担当案件で設計とデザインの二度、クライアントに対して提案する機会があった。今回の提案がクライントに対して設計やデザインの説明をする初めての機会だった。この二度の提案を通して学んだことがある。
どちらの提案でも至らなかったと感じた点がある。クライアントに対して「説明をする」姿勢で臨んでしまったことだ。どういった意図で設計やデザインをしたのかをきちんと説明しなければいけないという気持ちが先行しすぎてしまっていた。
デザインはデザイナーひとりで作るものではなく、クライアントも巻き込んで共創するものだ。そのための環境づくりもデザイナーとして大切な仕事である。今回はこの視点が抜け落ちてしまっていた。
では、提案の場を「説明会」ではなく、「議論の場」にするためにわたしたちができることは何だろう。事前準備と当日気を付けること、2つの観点で学びをまとめていこうと思う。これからクライアントに提案をする機会があるデザイナーには役に立つのではないかと思う。
■ リハーサルの徹底
当日、必要以上に緊張してしまわないようにリハーサルは徹底したほうが良い。なにより慣れないうちは「リハーサルをした」という事実が安心感を与えてくれる。おすすめは録音しておくこと。かかった時間を把握できること、声の大きさや話す早さを客観的に確認できるのでおすすめだ。また、リハーサルは早めに行っておくとよい。フィードバックを受けてブラッシュアップしたほうがより良いものになるからだ。
■ 当日に近い環境でのシミュレーション
大きな画面に映しながら話したり、自分のPCで作業したものを別画面に移動させて見せるといった動作は意外と難しい。当日、うまくいかず慌ててしまうようなことがあると、それだけで調子が狂ってしまう。当日に近い環境でシミュレーションしておくこともおすすめする。
■ 質問に対する意見を用意しておく
クライアントはデザインの専門家ではないので質問してくることも少なくない。そういった場合に自分の意見をあらかじめ用意しておくとよい。プロジェクトのゴールや目的といった前提条件をふまえ、それに対しての意見をまとめておくと説得力のある意見を述べられる。
答えはひとつではないので、正しいかどうかより自分なりの意見を述べることが大切である。また、こちらの意見を述べることで、チェックする観点がわかり、議論を促す効果も期待できる。
■ はじめに制作物を見てもらう
開口一番に説明を始めようとしてしまうのはやりがちだが、これでは意見があったとしても言いづらい。まずは実物を見てもらい、率直な意見を聞きながら議論に発展させていくのが良い。初めに説明されるよりも実物を見た後の方が理解もしやすい。あくまでも説明は補助的な役割であるということを忘れないようにしたい。
■ 意見を引き出すための声かけをする
クライアント側から意見が出る場合は問題ないが、なかなか意見が出てこないことも少なくはない。そういった場合はこちらから「何を答えればよいのか」を示してあげると良い。例えばこんな声かけをすると発言が生まれやすいのではないかと思う。
専門家を前にすると恐縮してしまう人もいるので、主観的な意見で問題ないことをこちらから先に示してあげることがポイントだ。
今回の提案を通して事前準備の大切さや当日意識するポイントが少しづつではあるが掴めてきた。こういったファシリテーション力も含め、クライアントの要望を形にしていくのが総合的なデザイン力なので、社内外問わず気配りができるデザイナーになりたいと思う。社内で行われる情報共有の発表などの機会も活用しながら引き続きスキルを磨いていきたい。