これまでディレクターとして、幾度となくクリエイターに仕事を依頼してきた。そして出来上がった成果物のクオリティには高いものも低いものもあった。クリエイターによってスキルの習熟度も違えば、経験年数も違うし、得意領域も異なるため、それはある種「当たり前」だろう。
ただ、クオリティが低いものが上がってきた場合、それは果たしてクリエイターだけの問題なのだろうか。この問題について先日、ディレクターの経歴を持つお客様と議論する機会があったので、この場を借りてお伝えしたい。
「クリエイターがクオリティの高い成果物を作り上げるための情報をディレクターがクオリティ高くインプットさせることができたか」
彼が仕事の依頼をするときの姿勢・考え方の基本はここにある。彼自身、ディレクター時代にクリエイターの成果物の品質管理に悩まされたという。
情報だけ与えてクリエイター任せにしていないか。情報の優先度を明確に伝えず、混乱や迷いを与えてしまっていないか。成果物を一緒に作り上げることがディレクターの役目なのに、その役目を放棄したコミュニケーションをしていないか。
この考え方や姿勢をもとに、クリエイターとのコミュニケーションを洗練化・設計していった結果、成果物のクオリティは徐々に向上していったそうだ。
この話を聞いて、自身のディレクターとしての姿勢をもっと見直さないとならないなと反省した。なんとなく依頼をしたり、イメージが近い参考デザインだけを渡したりした結果、自分が納得できる成果物が上がってこず、改めて具体的な情報共有してやり直しをしてもらったケースもある。やり直しをさせるならはじめから丁寧に依頼しろよ、という話だ。
先日も、とある案件でデザイナーに仕事の依頼した際に、「いつ」「どんな仕事が」「どれくらいのボリューム」で発生するかという情報を整理・精緻化せずに渡した結果、その確認のために無駄なコミュニケーションが発生してしまう一幕があった。
依頼時の一手間を惜しむと、結果的に仕事を依頼する相手の時間を奪うだけではなく、思った成果物が上がってこない生産性の低い仕事をする人間になってしまう。
より丁寧に具体化・精緻化を意識し、相手にとってわかりやすいコミュニケーションをする姿勢とその取組みが、回り回って自分の時間の効率化につながり、生産性を高くする。
成果物のクオリティをクリエイターの問題にするのではなく、自分に矢印を向けて、「自分がクオリティアップのためにできることは何なのか?」を考えながら、これからの仕事に取り組んでいきたい。