クライアント同士の議論を生み出す「ふっかけ」

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ライター 五ノ井 一平

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最近、複数のプロジェクトでコンサルタントの佐々木さんと共に働く機会があった。

以前から思っていたが、佐々木さんはクライアントとの議論の進め方が上手い。なんというかクライアントを議論に巻き込むのが上手いのだ。

では、なぜ上手いのか?その正体は一旦なんなのか?をミーティングに同席する中で観察してみたところ、それは「ふっかけ」に起因しているのかもしれないと考えるに至った。彼はふっかけスキルによって意図的に議論を巻き起こし、クライアントを巻き込んでいるのではないか。

最近私が読んでいるキングダムで無理やり例えると、麃公将軍が言う「火付け役」としての能力を佐々木さんは持っていると感じる。そしてそれよってプロジェクトを良い方向へ導いている。

彼がふっかけ力を発揮したエピソードが一つある。ちょうど今進行中のプロジェクトで、サイト構造をどうするかという話になったときのこと。A案かB案がある中で、佐々木さんは「正直に言うと、私は確信を持ってAとBのどちらが良いという意見を持っていません。ですので、まずは皆さんの~」と言ってクライアントに話を振ったのだ。

てっきり私はどちらかの案を推すと思っていたので驚いたのだが、その発言がその場に火を付けて、クライアントメンバー間の喧喧囂囂の議論を引き起こした。議論中、ベイジ側は特に話を誘導することなく、クライアント側で意見が一致し、サイト構造の方向性が確定したまでに至った。

通常、複数の選択肢がある場合、最初にベイジ側で推し案を伝えるが、今回のようなアプローチも有効であることを学んだ。このふっかけ手法のメリットは大きく2つある。1つはクライアント内での共通認識が形成されること。もう1つは、クライアントのプロジェクトへのコミットメントの向上だ。

クライアントの皆さんはメインの業務で忙しい中、ウェブ制作プロジェクトに携わっている。そんな中でもいかにプロジェクトにコミットしてもらえるかが、プロジェクトの成功を左右する。そう考えるとふっかけは重要なスキルと言えそうだ。

一方、今回のアプローチは簡単なものではない。佐々木さんが「どちらが良いか正直に言って、わからない」というスタンスを取れるのは、彼が常日頃から提案型でクライアントをリードし続けてきたからに他ならない。それがなければ、「わからない」というスタンスは、ただの優柔不断さや自分の考えがないと見なされかねない。あくまでもクライアントに対峙する際のスタンスは、提案型でリードすることであるのを忘れないようにしたい。

「火を絶やすでないぞォ」

これは麃公将軍が死ぬ前に放った名言だが、佐々木さんが付けてくれた火を絶やすことなくこのプロジェクトを最後まで全うしたい。

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