スキルアップの本当の目的は?

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代表取締役 枌谷 力

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Web業界は技術職が多くを占めるので、スキルや知識を身に付けて評価を高めていく、という傾向がとりわけ強い業界である。だからスキルアップが大事というのは耳が痛くなるほどよく言われる。なぜなら、スキルアップすれば、評価が上がり、収入が上がり、やりたい仕事ができるようになる、と信じられているからである。

その基本構造は間違ってはいない。特にキャリアが浅ければ浅いほど、スキルの高さが評価の高さに繋がりやすいだろう。

しかし、キャリアがある程度進むと、スキルの高さ=評価の高さではなくなり、成果=評価になってくる。どの会社も営利を追求しているわけだから当たり前のことだろう。つまり、成果や実績に繋がらなければ、いくらスキルアップしても、評価として返ってきにくくなる、ということである。

スキルを成果に結びつけるには、主に以下のような方法がある。

  1. 得たスキルをもとに、より多く仕事をこなす
  2. 得たスキルをもとに、より難易度の高い(価値の高い)仕事をこなす
  3. 得たスキルをもとに、社内にスキルを伝搬させる
  4. 得たスキルをもとに、仕事を取ってくる
  5. 得たスキルをもとに、外向けの宣伝活動をする(広告塔になる)

このうちの1と2が、キャリアが浅いころの評価への還元パターンである。ただしこれには限界がある。10のスキルを身に付けても、自分一人があげられる成果は10が限界になりやすいからである。ようするにレバレッジが効かないのである。 若いころにスキルの高さで評価されながら、キャリアが進むにつれて評価が伸び悩む人は、このパターンに陥っていることも少なくない。

一方、身に付けた10のスキルをチームに伝搬させることができれば、30にも50にも成果を膨らませることができる。あるいはスキルアップすらせず、ただ経験したことを共有するだけで、20の成果、30の成果を生み出すことも可能かもしれない。

自分だけがスキルアップすればいい。他の人は勝手にスキルアップしてくれ。それで行きつけるレベルもあるが、その限界は案外早く訪れる。むしろ、周囲を動かし、自分が一人でこなす以上の力を手に入れることの方が、高い成果に繋がりやすい。

その一番手っ取り早い方法は、チームへの情報発信である。勘違いしてはいけないが、成果にもっとも強く作用するのは、スキルの高さではなく、影響力の強さである。影響力とは、スキルの高さ×情報発信力で決まる。単純計算だが、10のスキルを持ってても情報発信を1しかしない人は、2のスキルで5の情報発信をする人と同じ影響力になってしまう(同じ成果しか生み出せない、同じ評価しかされない)。

どちらかが欠けても影響力は上がらないので、スキルアップはやはり大事ではある。しかし、情報共有、情報発信をしなければ、影響力として返ってきにくくなり、努力の割には成果/評価には繋がりにくくなる。

先を見据えて仕事をするのであれば、身に付けたスキルを自分の内側にずっと閉じ込めておく癖を早くなくすべきである。そうではなく、スキルや知識を外に向かって開放して影響力に還元していく、ということを自然とできるようになっておきたい。

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