褒められることはやがて重要でなくなる

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代表取締役 枌谷 力

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先日、「褒める」ということについての話題になった。

人間は褒められた方が力を発揮する、褒められると脳が活性化すると脳科学でも証明されている、褒めて育てたほうが良い、などと言われる。

一方で長いキャリアを考えたときには、厳しい下積みを経験した人の方が強い、シビアな要求に答え続けた人の方がより高い能力まで到達する、などという話もある。

この「褒めたほうがいい」「褒めないほうがいい」という話しは、基本的にはケースバイケースで考えなければいけない。その上で一つの法則があるとすれば、経験が浅い時は褒められやすく、徐々に簡単に褒められにくくなる、というような経験をするのが良いのではないかと思う。

例えば当たり前だが、社長という立場の私は、社内で誰かに褒められるようなことはない。褒めてくれる人がいるとすれば、クライアントである。しかしそれは、私を褒めて育てようとか、私の良いところを見つけてあげようとか、そういう動機で褒めてるわけではない。役に立った、助けられた、いい仕事をしてくれた、というように、ビジネスとしての成果が出たことに対して、そう言われるだけである。

どんな職種でもそれなりのキャリアを積めば、期待された成果を上回れば褒められるし、下回れば褒められない、ただそれだけのこと、というシビアな世界になってくる。「褒めてくれないからモチベーションが上がらない」などという発想は未熟者の証と判断されるような世界である。

褒められないのだとしたら、期待に対する十分な成果が無いから褒められないのであり、褒められたいのであれば、がんばったとか、時間を費やしたとかではなく、十分なパフォーマンスを見せつければいい。

ただし、新入社員や未経験者に絶対的な指標を基準にした高いレベルの成果を求めると、成功体験を一切しないで時間を過ごしてしまいかねない。成功体験があまりにも少ないと、最低限の自信が付かず、何をよりどころにその仕事をしていいか分からなくなるだろう。

だから身近な先輩が、経験が浅い人なりの評価指標にもとづいたり、あるいはのびしろを見越した上での長所を見つけたりして、褒めてあげる必要があるのだと思う。

しかし、そうやって先輩が気を使って褒めてくれる時期は、最初の1~2年ほどでいいのではないだろうか。あとは、成果があれば評価される、成果がなければ評価されない、レベルが低ければハッキリとそう言われる、ということでいいのだと思う。

ある程度以上のキャリアになれば、成果を出せるか、出せないか、で勝負しなければならなくなる。褒める/褒められない、を気にするというのは、直属の上司だけを見た、近視眼的なモノの見方でもある。そうではなく、できるだけ早い段階で、市場と同じように「成果をもって評価される」という環境に身を置いた方が、結局はその人のためになるのではないかと思う。

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