カメラマンから学んだ撮影ディレクション

webサイトのコンテンツのひとつに「写真」がある。制作フェーズにおいては、写真素材サイトを利用する場合と、撮影をしてオリジナル写真を作る場合の2パターンに分けられる。私が最近担当している製品サイトでは、撮影をして利用イメージを作ることになった。

撮影場所は、ハウススタジオと呼ばれる住宅設備が充実した一軒家。スタジオはネットで検索していたが、やはり自分の目で、自然光の入り具合や家具・小物の状況など確認したいことはいくつかあった。そこで、ロケハンと呼ばれる撮影地の下見に行ってきた。

初めての経験することもあったが、一緒に参加したカメラマンから「デザイナーは、こういうポイントを抑えるいいよ!」とか「別案件ではこういう進め方もあるよ!」と親切に教えていただいた。その内容からロケハンを通して、気をつけたいポイントを3つにまとめてみた。

1. クライアントの意図も踏まえたコンセプト作り

以前先輩から、写真選定の際に、次のようなことを言われた。
  • 写真は短絡的に雰囲気だけで選ぶのではない
  • 中に写っているモチーフとそこで魅せたいことの本質を考える必要がある
なので、撮影する側に回るなら、魅せたい情報やモチーフは明確に決めて、コンセプトを考える必要があると思う。今回の撮影は、製品が複数あり、製品ごとで写真の仕上がりイメージが異なる。ロケハンに行く前に、コンセプトを取りまとめたのだが、カメラマンから「予めクライアントに、製品コンセプトや演出シーンについて聞くと、認識のずれはなくスムーズに進められるよ」と教えていただいた。

たしかにこちらで一方的にコンセプトの整理をしても、相手の意図を汲み取らないと二度手間になる可能性がある。私は、クライアントに聞くことを躊躇していたが、悩みすぎず、早めに認識の擦り合わせをした方がいいと学んだ。その際に、撮影イメージと近しい写真があれば、写真を見せて確認していくと効率がいいなとも実感した。

また、カメラマンの方が「各カットごとにシナリオを立てるといいよ」とおっしゃっていた。シナリオとは、例えば “このカットは、集英社で働く30代後半の女性が、休日に雑誌またはタブレットでネットを見てくつろいでいて〜” のようなもの。シナリオを設定することで、撮影に参加するメンバー間で共通認識ができると感じた。さらに「そのシナリオなら、あの小物があった方がいいよね」という具合に、新たなアイデアに繋がることもあるのかもしれない。

2.ロケハンでの大切な情報収集

カメラマン曰く、撮影の際にアングル探しが1番時間がかかるそうだ。これが決まらないと照明機材などの準備にも支障が出てくる。ロケハンでは、本番にそのようなことが発生しないよう、予め選定したスポットごとで、複数のアングルから写真を撮り、最終的どれで撮るのか決めた。そして、各写真ごとに、モデルを入れるならどんな人物か、服装はどんな感じか、小物は何を使うのかなどを擦り合わせた。

特に今回は住宅撮影なので、家具しかないと殺風景になってしまう。よりリアルな生活感を演出するためには、実際に人が住んでいると思わせるような小物は重要だと感じた。例えば、食事シーンのカットなら、テーブルと椅子だけではなく、テーブルクロスやお皿、フォーク、ナイフ、実際の食べ物などのように、リアルな絵を撮るためのもの。

スタジオによっては小物を無料レンタルできるところもあれば、1点あたりで料金が発生するところもある。もちろんスタジオのサイトにも小物は紹介されている場合もあるが、現場では、傷や汚れがないかも確認した方がいい。また、ロケハンの際に小物の写真を撮っておくと、後から振り返ったときにどんな小物が使えるか、逆に不足している小物の参考にもなる。

ただ、不足している小物をすべて購入すると費用が膨らむ。その際に「レンタルショップを活用するといいよ」と教えていただいた。ロケハンの帰りに、キッチンやテーブルまわりの撮影用小道具があるUTSUWAというお店に寄ったのだが、例えばグラスでも6000円くらいのものが、3泊4日で500円程度でレンタルでき、場合によっては活用すると良さそうだ。

3.撮影当日に向けての写真の作り込み

撮影の際は、香盤表という当日の動きの流れがわかるスケジュール表を作成する。その中には、上記1.2に出てくるような、各カットごとのコンセプトやストーリー、モデルの情報、家具・小物などの細かい情報も記載する。ただ実際に撮影地に行ってみると、当初想定していた内容から変更する箇所がいくつか出てきた。

ロケハンをしていないと当日ばたつくなと考えていると、カメラマンが「すべての撮影案件でロケハンを実施できるものでもないよ」とおっしゃっていた。企業によっては、アートディレクターやスタイリストが、絵コンテと呼ばれる写真の設計図を作り込むそうで、それがあれば、どう光を当てればいいのか予め考えることができ、あまり問題はないとのこと。

そんな話を聞いて、ロケハン終了後、改めて競合のイメージ写真はどのように作られているのか?とか、インテリア雑誌を見てどんな演出をしているのか?小物は何を使っているのか?と写真を作る人はどんなことを考えているのか気になり調べていた。まだまだ私には、写真作る前に、細かく描く準備が必要だと学んだ。

最後に

1年前は、素材写真からいかにいい写真を選ぶか?ということしか頭になかった。ただ、仕事で撮影する機会が増えてから、いい写真を作るには?ということも考える機会が増えた。案件によっては、すべての撮影条件が揃うことはないかもしれないが、カメラマンから、そんな中でもデザイナーとして最低限のポイントを抑えておくと、撮影はスムーズにいくことを学んだ。デザイナーとして写真を見る目を養うと共に、写真を作っていく仕事も楽しんでやっていきたい。