クリエイティブで煮詰まったら書を捨てよ、人間を知りに行こう

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マーケター 古閑 絢子

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依頼に対して結果が求められる私たち制作会社の仕事は、「誰に、何を、どう伝える」でだいたい説明できる。

ベイジでウェブサイトを作る場合は、1~2ヶ月程度の戦略工程でクライアントのビジネスや商材、顧客について理解を進め、「誰に、何を」の解像度をチーム内で高めて認識を揃える。そのあと制作工程に入り、「どう伝えるのか」でクリエイター個人が持つ専門知識やスキルが必要になってくる。

「誰に、何を、どう伝える」。この3つの要素のどこが得意で具体的にどんな強みがあるか、どこに注力しているかは制作会社やクリエイターによっても違う。それぞれのクオリティを高めるために、上流の「誰に、何を」はディレクターやコンサルタント、「どう伝える」はクリエイター、と完全に分業している場合もあるだろう。

ただ、これまで社内・社外問わずいろんな人と一緒にコピーやメッセージを作ってきて、クリエイティブ提案の納得具合や案そのものの妥当性に影響を与えているのは「誰に、何を」の解像度だと個人的には感じている。

例えば業務のアウトソースを請け負っている企業のBtoBサイト制作で、「レガシーな気質のある中小企業の現場の担当者」に「安心と実績」を伝えるべし、とテキストで整理されているとする。それだけを頭に叩き込んでクリエイティブの制作に入る人と、なぜそうすべきなのか自分で説明できる人なら、後者の方が方向性や表現のアイデアが膨らみやすい。


「既存顧客はこれまで外部の会社に仕事を委託してこなかった企業が多い(事実)」
「だったら、そもそもどう依頼したらいいのか分からない人も多いだろう」
「長年担当者が変わらず、ワークフローが属人化していたりするだろう」
「初めての外部委託で失敗はできないだろう」
「これまで問題なく回っていた業務が一時的でも止まったり、トラブルを起こすことがこの人たちは一番嫌いだろう」
「じゃあ何をどう伝えたらいい?」
と、推論でもいいから広げていくような動きは、綺麗に整理された情報を共有してもらうだけでは難しい。「どう伝える」を磨き上げるために重要な情報はクライアント自身や実際の顧客、普段何の気なくこなしている業務や商談の中に多く含まれている。そこへの解像度が低いままだと、人のうわべをなぞる表面的な情報からなかなか抜け出せない。

解像度が低いなら上げていくしかない。

どうやって上げていくかにもいろんな方法がある。
たとえばベイジ社内のデザイナーなら、Aさんは「こうしたい」というイメージがありつつ私と話すなかで勝手に何かを掴んで帰っていくし、Bさんだったら顧客にアイデアをあてながら細部の表現を粘り強くステップを踏むように上っていく。

二人に共通しているのは仮説をもって臨む、というところだ。

これは決して難しいことではない。誰に何を伝えるべきか理解したうえで「こうしたい」「こうしたらよさそう」と感じるものがあれば、それは十分仮説だと思う。仮説という言葉にハードルを感じるなら、クリエイターの意思とも言い換えられるかもしれない。

ただ、天才的な思いつきだったとしても、仮説は常に潔く捨てられなければいけない(得るより捨てる方が難しいことがある)。仮説はあくまでも仮説として、クライアントにあててみた時の反応や周囲からのフィードバックも受け入れながら柔軟にブラッシュアップしていく、ある種の我の強さと素直さのバランスも大事にしたい。

誰に何を伝えるべきか深く理解したうえで仮説を組み立て、クライアントもそれに納得しており、かつアウトプットのクオリティも優れている。私はそれが、良いクリエイティブの提案というものだと思う。

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