ウェブ制作会社の経営者としての反省文

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代表取締役 枌谷 力

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ウェブ制作に携わるものとしての反省の一つは、長年成果への言及を避けてたことである。

同業者の中でこういう話をすると、「成果に言及して達成できなかったらどうするんですか?」と聞き返されることがある。しかし、世の制作会社やデザイン会社は、成果に言及する=成果を保証する、と思い込みすぎな気がしてる。

それなりにビジネス経験があるクライアントなら、外部の支援会社に依頼すればすぐ成果が出る、などという単純な構図では捉えていない。ただ、自分たちと同じ目線(成果を目指す目線)で議論がしたいし提案がほしい、とは思ってる。

ウェブサイトというのは直接効果だけでなく間接効果や相乗効果も発生させる複雑な施策である。だから、私たちが支援してすぐ分かりやすい成果が出たこともあるが、もちろん出なかったこともある。あるいは、しばらくしてからウェブサイトの成果の一部だと認識できたこともある。

しかし、目立った成果が出ないからといって、私たちの責任だと追求されたケースは、記憶する限りない。

なぜなら成果とは私たちの力だけではなく、元々の商材やブランドの力、あるいはマーケティング活動が積み重ねてきた資産、さらにはダイナミックに変化する様々な外部要因も影響するものだと、クライアントも分かっているからである。

ウェブサイトで目立った成果が出なかった時、なぜ出なかったかと一緒に考え、今後どうすればいいかを提案する。多くの顧客が求めてる期待ラインは、そこではないだろうか。

制作を担当する側の心理として、成果を保証できない・したくないという理由で、成果への言及を避けるのだろう。しかしこれはクライアントと同じ目線に立つことを避けることになる、という意味で問題だと思ってる。

経営やビジネスにおいて、数字はその中心に位置するほど重要な概念であり、ここへの言及を避けるというのは、経営やビジネスの核心に触れることを避けることになる。

しばしば、マーケティングの仕事とデザインの仕事の違いとして、デザインは数字では測れないことを扱う、といった説明を聞くことがある。確かに解釈の一つとして理解できる部分もあるが、「数字で測れない」は「数字に言及しない」とイコールではない。

例えば「ブランディングは数字では測れない」という話。確かにブランディングの効果を定量的に計測し、証明するのは難しい。特に中小企業においては色々な意味で障壁が大きい。しかし、効果を直接証明する直接指標の設定は難しくても、間接指標、相関指標、参考指標の設定は可能なはずである。

取り組もうとしているブランディングの主目的が顧客獲得や売上/利益向上ではなく、組織に作用するインターナルなものであったとしても、離職率、社員満足度、エンゲージメント、コミュニケーションコスト、生産性、1社員あたりの利益など、何か影響を与える指標化できる数字はあるはずである。

それが企業活動の一環であり、お金という数字を持ち出して取り組むのであれば、企業は何かの数字との等価交換以上のことを期待している。そこに言及できると、パートナー関係になることができる。

実際には、オーナーのトップダウンで数字はいいからとにかく自分が定性的にいいと思うものを追求する!という類のプロジェクトもあるだろう。なので依頼者の意思次第では数字化や成果の可視化が絶対必要なわけではないが、ビジネスにおいて何が基本かと言えば、「投資に見合った明確な成果を求めている」だろう。

成果を保証するわけではないが、こんな数字に影響を与えようとしてる。直接ではなくも、間接的にこんな数字が動く可能性があると言及する。

もちろん、全てが数字で証明できるわけではない。だから、定性も交えて数字に影響を与える可能性を、ロジックで説明する。それが当たる/当たらないではなく、そういう視点で話す。だから、「この会社とビジネスがしたい」「この人にビジネスの悩みを相談したい」と思ってもらえ、結果的に価値が高い仕事を任せてもらえるようになる。

この経験の積み重ねが、私たちの市場価値を高めるのだと、信じている。「何を今さら当たり前のことを」と他業界の人たちには笑われそうだが、かつての私たちは、数字に向き合わないのは業界特性で仕方がないことだと諦め、緩い考えでビジネスを続けていたのは否めない。そしてその名残が、今でも組織の随所で残っていることは否めない。業界全体として、数字の成果に言及しないから、ビジネス的なイニシアチブを握れずに低利益ビジネスになっていった側面も、否めない。そんな業界慣習を私が甘んじて受け入れていたことも、否めない。

気を引き締め直し、数字にちゃんと向き合える会社を作りたい。

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