これまで私は、デザイナーとして多くのクライアントをご支援してきた。その中で、クライアントの特性ごとに提案内容や進め方を変えている。
共創型のスタイルで途中段階で見せるかどうか、それとも一発で完成系を見せるのか。ロジックを丁寧に伝えるのか、それとも端的に説明するかなど。
社内のメンバーと会話する中で、この領域はかなり属人的にやっていたことに気がついた。そこで、どういう条件や判断軸があるのか議論したところ、「意思決定者の特性にあるのでは」という仮説が生まれた。
分類すると、以下のように整理になる。
プロジェクトによって変わるので、必ずこの通りになるとは限らない。あくまで参考程度だが、それぞれの特徴と傾向をご紹介する。
経営者・事業責任者タイプは、デザインの説明は短く、キャッチボールを早く多くまわすことが好まれる傾向がある。
意思決定者が、経営者の場合に多い属性だ(参考:経営者というモンスターのエクスペリエンスをハックする)。ロジックよりも見た目の印象で決める傾向があるので、デザインコンセプトを長く冗長に話すことは好まれない。見た目のクオリティよりも、まずは形に作ってさっさと見せてしまう。スピーディーに短い期間で合意形成が好まれる傾向がある。
事業責任者などの場合は、彼らの後ろにさらに意思決定者が存在する場合がある。そんなときは、彼らが意思決定者に説明しやすいように、ロジックや背景を端的かつ明確にすることで、提案がスムーズに進む傾向がある。
実務家タイプは、クリエイティブや制作会社の経験者を指す。経営者や事業責任者と比較すると、デザインのロジックを好み、専門的な話を求められる傾向がある。デザインの説明は、より丁寧であることが好まれる。
見た目のクオリティを重視する。視座が一歩高くなるので、高いアウトプットのレベルが求められる。ロジックの通った説明があっても、直感を重視するのでアウトプットに納得感がないと、合意を得られにくい傾向がある。
ビジュアルの面よりもUI/UXの観点を重視して、論理的な説明を求められる。なぜこの表現に至ったのか、アウトプットに至るまでの道筋が求められるので、ロジックで丁寧に説明すると納得度が高まりやすい傾向がある。
プロジェクトの経験数が増えると共に、顧客によってスムーズな進め方も異なることに気づいた。大きくワークフローは変わらないが、その差はどこにあるのかを傾向を掴んでおくと、提案の内容、打ち合わせ頻度、スピード感が変わると思う。
顧客タイプによる進め方の違いを考えることで、デザイン提案の解像度が一歩、高まった気がする。プロセスを固定化せず、目の前の顧客に即した動き方をしていきたい。