採用サイトの撮影ディレクションで気をつけたいポイント

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デザイナー 池田 彩華

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最近、撮影を含むwebサイト制作の案件を担当することが多い。飲食店のお料理からスタジオのプロダクトカットなどもあったが、今回は、中途向けの採用サイトを担当した。実際にやってみて、特有の撮影ポイントや学びがあったので、まとめておきます。

求職者にとって写真も有益な情報

撮影の前に、「良くない採用サイトの条件」をクライアントにヒアリングしたら、以下のようなコメントがあった。

  • 綺麗ごとしかかかれていない
  • 入社してからギャップがある
  • 見た目だけがかっこいい

求職者は、企業都合のキラキラとした演出よりも、現場の臨場感やリアルさを求めている。なので、求職者のニーズに合うコンテンツの用意や行動に合わせたwebサイトの設計が必要で、さらに、写真も有料素材を使うより、現場の雰囲気が伝わる写真の方が役立つと感じた。

撮影当日は、香盤表を元に進行を進めた。しかし、現場でディレクションをしすぎるとリアル感が欠けてしまうこともある。

例えば、モデルのポージングや表情は、かっちり決めずに、表情を引き出すコミュニケーションを取った方がいいことも。デスクシーンは、派手な私物やケーブル、季節感を感じるアイテムは片付けてもいいが、書類やペンなどまで片付けすぎるとリアル感がなくなるなど。
採用サイトの写真は、ドキュメンタリーよりの絵に仕上げる印象があった。

ありきたりなシチュエーション被りは避ける

先輩インタビューのコンテンツがあり、複数人の仕事風景を撮影した。 求職者は、入社意欲が高まると全ページの記事を見るだろう。そんなときに、同じシチュエーションのカットを見せる必要はないと思う。
初期の計画では、オフィスのデスクワークのシーンもあり、パソコンの操作や電話対応のイメージを入れていた。しかし、カメラマンから「そういうカットは、皆さん撮りたがるけど、どの会社でも撮れますよ。このクライアントでしか撮れない写真は他にない?」とコメントがあった。

その会社らしさについて改めて考えたら、別のシチュエーションが出てきた。もちろん、デスクワークの仕事もあるので撮影したが、上記以外にも

  • 資料が入っている棚を開けようとしているシーン
  • デスク越しにいる社員と話しているシーン
  • 裏にある機材を取り出しているシーン

などを撮影した。これがいいということではないが、一口にデスクワークといっても、切り口を変えるとバリエーションは増える。
もし、引き出しが少ないのであれば、他社の採用サイトの写真や雑誌を見るなどすれば、こういうシーンがいいかもとアイデアは出てくるだろう。毎週撮影の仕事があるわけでもないので、日々の生活でも情報をストックしていきたい。

予算に応じたモデルのアサインと工夫

採用サイトに、毎回同じ人物が出てくると「他に社員さんいないのかな?」と感じる。理想は、なるべく多くの社員さんを入れて撮影したいが、撮影には予算があったり、皆さん通常のお仕事があるので、すべての条件が揃うとは限らない。
もし、職場の勤務地が複数あったり、シフト勤務制で稼働時間が異なれば、担当者を通して、事前の調整が必要になる。計画を立てる上では、最小人数のモデルで、似ている写真が連続しないように組むことが大事だと思った。
例えば、同じページに複数写真がある場合、各カットごとに人物の顔がどのくらいのアップで写るのか決める。もし、大きく顔が写る人は、別カットでは、空間演出シーンやシルエット的な登場をさせる。すると、印象が変わってくるだろう。

また、モデル情報は、事前に担当者様の協力を得て、お名前や顔写真などをいただいた。おかげで、どのカットに誰をアサインさせるのか、複数人入るシーンの組み合わせ、服装の指定など準備が進めやすかった。
採用サイトのように複数人関係者がいる場合は、クライアントの協力が必要不可欠だと改めて実感した。(香盤表のテンプレートは、来年ベイジ公式ブログにて配布予定です!)

コンセプトに合わせたヘアメイク

初めてヘアメイクさんと一緒にお仕事をさせていただいた。過去の案件でもモデルさんが入ることもあったが、自分で髪の毛や服装のシワなど見た目を調整することがあった。しかし、プロが入ると、よりその企業の見せたいイメージを訴求ができるのかなと感じた。
例えば、今回は、空間が商材のクライアント様で、高級感溢れる職場での撮影があった。しかし、社員さん自体はアットホームな人が多かったので、そのキャラクターを活かして、写真では、敷居を高くしたくなかった。


もし、眉毛が少し薄い人がいれば、少し足すだけでより柔らかい印象になる。現場のリアルさを伝えるために演出のしすぎはよくないと上で書いたが、このようなコンセプトに沿った調整であればいいなと感じた。
また、単にメイクや服装を整えてくれるだけではなく、全カットの現場に立ち会ってくれた。テスト写真に必ず目を通す。カメラマンと私がOKとなっても、もし、違和感があれば「少し入ります」となることも。職業は違っても、仕事へのこだわりやプロ意識が強く感動した。
余談だが、モデルさんは、撮影後、化粧を落とす時間も確保しておくといい。男性で、ファンデーションを使用した方や、女性でも普段と違うメイクしたら、落としたい人もいる。拘束時間を決めるときにも、配慮しておくといいと学んだ。

写真は時間をおいて選定する

今回は、最終的に使用するのは20枚ほどだったが、1000枚くらいは撮影している。採用サイトの撮影に限らずだが、現場では、1カットにつき、ベストなアングル調整するし、モデルさんはの表情やしぐさは納得するまで撮る。
その際に、現場でいいね!となった写真にはお気に入りマークを付ける。でも、カメラマンからそのマークを過信しすぎてはよくないという話があった。人間は不完全な生き物なので、別の日に見ると、別の写真の方がいいよねと見えてくることがあるそう。
これは、webデザインにおいても同じことが言えると感じた。一度納得するデザインができたとしても、時間をおいて見ると、いまいちだと感じることもあるし、時間が許す限り最後まで調整を加える。
本番写真を選定するときも、1回選んで、寝かしてもう1回選ぶ。余裕があればそれをあと1回とか繰り返して、原石を見逃さないことは大事だという話は面白かった。

まとめ

撮影は、「段取りが全て」とまでは言わないが、事前準備が100点でも当日は、100点にならないこともある。もし、事前準備50点なら、当日はもちろんそれ以下になるだろう。なので、広い視野で準備はすることに越したことないと思う。
また、クライアントだけではなく、モデルさんやカメラマン、ヘアメイクなどの関係者全員に対して、事前に撮影目的や内容を明確にして、中心に立ち、取り仕切ることも大事だと学んだ。

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