会議で「何か意見はありませんか?」と聞かれた時、つい躊躇してしまう経験は誰にでもあるだろう。「変なことを言って評価を下げたらどうしよう」「的外れな発言だと思われたくない」——そんな不安が頭をよぎり、結局何も言えずに終わってしまう。
でも、実はその「慎重さ」が逆に印象を悪くしている可能性がある。今回は、発言への不安の正体と、意外にも「たくさん発言する方がリスクが少ない」理由について考えてみたい。
まず、なぜ発言を躊躇してしまうのか。その心理を整理してみよう。
多くの場合、根底にあるのは「自分の発言でネガティブな印象を持たれたくない」という思いだ。確かに、もしその人が会議で1回しか発言せず、それがイマイチな内容だった場合、「あの人の意見はちょっと…」という印象が残ってしまうかもしれない。
この「一発勝負」への恐怖心が、結果的に私たちの口を重くしている。でも、本当にそれがベストな戦略なのだろうか?
ところが、実際には逆のことが起こる可能性が高い。
もしその人が複数回発言し、その中に1つでも有益な発言があれば、その印象の方が強く残る傾向がある。多くの場合、平凡な発言は記憶に残りにくく、むしろ「あの人、いいこと言ってたな」という印象が残りやすい。
つまり、発言回数を増やすことで、実はリスクを分散できる。一定ちゃんと考える力があれば、姿勢としては発言の数を増やした方がむしろ安全なのかもしれない。
そして、もう一つ重要な視点がある。そもそも何も発言しないことが続くと、それ自体がネガティブな印象を与える可能性があるということだ。
野球に例えてみよう。打席に立って自分の打てる球を待っている間に、知らず知らずのうちに見逃し三振を繰り返してしまう。完璧な球を待ち続けるあまり、気がついたら「あの人は会議で何も貢献しない人」という印象を持たれてしまう。
むしろ積極的にバットを振る姿勢を見せることで、たとえ空振りが混じっても「意欲的な人」「チャレンジする人」という評価につながるかもしれない。
もちろん、発言することすべてが的外れな人は別途考える必要があるだろう。しかし、一定ちゃんと考える力があるなら、完璧を求めて沈黙するよりも、積極的に発言回数を増やす方がリスクは少ないはずだ。
大切なのは、自分が無自覚のうちに「見逃し三振」を繰り返していないか振り返ってみることかもしれない。次の会議では、完璧でなくても、まずは打席に立つ意識を持ってみてはどうだろうか。