「いかがでしょうか?」
これまでの仕事人生の中で何百回と聞いたことのあるフレーズだ。そして同じくらいこのフレーズを自分でも言っているかもしれない。
今日はそんな「いかがでしょうか?」について、ちょっと考えたい。
多くの場合、「いかがでしょうか?」は、クライアントや社内の目上の人に対して使われる。どんなシチュエーションでどういった意図で使われるかはさまざまだが、代表的なものはプレゼンや提案の場だ。
そこでは発表した内容に対して、大きな問題や気になる点はないかなどの意味で「いかがでしょうか?」が用いられる。それに対してクライアントや上司が「ふむ。~についてはどう思うかね?」と疑問を投げかけると、担当者は「え~っとですね、、、それについては~で~かと思いますが、いかがでしょうか?」と、ここでも「いかがでしょうか?」が飛び出す。
もう少し事務的な内容についての場面でも使われる。例えばスケジュールの確認。「今後のスケジュールとしては~のように進めようと思っていますが、いかがでしょうか?」こんな具合だ。
「いかがでしょうか?」に似ているものとして、「よろしかったでしょうか?」や「問題ないでしょうか?」、「どちらが良いでしょうか?」などがあるが、私はこれらのフレーズが使われる質問や投げかけを『許可取りコミュニケーション』と名付けている。
そして、私はこの『許可取りコミュニケーション』があらゆる場面で濫用されすぎている、もっと減らすべきではとも考えている。というのも私が考えるに2つの重大なリスクがあるからだ。
私たちベイジの主力事業であるウェブ制作は、ベイジとクライアントとの情報の非対称性が大きい。当然、クライアントとしてはウェブの専門家であるベイジにプロジェクトを任せたい、リードして欲しいという心理がある。
そんな中で、「いかがでしょうか?」といったある種、相手に意思決定を委ねるような言い方、何らかの許諾を得るような言い方を使いすぎると、クライアントからすれば「いや、そっちで決めてほしいんだけどな」「もっとリードして欲しいんだけどな」などといった不満に繋がりかねない。
言っている当人としては、出戻りが生じないように進めたい、間違いのないように進めたい、相手の言質を取りたいなどのリスクヘッジの観点から思わず言ってしまうのだろう。しかし、自社がクライアントに対して提案型・コンサル型のサービスを提供している場合、そのリスクヘッジ重視の考え方は、マイナスに働きかねない。
じゃあ、なんて言えばいいの?は割りと単純で、よりフォーカスを当てた言い方にするのが良いのではないか。例えば「以上です。ここまでで何か気になった点や、説明の中でわかりにくかった点はありますか?」といったように。フォーカスが当たっていると、投げかけられた相手としても返しやすくなる。
クライアントの不満に繋がる以外にもリスクはある。それは御用聞きマインドが染み付いてしまうことだ。
言葉にはその人のスタンスやマインドが現れる。逆に自分が発している言葉によって、自分のスタンスやマインドが縛られてしまう側面もある。
言っている本人が意図していようがいまいが、「いかがでしょうか?」や「問題ないでしょうか?」には、相手にお伺いを立てるニュアンスが多分に含まれている。また、自分は決めたくないから誰かに決めて欲しいといったマインドも含まれているように思う。
そしてこれらのフレーズを使い続けると、スタンスもお伺いを立てることが中心になり、マインドも常に御用聞きで自分の意見のない人になってしまうリスクを孕んでいるのではないだろうか。
そうならないためにも、よりフォーカスを当てた言い方であったり、または自分の意見を明確に伝えた上で相手の意見を聞くという話し方の癖を身につけるのが良いのではないか。
私も数年前までは「いかがでしょうか?」の使い手だった。それも無意識の。しかしあるとき「相手に委ね過ぎじゃない?もっとリードするようなコミュニケーションをしたほうがいいよ」とアドバイスをもらい、初めて自分が御用聞きマインドに染まっていたことに気がついた。
それ以降はできるだけ許可取りフレーズを意識的に減らしていった。最初は、相手の意見を聞けていないような気もしていて内心ビビっていたが、特に問題は起きず、むしろ「ちゃんとリードしていて、安心して見ていられた」などとポジティブなフィードバックをもらえるようになった。
もし今、顧客をリードできていないとか、御用聞きになっているとかの課題を感じている人は、まず「いかがでしょうか?」を半分以下にすることをおすすめしたい。きっと案外、大丈夫なはずである。
以上、「いかがでしょうか?」についていろいろ自分なりの考えをつらつら書いたけれど、いかがでしょうか?