ベイジではウェブ制作に入る前に、マーケティング情報や事業内容を整理してウェブサイトの立ち位置や訴求ポイントを定める戦略フェーズを実施している。主にコンサルタントが実施するが、制作にむけたポイントを共有するためにクリエイター陣も顧客とのミーティングに同席することがある。
そこでクリエイター陣はキャッチコピーやビジュアルにつながるような顧客の特徴を把握するのだが、その前提として「話を理解する」ことが重要となる。
私自身も、ディレクターとして他のコンサルタントが実施するミーティングに参加してきた。サイト制作初心者である顧客に向けてわかりやすく整理されているため、マーケティング知識がない状態で臨んでも内容を理解できる。
しかしクリエイターからは時折、顧客とのディスカッションについていけないという声が挙がることがある。
ディスカッションについていくには、専門用語や固有名詞の把握が重要だと感じている。
会話が理解できない場合、業界の専門知識やマーケティング知識の強化が必要という話題があがることが多い。
しかし実際には知識不足よりも「何(名詞)」について話しているかつかめていない事象の方が多そうな感触だ。
コンサルタントと顧客は製品名や業界の専門用語などを使って会話を進めるため、単語がわからないと話題が変化したときに顧客が業界や事業、製品、計画のどのレイヤーについて話しているかが即座に判断できない。すると議論されているテーマも意見も理解できず、置いてけぼりになって難易度が高く感じてしまうのではないかと思う。
私自身もあるプロジェクトの初回ミーティングで専門用語に苦労した経験がある。しかし製品名や業界で一般的に使用される用語を確認して臨んだ次のミーティングでは、話題の変化にも柔軟に対応でき、顧客同士で確認している会話も理解できるようになった。
この間に私のマーケティングに関する知識レベルはほぼ変わっていないので、顧客が使用する単語を把握することが、コミュニケーションのしやすさに違いを生んだのではないかと思う。
コンサルタントも提案をつくるためにサイトや資料を読み込み、一通りの製品名や業界用語を把握している。顧客の話題に合わせて適切な言葉遣いを選ぶことができ、顧客が何について話しているかを即座に把握することができるので、顧客とのコミュニケーションがスムーズになり、より深い情報の提供を促進することが可能になっている。
顧客理解の第一歩は情報収集だと思うが、そのためには業界用語や顧客特有の固有名詞を判別できるかという点が重要だと感じる。
クリエイター陣も何について会話しているかを理解できれば、専門知識がなくても顧客の特長を見つけることもできるし、コンテンツやデザインのアイデアが生まれてくるはずだ。ひいては設計やデザインのフェーズで顧客からのコメントに対する理解度にもつながるようにも思う。
ミーティングの直前に相手のサイトを見る、コンサルタントが作った資料に一通り目を通す、といった簡単な作業で固有名詞や専門用語を一瞬目にとめておく程度でも、話題は把握しやすくなる。
ベイジでは最近、必ず1個質問をするつもりでミーティングに臨むというアイデアが共有されたが、そのためには必然的に事前に資料を確認するアクションも喚起されるので、話を理解する準備という観点でも有効だと感じる。
難しい知識の前に、まずは話を理解するための足がかりとして、顧客とのコミュニケーションを円滑にするために共通言語を持つ努力が重要なのだと思う。