日々の業務を通じて、再認識することがある。それは、同じような情報であっても、掲載するか否か、掲載の優先順位をどうするかはコンテンツと背景により異なるということだ。
それを示す具体的なエピソードを二つ共有する。
最初のエピソードはあるサイト制作プロジェクトから得たものだ。
クライアントから、事例記事に公開日や更新日をつけるのはどうかとの提案があった。
背景には、新しく更新された記事は目立つし有用性を感じられるので、ユーザーが記事を見るきっかけになるのでは、との意図があった。
技術やノウハウに関する記事については、トレンドや一般的な理解が変化するに従って内容を更新し続ける必要があり、その更新の事実を明示することで記事の有用性を高めることができる。
しかし、今回の対象となった事例記事の場合、一度公開されると更新はほとんど行われず、また時間経過によるトレンドの変化による影響も少ない。
頻繁に更新が可能であれば豊富なリソースを使って成功を続けているとの印象を持たせることができるかもしれないが、高い認知度を持つクライアントの情報や、何度でも紹介したいと思う事例を”古い”と感じさせて敬遠されることは避けたいと考えたため、今回は更新日の表示は見送ることにした。
二つ目のエピソードはあるアプリ案件からのものだ。
ユーザー向け管理画面で「お知らせ」を表示する機能を最上部に配置することにしたが、なぜ上部に表示するのかとの質問があった。
その質問の背景には、BtoBサイトでは「お知らせ」は更新頻度が少ない場合に訪問者にとって優先度が低いと判断して画面下部に配置するパターンが多いためだ。
しかし、このプロジェクトで取り扱っていた「お知らせ」は、システムメンテナンスなど見逃すことが許されない重要な情報だったため、最上部に表示することにしたという背景があった。
同じ管理画面であっても、ほとんど更新情報がなければBtoBサイトのように下部に配置することも可能だし、逆にBtoBサイトでもセミナー情報などが頻繁に更新される場合は参加者を増やすために上部に表示することも有効かもしれない。
ECサイトなどでは、運用されている様子を見せて安心感を高めたいときや、メディアによる紹介が多い場合に上部に配置して、ブランド力をアピールすることもあるようだ。
運用状況や共有したい情報に合わせて検討すると、同じような情報でも表示位置はひとつのパターンには収まらない。
結論として、同じラベル、同じ情報でも、その掲載方法や優先順位は状況やコンテンツにより異なる。
ある程度のセオリーは存在するが、情報の密度や運用状況を考慮に入れ、都度適切な情報設計を行うことが重要であると再確認したできごとだった。
これからもパターンにとらわれず、真摯に取り組み続けていきたい。