対顧客におけるディレクションについて、メールやチャットでのやりとりは日々の業務に当たり前のように浸透している。直接顔を合わせないコミュニケーションが増えているからこそ、物事を伝える際には相手の属性や性格、その時々のシチュエーションなどへの配慮を欠くと、望まない結果につながりやすい。
そんな中、相手の状況を見抜く力が優れたいわゆる「気がきく」ディレクターの行動には幾つかの共通点があると私は考えている。例えば、いくつものプロジェクトを掛け持ちながら全体を俯瞰するプロデューサークラスのような管理者と、プロジェクト中に定められたひとつひとつの細かなタスクを現場レベルでこなす担当者に対してでは、同じ事象を伝える場合でも粒度を考慮しているのだ。今日はその共通点を具体的にまとめてみたいと思う。
プロデューサーのように俯瞰する立場の人は、同じプロジェクトの中でも毎日さまざまな人から大量の報告を受けていることに加え、そのプロジェクト以外にも複数の案件を抱えていたりと、基本的に多忙である。そうした人に対しては大きな粒度で物事を伝えると良い。
まず結論から伝えること。これはメールやチャットに限らず会話でも同じだ。話の筋が見えないまま延々と説明を続けると「いつまでこの話が続くんだ…」「結局何が言いたいんだ…」と相手を苛立たせることになる。枕詞に「結論から言いますと…」を癖付けると良い。
次に大切なのは見てほしいポイントを絞ること。報告の際に根拠となる資料を添付することもあるが、何ページもある資料を添付して「確認お願いします」は気のきいた対応ではない。注目して欲しい箇所に色をつけたり、追加・更新した箇所に印を入れておくといった気遣いも必要だ。
最後は自分で考えた方針を伝えること。プロジェクトが進む中で想定範囲外の出来事は必ず起こる。しかしその度に「○○なのですがどうしましょう…」と判断を仰ぐべきではない。「○○なので○○という対応で進めます」と伝えると、伝えられる側の負荷を減らすことができる。
一方で後者の場合には、具体的にどのような行動を起こすのか?という情報を求めているケースが多い。また行動するための理由もそろっていなければスムーズに理解してもらえない可能性もあるため、できるだけかみ砕いた細かい粒度で伝える必要がある。
まずは事象の背景を伝えること。人はなぜ自分が動く必要があるのか?を理解すると、自然と行動に結びつけることができる。「○○をやってください」と伝えるよりも「○○という理由があるので○○をやってください」と伝えると、相手も動くことに納得しやすくなる。
次に、対応してほしい内容は細かく伝えること。現場担当者の方には実際に作業を進めてもらわなければならないため、資料なども漏れなく共有してどんな対応をしてほしいのかを詳しく伝える。ただ、相手のweb制作に関する知識レベルを考慮して依頼する必要はあるので、理解が及ばないであろう担当者の方に対しては、分かるレベルの言葉や依頼内容にしなければならない。
最後は対応の期限を必ず伝えること。「確認をお願いします」とだけ伝えて依頼したつもりになっていても、期限を伝えておかなければ忘れ去られるか、スケジュールがずれ込むことにもつながる。また期限を過ぎた場合のデメリット説明も忘れてはならない。
もちろんすべてがこの限りではないが「相手は今どういった状況なのか?」「どういう情報が一番求められているか?」を考えた上でコミュニケーションを取るということが、どんな方に対する場合でも基本となるのではないだろうか。
自分が伝えたいことを自分が分かりやすいように事細かく書いたからといって「これを読んでもらえば過不足ないだろう」「これで分からなければ相手に問題がある」と考えるのは、情報を伝える側の甘えである。
社外・社内を問わず、一方的なコミュニケーションによって伝達ミスが起きることは多い。自分が相手の立場であればどういった伝え方をしてもらえると助かるのかを冷静に考えた上で、コミュニケーションを取ることが求められるのではないだろうか。