諸行無常のUI改善

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エンジニア 天野 謙作

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事業としてUXコンサルティングをやっていると、UI/UXが重視されるようになった現代ではほとんど見ない、Windows98のデフォルトUIを使ったかのような画面のシステムに出くわすことが時折ある。

私は仕事柄これを改善していかなければならないので、そのユーザビリティの悪さを感じつつも理解のためにシステムを触る。それと同時に「このシステムはまだ生きて、使われているのか……!」と、さながら古代の遺物や生きた化石を発見したときの考古学者のような、得も言われぬ感動もまた覚えるのだ。

弊社に改善依頼が来ることからわかるように、現代ではこのような画面やシステムは一般的に(私もそう思うのだが)「古臭い=使いにくい」のレッテルを貼られがちだ。

私もここ最近まで、このような「『古臭いデザイン』のシステムを駆逐したい」と考えていたのだが、よくよく考えてみるとこのようなシステムも、開発された当時は流行に乗った十分先進的なものだったかもしれない。また、そのシステムはきっと誰かの業務上の「負」を解消するために作られたはずで、その点で画期的・革命的でもあったことだろう。

このような評価に落ち着いてしまうのは、UIデザインの多様化や洗練が進み、多くの議論が尽くされつつある現代だからこそだとも思う。裏を返せば社会がそれだけ進歩したとも言えるので、そこは我々のようなデジタルプロダクトを作る側の人間がムンと胸を張り、誇っても良いことなのではないだろうか。

そう考えると、先に述べたような画面を見たときに「ここがイケてないよね」と悪いところに目を向けるのではなく、まず最初にそのシステムや画面に対して「これまでよく頑張ったねぇ」と、おばあちゃんのような労いの気持ちを持ったうえで、改善に臨むのが健全なのかもしれない。

また、必ずしも「古臭い=使いにくい」とも限らない。もしかすると、見た目が現代にそぐわないだけでシステムとしては洗練されている、ということも可能性としてはあり得る。

この「古臭い=使いにくい」というレッテルを貼られる流れが加速した原因の一つに、現代までにブラウザ技術のほかJavaScript、CSSといった部分の技術革新や、iPhoneの登場によりリッチなユーザー体験が一般にも浸透したことが挙げられると思う。要するにユーザーのデジタルを見る目が肥えたのだ。

こうした技術革新が起きたり、人々の認識が変わっていくことは世の常で、これからも少しずつそれらは変化していくことだろう。今我々が「先進的、良い」としているUIやデザイン全般も、時が経てば「古臭い」と思われる日がきっとくるに違いない。

下北沢の雑踏に立つオフィスに吹く風の中に、そんな諸行無常の響きを感じながら、私は今日も果てなきウェブの世界を開拓していくのである。

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