エアロスミスのアルバムが売れなくなったのは市場変化のせいなのか?

先日、こんな記事がSNSでシェアされてきました。

エアロスミス「もうアルバムを作る意味がない」

確かに、ダウンロードやサブスクリプションが主流になると、アルバムという販売フォーマットは見直さないといけないかもしれません。これからの時代にアルバムをリリースする必要はあるのか、という点については、大いに議論の余地があると、私も思います。

ただ、私がこの記事で気になったのは、別のことでした。

ジョーイ・クレイマー(エアロスミスのドラム)はこの記事の中で、前作『Music From Another Dimension! (以下、Music From~)』の販売不振から、そのような考えに至ったと語っています。またSNS上では「あのエアロスミスでさえ、アルバムが売れない時代なのか」といった嘆き、あるいは市場変化に対するエアロスミスの判断の先見性を評価するものが多かったように思います。

しかし、私は、ジョーイ・クレイマーのこの発言に違和感を覚えました。というのも、彼らの作品が売れなかったのは、市場変化以前に、コンテンツに魅力がなかったから、つまり、単純に曲がつまらなかったからではないのか、と思ったためです。このニュース記事の内容は、いささか都合よく解釈されているような気もしました。

また、企業のWebサイトをマーケティング軸で考えることを日常業務としている私としては、セールスの不振が、『Music From~』の質そのものにあるのであれば、それを市場変化の話にすり替えてはいけないのでは、と思いました。そしてこれは、ブランド力の高い企業が陥りやすい発想と同じであるとも思いました。

『Music From~』は本当に売れなかったのか?

『Music From~』の売上げについて、RIAA(アメリカ音楽協会)が認定するゴールド(50万枚)/プラチナ(100万枚)/ダイヤモンド(1000万枚)の評価から、その売上げを判断してみました。また、彼らが最初の停滞期から劇的な復活を遂げた87年の『Permaent Vacation』以降のオリジナルアルバムでの比較も行ってみました。

  • 1987年:Permanent Vacation=プラチナ×5(500万枚)
  • 1989年:Pump=プラチナ×7(700万枚)
  • 1993年:Get a Grip=プラチナ×7(700万枚)
  • 1997年:Nine Lives=プラチナ×2(200万枚)
  • 2001年:Just Push Play=プラチナ(100万枚)
  • 2012年:Music From Another Dimension!=なし(50万枚以下)

これを見ると、プラチナディスクが当たり前のエアロスミスにとって、確かに『Music From~』はかなり売れていません。2012年7月に発売し、2年経過してなお50万枚にも至らないのですから、これは確かに、彼らクラスのアーティストにとっては、商業的に大きな失敗と言えるでしょう。

さらにいえば、米国のアーティストの場合、マーケットは全世界に及びます。しかし、米国以外で認定を受けているのは、カナダのゴールド(4万枚)のみ。これもやはり以前では考えられないことで、世界的にまったく売れなかったといえます。

エアロスミスの望む成功の基準がどこにあるかは、このインタビューからはうかがえません。確かに、『Get A Grip』の頃のように、米国内だけで700万枚も売るのは無理な時代かもしれません。近年、それを超えるようなヒットを飛ばしたアルバムは、アデルの『21』(2011年発売:1000万枚)だけです。例えば、ロングヒットを飛ばしているテイラー・スウィフトの『Red』で400万枚、2013年に最も売れたジャスティン・ティンバーレイクの『The 20/20 Experience』で250万枚。これらの作品は今後もう少し枚数を積み上げていくでしょうが、エアロスミスが『Punp』『Get A Grip』で記録した700万枚に届くにはかなり遠い気がします。やはり、アルバムは売れにくい状況になっているのでしょう。

ただし、それでも全盛期の日本並みに売れる環境がアメリカ国内にはあるともいえます。さらに、米国で成功した作品は世界中でも売れると考えると、撤退を考えるほど、アルバム制作が収益の上がらないビジネスになっているとは思えません。

おそらくですが、ジョーイ・クレイマーおよびエアロスミスのメンバーもそんなことは分かっており、700万枚も売れないから「アルバムはもう作らない」と言っているわけではないのでしょう。圧倒的にアルバムの売れ行きが悪く、彼らが認めたくないジャスティン・ビーバーやニッキー・ミナージュにもセールス的に大きく水をあけられている状況に、我慢ならないのだと思います。

しかし、本当に彼らは完成度が高い良い作品をリリースしたにもかかわらず、時代が変わった故に、売れなくなったのでしょうか?

『Music From~』は本当に良いアルバムだったのか?

ジョーイ・クレイマーは『Music From~』が良いアルバムだったのに売れなかった、と主張しています。

実は、私自身は、エアロスミスの熱心なファンではありません。ライブには一度も行ったことがありません。ただ、オリジナルアルバムはほとんど所有しています(80年代以降のものはすべて)。つまり、熱心なファンでないがゆえに、できるだけ思い入れなく客観的に評価できるのではないかな、と思っています。

その私から見て、『Music From~』は、彼らにしては完成度の低い作品でした。表面的にはエアロスミスらしいサウンドに仕上げられてはいますが、フックも緊張感もない楽曲ばかりで、第二の黄金期を作り上げた『Pump』『Get A Grip』には明らかに及ばない作品でした。

彼らの楽曲の質の低下は『Nine Lives』に始まっており、やはりセールスが振るわなかった『Just Push Play』で決定的になったと私は思っています。天才といえども永久にその才能を発揮することはできません。エアロスミスのコンポーザーとしての能力も、90年代前半をピークに下降状態なのではないかと思います。

『Music From~』がそもそもコンテンツの魅力に欠けた作品なのでは、という疑念は、作品に関する周辺情報からも生まれてきます。例えば、『Music From~』の先行シングル” Legendary Child”は、『Get A Grip』のアウトテイクであるという事実です。つまり、『Get A Grip』では作品に収録できるレベルにはなかった曲が、アルバムの売上げを左右するファーストシングルに選ばれているということです。

アウトテイクだから駄作とは言い切れません。しかし、『Get A Grip』において、アルバムに収録するレベルに達していない曲が先行シングルということは、『Music From~』に収録された曲は、その程度のクオリティである可能性も否定できません。

しかし、音楽の客観評価は難しいです。私のこの辛辣な意見も「それは所詮お前の好みだろう」と言われてしまう可能性があります。なので、もう少し客観的な情報を洗ってみました。

『Music From~』がターゲットの支持を受けていない可能性

『Music From~』のコンセプトは、原点回帰でした。70年代の第一期黄金時代を支えた名プロデューサーのジャック・ダグラスと再びタッグを組み、80年代~90年代の第二期黄金時代に多くのヒット曲を生み出したデスモンド・チャイルド、ジム・ヴァランス、ダイアン・ウォーレンといった外部ライターを引き続き迎え入れた、過去の成功法則に乗っ取った鉄壁の布陣で制作された作品です。

そのメインターゲットは明らかに、過去のエアロスミスのファン層でした。

だとすると、例え商業的に成功しなかったとしても、『Music From~』が本当に「良い作品」であるならば、少なくともメインターゲットであるファンの間では評価が高く、収録曲は今もよく聴かれているはずです。

というわけで、まずはAmazon USAのレビューを見てみました。

音楽に関するAmazonのレビューは、ファンが書き込むことが多いです。そのため、ファン意識が反映され、比較的高い評価になりがちです。それを理解したうえで、『Parmanent Vacation』以降のアルバムの評価を比較してみました。(複数バージョンがある場合、レビュー数が多い方を採用しています)

  • 1987年:Permanent Vacation=★×4.5(レビュー数:66/低評価率:9.1%)
  • 1989年:Pump=★×4.5(レビュー数:68/低評価率:8.8%)
  • 1993年:Get a Grip=★×4(レビュー数:95/低評価率:12.6%)
  • 1997年:Nine Lives=★×4.5(レビュー数:116/低評価率:7.7%)
  • 2001年:Just Push Play=★×4(レビュー数:305/低評価率:18.9%)
  • 2012年:Music From Another Dimension!=★×4(レビュー数:319/低評価率:19.4%)

これを見ると、『Music From~』の評価は他の作品と大差ないように見えます。しかし、★×2以下の採点率(低評価率)を見てみると、特に『Just Push Play』と『Music From~』には低い評価が多く含まれることが分かります。つまり、『Just Push Play』と『Music From~』は、ファンの間でも賛否両論の出来だったことがうかがえます。

次に、『Music From~』の収録曲が、どのくらい聴かれているかを調べてみました。Last.FMでは、直近の1週間と6か月以内によく聴かれた曲をランキングされています。つまり、現時点でよく聴かれている、人気のある曲を確認することができます。

このランキング(2014年5月1日時点/直近6か月)を見ると、『Music From~』の曲は、34位に” What Could Have Been Love”が登場。その次に”Legendary Child”が55位、その次に”Oh Yeah”が82位に登場します。

残念ながら、『Music From~』の収録曲は総じて人気が低く、ファンが好むような曲が含まれていないといえます。『Music From~』が、ファンから評価を受けていないことを裏付けています。

先ほども述べたように、音楽というコンテンツ、曲の良し悪しを客観評価するのは非常に難しいです。ただ、上記のデータを見る限り、『Music From~』は、肝心のメインターゲットに愛されている形跡がありません。方向性や市場変化以前に、純粋に作品として完成度が低かった、コンテンツ力が不足した作品だったということが、ここからも推測されます。

『Music From~』はマーケティング的には失敗していなかった

『Music From~』の失敗がコンテンツとしての完成度にあるのでは、と思える理由は他にもあります。それはチャートアクションです。Billboardチャートでのピーク時の順位とチャートの200位以内に在位した期間を、『Parmanent Vacation』以降の作品で比べてみました。

  • 1987年:Permanent Vacation=11位(68週)
  • 1989年:Pump=5位(110週)
  • 1993年:Get a Grip=1位(92週)
  • 1997年:Nine Lives=1位(77週)
  • 2001年:Just Push Play=2位(27週)
  • 2012年:Music From Another Dimension!=5位(9週)

『Music From~』は、ピーク時の順位自体は悪くはありません。700万枚売れた『Pump』と同じ最高位であり、500万枚売れた『Permanent Vacation』を凌駕する順位です。問題は、チャート在位期間です。初登場で最高順位の5位を記録した後、わずか9週でチャートから姿を消しています。同じく最高位5位を記録した『Pump』が2年以上もチャートにいたのとは対照的です。これでは確かに、売上げは伸びないでしょう。

この急速な下降はなぜなのでしょうか。アルバムリリース後のプロモーションのまずさというのも、もちろん考えられます。しかし、やはり、初動のチャートアクションに見合った良質なコンテンツがアルバムに備わっていなかったから、というのが理由として一番大きいのではないでしょうか。

5位というのは、市場にアピールするには十分な順位です。多くの人が、エアロスミスの新作がリリースされることを知り、その情報や音楽にアクセスしたことが想像できます。ロックアルバムとしてリスナーの耳に残る良い作品であったなら、そこから長期にわたって売り上げを伸ばすこともできたはずです。

しかし、質が伴っていなかったために、YoutubeやMTVでミュージックビデオを見ても買う気にならなかった。買った人も、友人やネット上でリコメンドせずに広がらなかった。あるいはリコメントされたけど、誰もそれに乗ってこなかった。結果、初動の良好なリアクションに反して、急降下していったのではないでしょうか。

「昔かたぎのバンド」でも、良い作品を作れば売れる

十分に完成度の高い作品であっても、チャートアクションも伸びないことはあるでしょう。例えば、旧来のファンを含めて、エアロスミスのようなクラシックなスタイルのロックを聴く人がほとんどいなくなったような状況であったなら、そういったことは起こり得るかもしれません。

エアロスミスのギタリスト、ブラッド・ウィットフィールドも、この記事の中で、自らが「昔かたぎ」なスタイルであることにセールス不振の要因がある、と発言しています。しかし、これに関しても、私は少々疑問に感じます。なぜなら、トレンドとは言えないスタイルで、それなりに成功しているロックバンドがいるからです。

例えば、ニッケルバックが2011年末にリリースした『Here And Now』は、EDM全盛の今のトレンドとは大きく離れた90年代スタイルのハードロックです。しかし、この作品は、米国内でプラチナム(100万枚)を記録していいます。(最高位2位、42週チャート入り)

2012年にリリースされたブルース・スプリングスティーンの『Wrecking ball』は、チャートで1位を獲得、26週チャート入りしたものの、現時点までアメリカではゴールド認定されていません。そういう意味では、エアロスミスの『Music From~』と同じ状況です。しかし、『Music From~』とは異なり、世界13か国でゴールドやプラチナ認定されており、世界規模でセールスを上げていることがうかがえます。

もちろん、音楽性もファン層も異なるアーティスト同士を、セールスやチャートアクションだけで単純比較はできません。しかし、昔かたぎのスタイルでありながら、きちんとセールスを上げているアーティストは確実に存在します。

やはり、エアロスミスがそれを実現できなかった最大の要因は、市場環境や彼らのスタイルといった回りくどい話ではなく、過去の成功体験と成功法則に安易に依存し、つまらない曲しか入っていないアルバムを作ってしまった、ただそのことだけなのではないか、と思うのです。

もちろん何をもって「曲の完成度が高い」とするかは、議論の余地もあるでしょう。典型的なことが、完成度の高さやセールスにつながるわけでもありません。しかし、エアロスミスのようなオーセンティックなハードロックに関していえば、最低限求められるメロディやリフのキャッチーさ、コンパクトでわかりやすい曲展開などの、完成度の高さを追及するうえで押さえるべきポイントがあるはずです。

料理に例えるなら、スタイルや時代はどうあれ、最低限「美味い」と思えるものにする、という部分です。そしてこれらを満たさないと、「完成度が低い作品」となり、「何をやってもそもそも売れない作品」になるのではないでしょうか。

余談になりますが、エアロスミスの『Get A Grip』がリリースされた1993年はグランジ全盛期で、彼らのような大掛かりなハードロックはすでにトレンドではありませんでした。

であるにも関わらず、圧倒的な作品の完成度でその状況を覆し、巨大なセールスを生み出しました。そんな彼らが、現在の状況に対して「アルバムなんて売れないし、もう作るのやめようかな・・・」などと発言してしまうのは、なんとも残念な話です。

数字を調べて、問題の原因を絞り込む大切さ

冒頭で少しお話した通り、エアロスミスのメンバーのこの発想は、大きな成功体験を持ったブランド力のある企業が陥りやすい発想と同じだと私は思いました。

過去に成功体験がある、確固たるブランドが確立している企業は、売上げが伸び悩んだとき、問題の本質を外部要因に求めがちです。そう判断すると、広告やPR、新しいマーケティング手法などを取り入れて挽回を図とうとします。

しかし、それが絶対的か、相対的かはともかく、「コンテンツの質」という問題があるなら、小手先のマーケティングでなんとかしようしても、本質的な問題は解決されません。

インターネットやデジタル技術の進歩によって、消費行動も、消費者とのコミュニケーション方法も、大きく変わりました。商品力や技術力だけではダメだ、良いものを作っているだけでは売れない、とよく言われます。

しかし、だからといって、商品力が不要というわけではありません。顧客を喜ばせる良い商品を提供しなければ売れない、というのは今の時代においても基本中の基本です。ラーメン屋さんがいかに巧みに宣伝を行い、流行のスタイルを取れ入れても、そもそもラーメンがマズければやがて客足は途絶えてしまうのと、同じ原理です。

一方で、市場環境が急速に変わると、売上げ低迷の理由が、自社商品の質の問題なのか、市場環境の変化のせいなのか、分からなくなりやすいでしょう。

こういうときこそ、思い込みではなく、仮説から数字を追って原因追求することが大切です。

ここで行った『Music From~』に関する分析は、1時間ほどで行った、非常に簡素なものです。断定できるほどの精緻さはありませんが、それでも、問題の本質は市場変化ではなくコンテンツ力なのでは、という仮説を裏付けできるデータが色々と集まってきます。

その商品は、本当に良い商品なのか。実は競争力のない商品を売り出してはいなかったか。根本的な部分に疑問を持ち、仮説を立て、データを検証することは、いつの時代にも当たり前のように必要なことなのです。

にも関わらず、作品の出来には疑問を持たず、売上げ低迷の原因を市場環境のせいにし、そのことを感覚とムードで判断し、撤退をほのめかすエアロスミスのメンバーは、自社の問題には目を向けず、市場環境のせいにしてしまう、かつて栄華を誇ったブランド企業の経営者の姿と、見事にオーバーラップしてきます。

エアロスミスのような世界的に名だたるトップブランドであっても、ブランド力と知名度にセールスが追い付かないといった状況に陥ってしまうのだとしたら、それよりももっと小規模なブランドは、仮説発想でデータを分析して問題の構造を正しく把握する、きちんと質の高い商品を提供する、といった基本中の基本は絶対に守らないといけないな、と思います。

さらには、今回はアルバムの質の低下によるセールス不振という単純な話から「もうアルバム作るのやめようかな・・・」とぼやいただけのインタビューを、エアロスミスは常にいい作品をリリースしていること前提で、まるで市場変化でそうなったかのように読める情報を発信してしまうメディアに対しても、改めて注意して接しないといけないな、と思いました。

エアロスミスのアルバムを売れるようにする方法

この記事においても、エアロスミスの問題点ばかりをあげつらって話を終わらせてしまうのはちょっと個人的に抵抗があります。

そこで最後に、もし私がエアロスミスの戦略コンサルタントであったならどういう改善策を打ち出すか、というのをまとめてみました。音楽ビジネスの構造的な部分や、契約関連の事情などはよく分かっていないので、荒唐無稽な妄言になってるかもしれませんが、一応書いておこうと思います。

  • まず、アルバムは出す。市場は急速に変化しているが、あと3~5年は良質なアルバムをリリースするメリットは大きいと判断されるため。
  • 好調と伝えられるライブの動員数をさらに引き出すのは、良質なアルバムをリリースすること。単発的なシングルリリースでは、動員数の飛躍的な向上は望めない。
  • グローバル市場では、デジタル配信やサブスクリプションが行き届くにはまだ時間がかかる。そういう意味でも、アルバムはまだ必要。
  • ライブは労働集客型のビジネスだが、アルバムはストック型ビジネス。良質な作品であれば、時間と場所を問わず自動的に売れていく。この2本を収益の柱にする意味はまだ大きい。
  • アルバムのメインターゲットは今の10代~20代。新しいファンを囲い込めれば、ライブ動員数も上がり、バックカタログも売れる。旧来のファンを相手にしても、今以上の売上げ拡大は望めない。
  • 良い曲を収録するだけで今以上に売れるようになるだろうが、より売るために、市場変化への対応もやはり行う。
  • まず、アルバムは10曲入りにする。近年のエアロスミスのアルバムは15曲くらい入っており、ボリュームが大きすぎて聴きやすさを損ねている。
  • 最近のエアロスミスの曲は5分を超える冗長なのも多い。すべて4分以内にする。
  • プロデューサーは、過去2年以内に米国内で100万枚以上売ったアルバムを手掛けた人物を起用。ロック畑の古いプロデューサーではなく、ポップ、ヒップホップ、ダンス畑の新進気鋭のプロデューサーから抜擢。
  • 10曲すべてをfeat.○○として、ゲストミュージシャンを招く。これは近年のEDM系のアーティストと同じ手法。
  • ゲストの顔ぶれは、まずは若者に人気のある女性シンガーを投入。デミ・ロバート、マイリー・サイラス、ファーギー、リアーナ、ピンク、ケリー・クラークソンなど、ロック系の音と相性のいいシンガー、エアロスミスをリスペクトしているシンガーを多数参加させる。
  • エアロスミスの曲はヒップホップとも相性がいいので、JAY-Zやカニエ・ウエストといったヒットメイカーもゲストに招き、”21世紀版Walk This Way”をコンセプトとする楽曲を制作する。
  • 現在大人気のEDM系からもゲストを迎えてもいいかも。元々エモ系のロックシンガーで、音がバキバキしてロック的なスクリレックスあたりが有力候補。
  • そのほか、ブルーノ・マーズ、レッチリ、ニッケルバックなど、とにかく相性が良さそうな人気者を、エアロスミスの威光をかざして節操なく集めてくる。
  • 古いファンへの話題作りも欠かさない。2~3曲は古いアーティストもゲストに迎える。70年代をともに彩ったキッスのポール・スタンレーやジーン・シモンズや、メンバーと共演経験のあるRUN D.M.C.の元メンバー、あるいはスティーブン・タイラーと共演経験のあるサンタナなど。犬猿の仲と伝えられるアクセル・ローズとスラッシュをアルバム上で共演させても話題が取れそう。
  • エアロスミスはデビュー当時、ローリングストーンズのコピーバンドと揶揄されたことがあったが、それを逆手に取り、ミック・ジャガーとの共演も画策する。曲名は”Two Big Mouths”とかがいいかも。
  • すべての楽曲をfeat.○○にするのは、とにかくバズを起こしてリーチを広げるため。SNSが普及している現代では、話題作りはもっとも費用対効果が高い販促手段。曲作りとともに、ここにはとにかく力を入れる。
  • 今のエアロスミス単体には作曲能力はあまりないので、すべての曲を、ゲストアーティストか外部ライターとの共作とする。
  • 外部ライターも、デスモンド・チャイルドやダイアン・ウォーレンといった、昔取った杵柄的な人ではなく、若いライター陣を揃える。
  • プロデューサー、ソングライターもすべて今の時代に合わせた若い才能を使うが、「ド派手でゴージャスな、スタジアム型のロックロール」というエアロスミスの基本コンセプトからは絶対にブラさない。音作りも、基本的には王道のエアロスミスサウンドにまとめ上げる。
  • 楽曲は、練りに練り上げる。300曲以上候補を集めてアイデアを絞り込む。特に一聴して印象に残るキャッチーなリフとメロディ作りには細心の注意を払う。
  • 旧来の保守的なファンからの強いバッシングは覚悟し、新しいファンと変化を受け入れる一部の古いファンからの大きなリターンを狙う。
  • 目標売上は、米国内で200万枚。世界で600万枚。現在の市場環境でもこのくらいはいけるのでは。

と、このように一方的に提案するのは簡単ですが、実現するのは相当難しそうですね・・・。音楽のアルバムは、リーン開発的にサービスを向上させるといったことができないプロダクトなので、どうしてもギャンブルするところが出てしまいます。

ただ、エアロスミスのように知名度もありブランド力の高いアーティストには、今は売りこみやすい環境であるともいえます。なぜなら、本当に良い作品を作れば、ネットがその話題性や良さを後押ししてくれるためです。

エアロスミスならまだやれるはずです。是非、「さすがエアロスミス」といえる、有無を言わさない強力なアルバムを引っ提げて、再びシーンの最前線に戻ってきてほしいものです。

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