今年の春は多くの新卒が予期せずリモートワークになったんじゃないかと思う。私もそのうちの1人で、リモートワークに移行済みのベイジに入社し、新設のライター部署第1号の社員として3ヶ月を過ごした。
ここだけ読むと自分でも「新卒リモートワーカーが自分ひとりだけの新部署ってヤバそう」と思うが、堅実に働けている感覚が実感としてはあるので、この3ヶ月を振り返ってみたい。
新しい環境・新しい人たちに慣れるまで、春は例年苦しみが続くため、社会人になる今年は相当辛いだろうと覚悟していたのに、いざリモートワークで働き始めると生活がスルっと順調に滑りだした。
もちろんリモートワークに不安を感じた時期もあったが、リモートワークは不安の原因ではなくて、例年の新卒が抱く不安をリモートワークが大きくしていたという認識だ。
私が新卒として不安を抱いていたのは、事前に情報は貰っていても自分で体感して納得することに意味があるような、入社する前ではどうしても想像しにくい部分に対してだった。働いている人たちの性格、会社のHPに書いてあった内容は事実と反していないか、具体的な仕事の進め方。あとは状況が状況なので、今後の経営について。
こういった部分に対しては入社前にも丁寧にコミュニケーションを取ってもらっていたので、不安というよりも「実際に働いてみないとわかんないよね」という気持ちで入社した。
もともと未知数だった部分にリモートワークという働き方の”想像できなさ”が加わって嵩が増してはいたけれど、根本的には従来の働き方でも同じように抱いていたはずの不安だったと思う。
その点で、私がいま元気にはればれとリモートワークを続けられているのは、ベイジの雰囲気や環境によるところが大きい、と感じている。
自分がぼんやりイメージしていた一般的な会社像と比べると、働いている人に対しても外に対してもとても正直だな、というのがベイジに入社してすぐの印象だった。
特にそう感じたのは、問い合わせ数や去年との比較など、具体的なデータを用いて現在の会社の状況を説明してもらった時だ。その時使ったスライドは同時期に枌谷さんが登壇した外部向けのオンラインイベントでも使われていて、無いものをあるように見せたり、誤魔化したりしないんだなあと思った記憶がある。
この正直さというか、自然体な空気は働く社員の間にも流れている。それは会社の中で自分が感じたことを正直に言える場面が多い、ということに由来しているかもしれない。
ベイジでは毎日日報を提出する文化があるが、文体やフォーマットなどが決まっておらず、各々日々の気づきでも反省でも、比較的自由な形式で書いている。なので、日報を読むとその人が今やっている業務だけではなくて、何を考えているのかがなんとなく分かる。
リモート環境ではもちろんのこと、対面して働いていても言ってもらわない限り人が考えていることは分からないし、「どんな気持ちでしたか?」とかいちいち聞いていては嫌われるので、日報のように自由なフォーマットで、節々のニュアンスからなんとなく感情や考え方が分かるのは、新しく加わるメンバーとしてとてもありがたいことだった。
また、リモートワーク移行に当たって導入されたZoomやDiscordを使ったコミュニケーションは会社としても初の試みだったらしく、やったことがない同士でうまくいく方法を探る共同作業的な雰囲気があり楽しかった。その過程で、社員の趣味や家族、咄嗟のリアクションといった素に近い部分も知ることができた。
こういった、「実際に働いてみなきゃわかんないよね」の部分をオンラインでも感じられることは、「一応自分が働いていることになってるらしい会社」から「私が働いている会社」の壁を超えるのにどうしても必要だったと思う。
私が採用されたライターという職は新設で、直属の先輩や上司がいない。
とはいっても、ネットでよく見るバイタリティに溢れたスーパー新卒ではないので、編集者経験があるディレクターの先輩や枌谷さん含む周囲からの指導・サポートが欠かせない。ずっと補助輪をつけたまま走らせてもらっている。
私が新設のポジションで働く上で最も不安だったのは、採用してみたけどやっぱり違う…うまく扱えない…と思われてしまうことだった。ベイジがコピーに並々ならぬ思いを抱いているのは選考を通しても伝わってきていたし、それに魅力を感じたので入社したのだが、やはりここでも「実際に働いてみなきゃわかんないよね」という気持ちだった。
そして実際に働いてみると、現在のweb制作業界が文章領域に対して持っている課題の説明に始まり、そんな文章を担当することになる自分のこれからの立ち位置設定、1年を見越して月ごとの目標が設定されたオンボーディングシートを用いての1on1や、仕事の悩みに対する返答など、フォロー体制も充実していて、自分以上に自分のことを考えてくれているのではないか?と思う時があった。
また、これまでビジネス用の文章に触れた経験が乏しく、働く人にとって読みやすい文章を書く勘がほとんど無い自分にとって、文章をずっと扱ってきた先輩が社内にいて直接指導してもらえる環境は思っていた以上に重要だった。現在は実際の業務を通してフィードバックやレクチャーをうけつつ、目的に応じて書き方を使い分ける練習をしている。
ひとりだけの部署でも自分がやっていることの必要性について迷わずにいられるのは、こうしたフォロー体制に加えて、「文章を大切にしたい」という考え方を社員が共通して持っているからだと思う。
周囲がwebサイトにおける文章の役割を把握していることが自分の意欲を後押ししてくれていて、あまり孤独に思ったこともない。価値観の共有は文章に対する姿勢に限ったものではなく、情報発信を積極的に行うなど、ベイジの特徴的な部分全てにおいて言えると思う。
この環境であとは自分が育つだけなので、責任と焦りを感じつつも楽しく文章と格闘しているところだ。
オフィスに出勤せずに働くとは思ってもみなかった私が何不自由なく3カ月間働けたのは、ベイジのマネジメント力と組織の仕組、環境に助けられていたからだ。
そしてこれは結果論的ではあるけれど、いきなりリモートワークの不安よりも、コロナという一過性ではない大きな変化に会社が対応してくれたことへの信頼感のほうが大きかった。
会社によってはこれからもリモート中心の働き方になるところもあると思うが、今年入社した新卒も、来年入社する新卒も、あまり心配せずにがんばろーね。