『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』は、物事の理解度や表現の精細さ、思考の明晰さを指す「解像度」という概念を提示してくれている書籍だ。
この「解像度」は、ビジネスにおける新規事業の創出や現場の改善だけではなく、日常生活における課題解決(例えば趣味や家族間の問題解決)にも利用可能な汎用的なスキルと言えるだろう。
本書では、「深さ」「広さ」「構造」「時間」の四つの視点と行動法を通じて、この解像度をいかに上げるかについて深く掘り下げてくれている。そして、その全てを著者の馬田氏がこれまで経験してきた実際のビジネスの現場から得た知見や具体的な事例を交えながら解説している。
そのため、読者は抽象的な概念である「解像度を上げる」という行為を具体的な行動と結びつけることができ、とても読みやすかった。
本書は全8章から成り立っており、各章で解像度を上げるための視点を一つずつ取り上げ、それぞれについて深く掘り下げている。初めに解像度を上げる「深さ」「広さ」「構造」「時間」の四つの視点の説明から始まり、その後、読者自身の解像度の診断方法、解像度を上げるための行動の重要性、課題と解決策の解像度の上げ方、そして未来の解像度を如何に上げていくかまでを網羅的に解説してくれている。
馬田氏は、自身のビジネス経験から得た知識をもとに、解像度を上げるための具体的な方法を提供している。それは「まず行動する」「粘り強く取り組む」「型を意識する」の3つを組み合わせることだ。
情報を得たら直ちに思考に移し、思考したらすぐに行動する。そして、行動の結果得られた情報をもとに再び深く思考する。このサイクルを粘り強く繰り返すことで、解像度を上げることが可能になると本書では述べている。
また、思考をする際に、いわゆるフレームワークや考え方の「型」を使うことも有効であるとも言っている。これは武道における「守破離」の考え方と同じだ。
まず型を愚直に学び、実践することで、「なぜこの型になっているのか?」という背景の理解が深まり、その有効性を実感することになる。そこから、「今起きている事象に対しては、この型の◯◯を変えればより有用なアウトプットが生まれるのではないか?」という仮説が立ち、型を破っていくのだと思う。
私自身も、日々の業務を遂行する上での解像度の上げ方の課題感を持っていたが、本書を読むことでその「広さ」の視点とリンクする事象を見つけることができた。
例えば、ベイジではウェブサイト制作前に「戦略工程」というフェーズを設けている。その理由は、顧客の会社や事業、エンドユーザー、そして流入するユーザーがどんなチャネルからどのようなコンテンツを求めているのかといった情報を集め、整理することで、ウェブサイトを多面的に捉えるためだ。
さらに詳しく見ると、制約なく続けて公開できるウェブサイトは、多面性を高め、多様なユーザーと繋がる状態を作り出すことで、成果につながりやすい特性があるからと言える。これは解像度を上げる視点の一つである「広さ」に該当する。
つまり、この「広さ」の視点を持つことで、ウェブサイト作成が成果につながり、顧客のビジネスに貢献する可能性が高まる。これが解像度を上げることの重要性と言えるだろう。
馬田氏が提供する具体的な方法論や思考の枠組みは、それぞれの読者が自身のビジネスや日々の生活に応用しやすい形で提示されている。多くの読者が馬田氏の経験から得た知見を自身の生活に取り入れることが可能だと感じた。
本書『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』は、現代の複雑で高速なビジネス環境で活動するすべての人々にとって、重要な問題解決のツールとして、強くおすすめしたい一冊である。