すべての人が情報発信をすべき理由

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代表取締役 枌谷 力

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「ブログかSNSで何か発信すればいいのに」という話をすると「自分はまだそのレベルにないので…」という人がいる。その時は必ず「情報発信に必要なレベルとかないですよ」という話をする。こういう人には、情報発信はそれなりのレベルの人や経験豊富な人がするもの、という固定観念があるようだが、今はそんな時代ではない。

例えばAという分野について、10段階でレベル10の人がいるとする。この人が発信する情報は確かにAに関わる人すべてが参考にできるだろう。ではレベル5の人の情報はどうだろうか。レベル6以上の人には役立たないかも知れないが、レベル5未満の人には有益な情報になりえる。ではレベル2の人はどうだろうか。レベル3以上の人には役立たなくとも、レベル2になるまでの方法は教えられる。業界分布がレベル8以上が一握りで、レベル2未満が多くを占める構造なら、多くの人から喜ばれるだろう。

では、まったく経験がないレベル0の人はどうだろうか。Aに関わっている先人たちに役立つ情報提供はできないだろう。しかし、なぜAに関わろうと思ったのかという話は、これからAを目指す人たちには貴重な情報になりうる。さらに、優秀な未経験者を探しているAに関わる採用担当者にとっても、これは貴重な情報になるかもしれない。

つまるところ、情報発信ができない人というのはこの世にはいないのである。切り口とターゲットさえ工夫すれば、誰でもなんらかの有益な情報を人に与えることができる。

ネットがない時代は、情報発信の手段は一部の組織に牛耳られていた。それら組織に認められたハイレベルな人だけが情報発信をし、全レベルの人に大量に届けるしか手段がなかった。しかし今はレベル3の人が情報を発信し、レベル2以下の人に届けることができる。これがインターネット時代のすごさである。

情報発信に尻込みをする人は「ネット以前の情報発信ルール」に縛られているのではないか。もちろん情報を発信し、それがうまく伝達できるかどうかの問題はある。しかし、やらなければうまくはなれない。トライ&エラーしかない。だから情報発信をすべきと思ったら、スキルアップしてから…などと悠長なことを言わず、今すぐやるべきなのである。最初の一歩が遅くなるほど、上達するのも遅くなる。

知識がまだ十分でない人の情報発信に対し、「当たり前のことを偉そうに語るな」「レベルが低い」と悪く言う人もいるかもしれない。そんな人の風当たりが怖くて、尻込みしてしまうのかもしれない。しかし恐れる必要はない。

こういうことを言う人は、上記のような「同じ情報でも人によって価値が変わる」という当たり前のことが分かってない人なのである。自分にとっては価値がない情報が他人には価値ある情報かもしれない、という想像力が働かない人たちなのである。「誰もが自分に合った情報発信をし、自分に合った情報を選ぶことができる」という今の時代のルールが分かっていない。だから気にする必要は全くない。

また、経験不足ゆえに誤った情報や偏った考えを発信してしまい、批判されることを恐れる気持ちもあるかもしれない。人から何かを指摘されるのは確かに凹むことだ。しかし、長い目で見た時にはプラスになることの方が多いだろう。

誤りの指摘の中には、自分にとっての新情報が含まれている。頼んでもいないに、情報を持ってきてくれるわけである。しかもそれを受け入れるか無視するかの選択権は自分にある。価値があると思えば知識として取り込めばいい。価値がないと思えば無視すればいい。

レベル2で、誤った情報発信をして指摘された人と、何も情報発信をせず誤りを指摘されない人がいたとしよう。前者は確かに一時的に凹む体験をするかも知れないが、自分の誤りや偏りに気が付き、新しい知識を得る。後者はストレスなくヌクヌクと暮らせるが、自分の知識の誤りや偏りには気が付かないままだ。時間がたてば、前者と後者ではレベルの差が出ることだろう。

ただそれ以前に、情報発信をしたら批判される、炎上する、などと恐れるのは多くの場合杞憂だ。それよりも、発信したのに何の反応もないことの方が圧倒的に多いだろう。やってもやっても反応がなく、やがてモチベーションが下がり、止めてしまうことの方が多い。どちらかといえばそちらの心配をした方が良いかもしれない。

モチベーションを維持するためには、情報発信のメリットや特性を良く知っておくとよいだろう。それはたくさんあるが、特に、情報発信をしてる人に情報が集まってくるという特性は知っておくと良い。

SNSで情報発信をすれば、上記のように誤りを指摘してくれる人がいる。シェアするときに新しい情報を付加してくれる人がいる。はてブやツイッターのコメントには、関連する情報が付随してくることもある。さらには親切な人が目を付けてくれて、イベントや飲み会に誘ってくれることもある。

情報には磁石のような性質があり、情報の発信源に引き寄せられて集まってくる。発信源の引力が強ければ強いほど良質で鮮度の高い情報が集まってくる。新聞や週刊誌などはその代表例だが、そこまで強力な磁場を持たなくても、普段の仕事に役立つそこそこいい情報なら、目的意識を持った情報発信を続けていれば、やがて集まるようになってくる。

最後に私の経験だが、「自分はまだまだそのレベルにないので…」といったたぐいの謙遜をする人は、十中八九、いつも理由を付けて何もしない人である。自分が行動しないことを上手に正当化し、行動しないままでいようとする人の常套句である。このような、「行動しない人」の典型に収まる様な思考をしてはいけない。それを打破する意味でも、思い立ったことがあるのなら、多少たどたどしく、つたなくても、その日から動き始めるべきである。まずは今日のうちにブログ開設、明日は執筆、明後日は投稿とSNS拡散。このくらいのスピード感が必要だろう。

そしてたとえ反応がなくても、情報発信を愚直に毎日続けてみよう。反応がもらえるように工夫しながら、1年、2年と続けてみよう。

私はSNSやブログを本格的に使うようになって、それ以前では想像もつかないような出会いや出来事にたくさん遭遇した。これから始める人にも必ず、情報発信を行わなかったときには想像できなかった出来事が、身の周りに起こることだろう。何事も期待しすぎは禁物だが、続けていれば良いことがあると、情報発信に関してはある程度信じてもよいのではないかと思う。

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