ビジュアルの魅力は重要ではない、という誤解

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デザイナー 池田 彩華

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社内の勉強会で「ベイジが考えるデザインとは?」というテーマで話があった。人それぞれ思想があり、企業によっても考え方が異なる。いろんな価値観があるからこそ、議論がブレやすいポイントの1つだろう。

わたしたちは、事業貢献するウェブサイトを作るために、マーケティング的な考え方を最大限活用している。合理的な一面もあるので、次のような考え方が根底にある。

  • 顧客の成功のためにウェブサイトを作る
  • 顧客とユーザーの利益のためにデザインする
  • デザイナーの独りよがりなデザインはしない
  • 時間や生産性を大事にし、バランスを取る

一方で、「ビジュアルの魅力は重要ではない、と誤解をしていないか?見た目はユーザーに影響しないから、拘ってもあまり意味がないと思っていないか?」という大きな問いがあった。

機能性と情緒性は両立するもの

ベイジに限らずだが、「機能性(コンバージョンを目指す合理的な作り) VS 情緒性(ビジュアルの魅力)」で対立するシーンを見かける。

まさに白か黒かのように、極端に考えてしまうとこのような考えになってしまう気もするが、本来は相反するものではなく、ベイジでは「機能性と情緒性の両方を満たすことを追求したい」という話でまとまった。

機能性がいいけど見た目イマイチなアウトプットは、エンジニアさんがデザインしているときの期待感に沿ったものだ。

私たちデザイナーは、エンジニアでもなく、システム会社でもないので、使いやすさは担保しつつも、さらに魅力的だよねとなるような、+αが求められる。

以前、お客様に「ウェブサイトの構成要素のうち、コンテンツが大事でビジュアルは一要素」というお話をしたことがある。担当者さんからは、「とはいえ、ユーザーがウェブサイトを訪問したときに、まず第一印象はビジュアルの要素が大きいですよね」と言われたことを鮮明に覚えてる。

「顧客の成功」との関係性は?

ベイジでは、人材育成サービスである『グロースX』を導入している。さまざまなカリキュラムを受けて、社内で整理したところ「顧客の成功」には、次のような分類がある。

  • 「顧客企業」と「顧客担当者」の成功
  • 「定量的」と「定性的」な成功

過去弊社がご支援した企業様の傾向をみても、それらすべてを満たすと「成功」したと言える状態に近くなる。

ビジュアルの魅力が大事という話をしてきたが、それは「顧客の成功」のうちどこに効くのか。それは、顧客担当者の「定性的な成功」に強く働く。

  • 定量的成功:売上、顧客数、コンバージョン
  • 定性的成功:社内評価、経営層の評価、自分の満足度、社内に向けての誇らしさ

「成功」と聞くと「定量」の観点で考えがちで、見た目が良いことは、顧客の成功に貢献することが抜け落ちてることはないだろうか。言い換えると、ビジュアルの魅力が弱いことは、定性的な顧客の成功に貢献できない確率を高めることに繋がるのだ。

仕事は限られた時間の中制作を進めていくが、「時間がないから、見た目が追及できない」わけでもない。

実際に、過去にご支援した企業さまから、定量的な成果以外に「社員やグループ会社などから、◯◯のデザインが好評でした」とコメントをいただいたことがある。まさに、ビジュアルが定性的に成功に寄与した事例だ。改めて、時間や機能性を理由に捨てることではないな、と感じた。

ベイジが目指したいデザイン

では、ベイジがよしとするデザインは何か?次の3つの紹介があった。

  • デザインの合理性はちゃんと満たす(最低条件)
  • その上でできるだけ魅力的な見た目に持っていく(必須条件)
  • デザインの専門家からも評価される(理想条件)

よく会社では、「ウェブサイトで最も重要な要素がコンテンツ」だも言われる。一方で、コンテンツファーストだからと言って、ビジュアルにこだわらなくていいわけではない。コンテンツが企業ごとに違う、だからビジュアルは似ててもよしというわけでもない。

デザインの合理性は満たした上で、魅力的なビジュアルを追求することにはこれからも向き合っていきたい。

言語化しにくい領域

ビジュアルという領域には、どんな構成要素があるのだろうか。いろんな切り口があるが、社内の勉強会では、次の3つが紹介された。

  • 絵力(色彩センス、造形センス、空間センス)
  • 発想力
  • 素材選定力

それぞれ理論やテクニックや世の中に溢れるほど情報があるし、体系化されている。難しいのは、絵力は後天的には身に付けるのが難しいこと。

論理的に作ったから、最終的なビジュアルが魅力的になるとは限らない。要は、理屈ではない、言語化しにくく感じ取るもの、教えられない領域があるということだ。

プロジェクトでは9割くらいは理屈で作ることができても、ビジュアル領域まで落ちると、感覚的にモノを見て判断する部分が出てくるので、本当にこの領域は奥深い。

個人に依存せず、チームで解決していく

これまで取り上げてきたビジュアル力は、所属する会社や仕事内容にもよるが、「現状のベイジのデザイナーが全員できる必要があるか?」と言われると、そうではないと思う。

社内にデザイナーのスキルマップがあるのだが、そこには約80のスキルが定義されている。ビジュアルは、その中の一要素にしかすぎない。

これらを全て網羅している人は、かなり少数だろうし、ベイジで働くにしても、全部できるようになろうとするのは不可能に近いだろう。

人間は、だいたい才能の振り分けが行われているので、その人にしかない独自の強みがあるはずだ。チームを見ていても、各人の強みは全く同じではないし、私にはないが他の人が持っている強みもたくさんある。

どうしてもプロジェクトを担当していると、個で捉えがち。デザイナーチームで成果を出すために、これまでもデザインレビュー制度を作ったり、入社後の研修、外部のデザインマネージャーさんとの勉強会やワークショップいろいろ試してきたが、もっと他の観点から、チームで解決するために考える必要がある。

さいごに

ベイジが考えるデザインとは。これを機にみんなで共通認識を持てたことはすごくいいことだと思う。自社のビジュアル力を向上させるために、デザイナーチームでできることを整理して、施策を進めていきたい。

人や企業によって違う価値観の話であるので、今後新しいデザイナーさんが入社したら、研修期間でこの考え方を共有するようにもしていきたい。

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