マーケティング、デザイン、キャリア

Flashがあったから、今の自分がある。

 

Flash。Webクリエイティブの世界で一世を風靡したプラグイン。

最盛期は95%を超える圧倒的な普及率を誇り、数多くのWebサイトがFlashで作られました。特に広告賞を獲るようなWebサイトはほぼすべてがFlashで、デザイン性が高いWebサイト=Flashサイトと評価されるような状況でした。

その勢いはやがて、携帯アプリを作成できるFlash Lite、デスクトップアプリが作れるAIRやFLEXのようなシステム系ソリューション、Flashをベースにした動画フォーマットのFLVなどに発展。スクリーン上のインターフェースはすべてFlashベースで作りましょうよ、という流れさえありました。

それからわずか数年。アップルがiPhoneやiPadの勢いのまま「Flashいらんやろ」の姿勢を貫いたため、あれだけ業界を席巻していたFlashも今や風前の灯。検索エンジンやアクセス解析に十分に対応しきれなかったため、Webサイトがマーケティングツールとしての性格を強めていく流れにうまく乗れなかったことも衰退要因の一つでしょう。

近年は「Flashは使いたくない」という企業側の意向も強く、ゲームや動画と融合したようなサイト以外では、Flashが使われることはなくなってしまいました。

私自身は、2001年にWebデザイナーとしてこの業界に入ってきました。その頃は分業化があまりされていなかったため、デザインやHTMLだけじゃなく、Flashも担当していました。

当時は2 Advanced Studio、Group94、North Kingdom、Fantasy Interface、Firstborn、Big Starship、Unit9、Hi-ReS!といったような、Flashで刺激的なWebサイトを作る海外のプロダクションやクリエイターに強い憧れを持っていました。Flashサイトを担当できるというのは、Webデザイナーとしてのモチベーションの一つでもありました。出会いはFlash 5で、ActionScript 1の時代でした。

その後、ActionScript 2まではひとまずは付いていったものの、本格的なオブジェクト指向に段々追いつかなくなり、同時にディレクションやプロデュース系の業務も多くなった頃にActionScript 3が発表され、「こりゃもう無理だ」と思い、Flashからは事実上引退しました。

そういうわけで、私自身は昨今のFlash衰退の影響は受けてないのですが、思い起こすと、Flashには色々お世話になりました。感傷的な話でなく、Flashをやったおかげで得られたスキルがたくさんあるな、と思います。Flashをやってなかったら、今の私の仕事のスタイルは、きっと変わっていたと思います。

というわけで、ここではお世話になったFlashへの感謝を込めて、Flashをやって良かったと思うことをまとめてみました。

モーションに対する細かい目が養われた

Flashはもともとアニメーションツールだったこともあり、非常に細かい動きまでコントロールできました。0.1秒の違いでも、操作の気持ちよさに影響を与えるんだなぁと、タイムラインや動きを制御する変数をいじりながら、実感したものです。

その目は、HTML5の時代になっても失われていません。仕様通り機能していても、動きが気持ちよくないと、もっとこうした方がいいのに、とつい思ってしまいます。スマホアプリも同様の目で見てしまいます。こういう動きに対する細かい目は、間違いなくFlashによって養われたものです。

プログラミングの苦手意識が無くなった

私は元々、プログラムやシステムといったものにかなりの苦手意識がありました。しかし、Flashで表現力を高めるにはActionScriptを覚えるしかない。ActionScriptはまがりなりにも、ECMAベースの本格的なプログラミング言語です。

結果、いつしかプログラムが身近なものとなり、プログラムが絡む話で思考停止になることもなくなりました。エンジニアに劣等感を感じず、対等な意識でお願いや議論ができるようになりました。「デザイナー出身の割にはシステムの話理解してますよね」ってごくたまーに言われたりもしますが、それはFlashのおかげです。

処理速度というものを意識できるようになった

FlashはCPUへの負荷が高かったので、下手なオーサリングをすると、すぐに重くなりました。そういう経験を繰り返すうちに、演算回数の多い綺麗なソースコードより、変数ベタ書きのブサイクなソースコードの方が速くなる、なんてことも理解するようになりました。

私はPHPもJAVAもできませんが、システム系案件で処理の高速化を求められるようなことがあった際に、エンジニアにアルゴリズムを聴きだしながら、その原因を一緒に追究したり、アイデアを出すことはできたりします。こういうのは、ActionScriptをやってなかったら絶対にできなかっただろうな、と思います。

企画やアイデアの幅が広がった

最初はただのアニメーションツールだったFlashですが、やがてXMLを扱ったり、外部のAPIと通信したり、CookieライクなSharedObjectなどが使えるようになりました。その頃から「そうか、Webってこんなことができるんだ」と思えるようになり、Webサイトを発想する上での意識の制約がかなり減った記憶があります。

もちろん、JavaScriptやサーバサイドスクリプトを真面目に学習すれば同様のことはできたのでしょうが、Flashというデザイン系ツールの中でこういうことができるようになったからこそ、デザイナー出身の自分が、システムが絡む企画を立てたり、実装よりのアイデアからUIを考えたりできるようになったのだと思います。

自由なレイアウトでデザインができるようになった

上から順に要素を積んでいくようなHTMLのデザインと違い、Flashサイトのデザインは、情報の「型」をあまり意識せずデザインできるのが特徴でした。特に私がFlashを触り始めた当初のHTMLはテーブルレイアウトが主流だったので、まるでキャンバスに絵を描くように自由にレイアウトできるFlashサイトのデザインは、本当に楽しかったです。

その後、CSSが主流になり、HTML5+CSS3の時代になってHTMLの表現力はどんどん高まる中で、Flashサイトで培われた発想の自由さが、自分に良い影響を与えている気がします。おそらくHTMLサイトのデザインしかやってこなかったら、今の自分のデザインの引き出しはここまで広がらなかっただろうな、と思います。

アプリのデザインができるようになった

RIAという概念が広まったころ、Web系のアプリケーションをFlashベースで作ることが盛んに行われていました。特にFLEXやAIR案件は、もはやWebサイトではなく、アプリケーションのUIデザインそのものでした。その頃は、Webサイト以外に、OSやアプリのデザインを注意深く見ることも多かったです。

こういった仕事で得た経験は、現在のスマホやタブレットのアプリデザインに活かせる部分も多々あります。先日も自社サービスのアプリのデザインをしていたのですが、これ、Flashでのアプリデザインになんか似てるなぁ、などと思いながらデザインしていました。

まとめ

かつて「すぐに陳腐化する技術を身に付けるのは無駄だ」といった方がいました。しかし、私は必ずしもそうではないと思います。今この時代に必要とされている技術に真剣に向き合えば、そこから将来に繋がる何かが学べたりするものです。

Flashからは、単にオーサリングのノウハウという表面的なことだけではなく、UIをデザインするというのはどういうことなのか、というもっと大きなことを、私は学んだ気がします。今この時点で、Flashをまたやろうとは決して思いませんが、何か一つの技術を習得することは、例えそれが陳腐化しても、決して無駄ではないんだと思います。そんなことも、Flashから学んだことです。

そんなこんなで、Flashさん、ありがとうございました。なんらかの技術的トレンドで再び脚光を浴び、再度お目見えする機会があった際には、またよろしくお願いします。

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