徹子の部屋に学ぶインタビュー術

ナレッジブログ用のスタッフインタビュー記事の編集がひと区切りついたので、改めて読み直したら、なんか徹子の部屋っぽいなと思ってしまった。一回そう思うとそうとしか思えなくなってしまった。

自分が話してる部分がややフランクな黒柳徹子で聞こえてくる。ちょっと不思議な感覚だが、悪いことではない。なぜなら黒柳徹子はインタビューがうまいからだ。

徹子の部屋といえば、芝居に出るとか、賞を取った、映画を作ったなど、何かしら宣伝のためにゲストがやって来る、というイメージがあるかもしれないが、それはあくまでも出演するきっかけに過ぎない。この番組の主眼はゲストの人柄をどう伝えるかというところにある。

そこを引き出すのが黒柳徹子の仕事で、彼女(もしくは番組スタッフ)は毎回相手についてよく調べてきている。その努力はテーブルの上に置かれたメモや資料からも伺える。これが同じ大御所で言えば、明石家さんまやらタモリやらとの違いだ。あの人たちが得意なのはトークであってインタビューではない。

徹子の部屋に出るゲストには、意外と話慣れてない人も多い。そういう場合は、話してほしいことを話してもらうために黒柳徹子が口火を切る。とはいっても、何か特別なことをするのではなく、「なんでもあなたは××なんですって」というお馴染みのフレーズできっかけを出す。

そこでゲストが「ハハハ…」と話を終えてしまっても、「そのときあなたは××したっていうじゃないですか…」と続けて、さらに内容を引き出そうとする。黒柳徹子は事前にたくさん調べてきているので、そこから相手が話す内容についてももちろん把握しているのだが、ゲストの体験や感じたことを、ゲスト自身の言葉で伝えてもらうことが大事なのだ。

これを平日、毎日放送できるだけの回数をこなしているので、黒柳徹子は人の話を聞くことに関しては相当な場数を踏んでいる。しかも、放送される昼下がりに似つかわしくないような殺伐とした空気になることはほとんどない。相手にいい気持ちでしゃべらせ、いい気持ちでエンディングを迎えさせる。すばらしい。自分を黒柳徹子みたいだと思ったことがおこがましく感じられるくらいだ。

では、自分はこれからも黒柳徹子を目指し、完全に同化することを目標にすべきなのかというと、そうではない。あくまでも数ある見本の一つとして捉えるべきだ。

当たり前だが、あのスタイルが許されてるのは、彼女が他でもない黒柳徹子だからだ。知名度と、これまでの功績、確立されたキャラクター。この三つが揃っているから、芦田愛菜が来ても加山雄三が来ても、黒柳徹子は黒柳徹子の対応をしていいのだ。それは彼女に対してよく使われるマイペースという言葉や、芸人殺しという異名にも表れている。

彼女がマイペースだの芸人殺しだの言われてしまう時、黒柳徹子の黒柳徹子性はアクの強いゲストとの対比によって相対的に高まった状態にある。独特の世界観やコミュニケーションを展開する人間を前にしても、黒柳徹子は何ひとつ揺るがない。

彼女はゲストのキャラクターに左右されたりしない。面白くないときは笑わないし、よく分からないボケにわざわざツッコミを入れたりもしない。これはディスコミュニケーションと紙一重のところにある。黒柳徹子ではない人間が安易に模倣すると相手の機嫌を損ねてしまいかねない。

なので、私の場合は黒柳徹子以上に、自分を相手に沿わせる、ということが必要になってくる。しがないインタビュアーにとっては、相手が話しやすい場を整えることも仕事の一つだ。完全に同調してもいけないし、自分を貫きすぎてもいけない。

相手の話すことに対するモチベーションを高めてもらうためには、話を聞くスタイルだって変えるべきだ。時と場合によってはタモリにも明石家さんまにもなれたほうがいい。完全黒柳徹子化は避けたい。