけるかもしれません。要素がシンプルな単機能型のSNSやWebサービスも適するかもしれません。しかし一方、これは非常に限定的な条件で、すべてのWebサイトが従っていい条件ではないように思います。

こういう、限定的な条件の元に使われるべきデザインが、さも現在のトレンドで、そうある方がデザインとして先進的で、多くのWebサイトのデザインがそうあるべき、というようなニュアンスを帯びて扱われるのは、おかしいのではないか、と思うわけです。

閲覧環境の違いを考えているのか?

フラットデザインがこのように注目を浴びた理由には、色々あると思いますが、一つに、スマートフォンやタブレットの浸透というのも、確かに存在するでしょう。特にスマートフォンは、フラットデザインが成立しやすいデバイスであるといえます。

昨今のスマートフォンの場合、タッチパネルが前提になっています。つまり、画面全体がインタラクション要素であり、ここが押せる要素です、ここは押せない要素です、と強く明示する必要性が、PCサイトほどではありません。

また、画面が小さいことも、フラットデザインには向いています。画面が小さいということは、載せられる要素を絞らなければならず、必然的に、ナビゲーション要素を少なく一カ所にまとめるか、画面全部をインターフェースにするかしなければならなくなります。また、指でタッチすることを考えると、そのインタラクション要素はある程度の大きさが必要となります。つまり、フラットデザインと相性の良い、大ぶりでシンプルなレイアウトを要求される環境であるといえます。

一方で、PCで見ることが前提のWebサイトは、必ずしもそうではありません。画面は広く、押せる要素、押せない要素が混在します。ページによって、混在させないように作ることもできますが、どうしても混在させざるを得ないページも発生し、それも含めて、Webサイト全体を設計しなくてはなりません。

こういったWebサイトでフラットデザインを取り入れることは、ユーザビリティを大きく損ねるか、さもなくば、コンテンツや設計をフラットデザインに合わせるようなことをしなくてはなりません。Webサイトのデザインが、ビジネス要件から発生してブレイクダウンして定義されるものと考えると、それと逆行する考えです。

もちろん、逆行して発案して問題ないWebサイトもあると思いますが、そうでないWebサイトの方が大半ではないでしょうか。そこに、トレンドだからという理由で、フラットデザインの思想を捻じ込まれたら、効果よりもリスクの方が大きくなることは、目に見えて明らかです。

商品の一部としてのデザインと、商品を売るためのデザインは違う

 フラットデザインが注目されるのは、Windows8やiOS7といったOSで採用されている、というのも大きな理由の一つでしょう。

ただ、こういったOSのデザインに採用されているから、Webサイトのデザインにも採用しましょう、というのは論理的にいささか飛躍していると感じます。

OSのデザインというのは、確かにインターフェースデザインという意味では同じなのですが、一方でこれらは商品の一部でもある、という側面があります。つまり、インターフェース自体が売り物の一部である、という点です。これらのインターフェースが、製品デザインの一部として、購入した消費者の所有物となるのです。インターフェースを大きく変え、インパクトを与えることが、PRやクチコミなどに繋がり、大きなプロモーションになったりもします。別のものに例えるなら、車のインテリアデザインに近いものかもしれません。

ですが、Webサイトはどうでしょうか。Webサイトは、製品そのものではありません。製品を売るために必要な情報を格納しておくコンテナであり、購入したユーザが所有する物ではありません。OSのデザインと、Webサイトのデザインは、同じインターフェースデザインというジャンルでありながら、ビジネス的に求められる役割が微妙に違います。

このように役割が違うOSのデザインで採用されているからといって、Webサイトのデザインに取り込むのは、どうでしょうか。もちろん、条件として、共存しあえるのであればいいでしょう。しかし、情報コンテナとして本来優先的に確保しておかなければならない利便性を失うリスクがあるのなら、OSで採用されているからという理由でフラットデザインを取り入れるのは、大きな間違いであると思うわけです。

結局何が言いたいかというと

私としては、フラットデザインというのを別に否定しているつもりはありません。ビジュアルリッチなスキューモーフィックデザインが溢れる中で、フラットデザインの方が新鮮さを感じるという感覚もよくわかります。フラットデザインを適応し、ユーザビリティを落とさず、快適さを演出できるのであれば、そうあって良いでしょう。

ただ、トレンドだからフラットデザインにしましょう、OSで採用されているからこれからはフラットデザインだ、という、Webサイトとして本来考えるべきビジネス要件などを無視してフラットデザインを提案したり、結果的にユーザを逃がすようなデザインを乱造するのはやめましょう、ということです。

フラットデザインは、あくまで選択肢。大事なのは、ビジネス要件、コンテンツ、設計とのバランスです。それと折り合うならば、フラットデザインもOK。でも、コンテンツや設計に支障を来すのであれば、安易なフラットデザインへの迎合はやめましょう、というわけです。

これが私の杞憂で、実は世の中的にはフラットデザインに別にそんなにこだわっていないですよ、デザイナーだってみんなそんなの分かってますよ、ということであれば、一安心。この記事は適当に読み流しておいてください。

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