AIに「良い感じにして」って言うな

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プロデューサー 高橋 慶

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AIを使えば作業が早くなる——そう信じて、情報をざっと渡して「いい感じにして」と頼んだ経験はないだろうか。

特にAIを使い始めた頃にやりがちな使い方が、

  • とりあえず情報を羅列して提案書や企画書を作ろうとする
  • とりあえず情報を整理させて示唆っぽいものを出させようとする
  • とりあえず体裁が整っているっぽい資料を作らせようとする

あたりなのだが、指示なしで「何とかして!」と投げると、細部の整合性が崩れて内容が薄い「それっぽいもの」が出てくる。厄介なのは「何もかもがダメ」な出力より、これの方が質が悪い点だ。一部は合っているように見えるから、「良いところを残しながら直そう」というスタンスで手を入れ始めると、抜け出せない泥沼にはまる。

ではどう使えばいいのか。個人的な経験をもとに、困り別のユースケースを簡単に紹介したい。

① 何をしたらいいか全く見当がつかない場合

まずは「自分が何をしたらいいか分からなくて困っています」と正直に相談する。その際、どんな状況で何に困っているのか、どんな状態を最終ゴールとしたいかも必ず書く。そのうえで、「この最終ゴールの認識自体、怪しいので忌憚なき意見ください」とも言っておく。

そうすると「こんな感じにするとええんちゃいますか」「こういうゴールがええんとちゃいますか」という返事が返ってくる。

しかし、それをすぐに鵜呑みにしてはいけない。

返ってきた内容をさらに分解して、自分が本当に理解できる・実践できる粒度まで具体化させる。ここが肝で、とにかく120%、腹の底から「何をすればいいか分かる」レベルまでAIに具体化させるといい。

迷走しているときというのは、ほとんどの場合、自分が何をしたらいいのか本当の意味では分かっていないときだからである。そんなとき、AIはゴールを定め、道筋を決めるのに非常に役立つ。

② 膨大なデータを前に途方に暮れているとき

これは2パターンある。ひとつは「予想している仮説があるが、データが多すぎて何からどう手を付けて良いか分からない」とき。もうひとつは「そもそも想像ができず、とりあえず何でもいいから手掛かりが欲しい」ときだ。

前者の場合は、分析の目的と自分の考えを前提から主張までテキストにまとめたうえで、「全体の傾向を集計・分析し、この仮説を支えるデータと反するデータをそれぞれ出して」と依頼するといい。書き手の意図を把握したAIは、分析だけでなくデータの解釈可能性までフラットな視点で返してくれるので、考えをさらにまとめやすくなる。

後者の場合は①と同じで、まずは何に困っていて、このデータはどんな調査から得られたものなのかを伝える。そのうえで、これを使ってどんな示唆が導けそうか、最終ゴールに対してデータを上手に活用するにはどうしたらいいかを聞いてみる。

この時点では分析結果を返させるのではなく、活用の仕方や効果的な分析方法の提案にとどめておくのがポイントだ。返ってきた回答を見て筋が良さそうなものを選び、その方法で分析すると、最初よりは方向性が見えてくるはずである。

それでもまだやりたいことがぼんやりしている場合は、あえて意地悪に「でもこの分析って何の役に立つの?」とAIに聞き返してみるといい。これを繰り返していくと、自分が何をしたいかを決めやすくなる。

③ 提案に向けて資料を作りたいとき

資料作成は、AIに任せたい業務の筆頭である。特にボリュームが多いと情報整理や指示出しも煩雑になるため、「なんか良い感じにして」と丸投げしたくなる気持ちはよくわかる。

しかし、だからこそ情報の分割と具体的な指示が、アウトプットの質を決める。

調整した骨子をもとに新しい会話を開始し、資料の目的を伝えたうえで、まずは第1章の骨子をさらに深掘りする。これを章ごとに別の会話で行い、最後に統合して過不足を調整する。AIはゼロから完成品を作るより、人間が設計した構造を肉付けする方が得意だ。この下準備をしておくと資料化がかなり楽になるし、中身が薄く整合性の取れないものが出てくる確率はかなり下がる。

おわりに:「何とかして」の前にやること

ここまで書いていて思ったが、AIを使うにはやはり、自分のやりたいことがそれなりにはっきりしていないと難しい。その場合は、まずAIに相談してゴールを定め、定まったら焦らずに小さいセクションから分析や考察を具体化していく。この手順を辿らないと、あっという間に泥沼にはまるか、「それっぽいもの」に翻弄されることになる。

「何とかして!」と丸投げしたくなる日ほど、まずは自分の頭で「何に困っているんだっけ?」と問い直すところから始める——そのことを忘れないでおきたい。

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