会社紹介
タグライン
ミッション・ビジョン・バリューはよく耳にするのに対して、タグラインは耳馴染みが薄いかもしれません。しかし私たちは、ミッション・ビジョン・バリューとは別の役割を果たすタグラインを必要としていました。そのタグライン「顧客の成功を共に考えるウェブ制作会社」について、詳しく解説します。
タグラインの役割
ミッション・ビジョン・バリューとは、誰のためにあるのでしょうか?
コーポレートブランディングの一環であるという捉え方をすると、それらは顧客のため、ステークホルダーのため、さらに広げると社会のため、という考え方になりがちです。しかし私は明確に、「社員のため」「自分たちのため」にあるものだと思います。
ミッション・ビジョン・バリューを見込み顧客に見せても、そのことが直接的なキッカケとなって顧客にはなりません。しかし、それでいいのだと思います。なぜならミッション・ビジョン・バリューは、顧客のためではなく、働く社員とそれを率いる経営陣のためにある言葉だからです。
しかしそうなると、「顧客に対して自分たちを紹介するには、どんな言葉を使うべきなのか」という別の課題が出てきます。その課題にこたえるために開発したのが、この「タグライン」です。
タグラインとは、分かりやすく言えば、端的な自己紹介です。ベイジという会社と初めて出会った人に、真っ先に伝える言葉。「ベイジってどんな会社なの?」と言われた時に回答として伝える言葉。それを私たちは「顧客の成功を共に考えるウェブ制作会社」として定義しました。
タグラインに込めた思い
「ベイジという会社を一言でどう表現するか?」というのは、創業以来ずっと持ち続けていた課題でした。その流れの中で、2012年頃からBtoB領域を強くするという方針を打ち出し、2017年頃からは「BtoBに強いウェブ制作会社」というタグラインをよく用いるようになりました。
これはこれで、私たちの強みを分かりやすく表現した言葉でした。このタグラインが呼び水となって、顧客獲得に繋がった事例は沢山存在します。
一方、採用サイトやコーポレートサイト、そしてウェブアプリケーションのUIデザインやUXデザインと扱う商材が増える中で、「BtoBに強いウェブ制作会社」というタグラインでは、使い勝手が悪いと感じることも増えてきました。あるBtoCサービスを提供する企業からは、「なぜBtoBに強い会社に発注するのかと上司に聞かれたのですが、どう説明すればいいですか?」と尋ねられたこともありました。
もちろん、BtoBサイトに完全特化して「BtoBに強いウェブ制作会社」というタグラインを使い続ける、という選択肢もあります。しかし、そこで思うのが、「そもそも私たちは何をしたいのか」という原点です。
私たちは決して「BtoB企業だけを支援したい」と思っているわけではありません。ベイジやベイジの社員の考えに共感し、一緒に働きたいと考えてくれる企業であれば、できるだけ協力したい、貢献したいと思っています。
また、「BtoBに強い」という言葉は、分かりやすくキャッチーではありますが、私たちの強みを正確に描写した表現ではない、とも思っています。
私たちの強みの核心にあるのは、経営や事業や採用や組織といった視点からの問題課題を調べ、ブレイクダウンし、整理し、ゴールを決めた上で、ウェブサイトというカタチに再編集していくという、そのプロセスと精度です。
この強みが端的に発揮されやすいのが、認知チャネルが絞られてて、購買プロセスの中で高確率でウェブサイトを経由し、コンバージョンという明確なウェブサイト上のゴールがある、BtoBにおけるリード獲得目的のウェブサイトです。
しかし、同じような構図は採用サイトにも見られるし、BtoCのウェブサイトでも似たような構図になることがあります。このような考え方のプロセスは、必ずしもBtoB特有ではありません。
そもそも「BtoB」というのはかなり曖昧な概念です。ある文脈においては分かりやすく伝わりやすいけど、ビジネスを解像度高く捉えようとすればするほど、BtoC/BtoBというのは雑な分類法であるな、と感じます。
このような考えや思いがあり、「BtoBに強い」というのはBtoB系のサービスメニューのタグラインとしては残しつつ、会社全体を表現するタグラインからは外しました。そうして新たに定義したのが、「顧客の成功を共に考えるウェブ制作会社」というタグラインです。
成果に対する私たちの考え方
タグラインに含まれる「成功」という言葉の前に、「成功」と関係の深い「成果」という言葉について、まず私たちは考えました。
ウェブサイトと「成果」とは切っても切り離せない関係にあります。私たちも企業のウェブサイトを支援する以上、成果から目を背けることができません。ウェブ制作は、「クリエイティブは定量化できない」を免罪符にし、成果に向き合わず、手段が目的になって、納品をゴールにしてしまう、ということが起こりやすい仕事です。
こうした姿勢ではいけないという、強い危機感・使命感は、私たちの中にあります。その一方で、成果というものを突き詰めて考えたときに、果たして本当に、私たちの力だけでクライアント企業の成果を生み出すことができるのか、という考えも過ります。
私たちがリニューアルを担当したウェブサイトで、コンバージョンが2倍以上に延びたこともあれば、コンバージョンが変わらなかったこともありました。コンバージョン数は変わらなかったけど成約数に影響を与えたこともあれば、コンバージョン数は延びたけど商談数は延びなかった、ということもありました。リニューアル直後はあまり変化がなく見えたけど、1年を通してみると、お問い合わせの質が変わったということもあります。
結局ウェブサイトは、マーケティング・プロセスの一部にすぎません。マーケティング全体の完成度が高く、ウェブサイトだけが大きなボトルネックであった場合、リニューアルによってコンバージョン数などのKPIが分かりやすく変化することはあります。
しかし、マーケティング上の課題が複数存在し、それぞれが相互作用したうえで機能不全を起こしている場合、ウェブサイトだけを理想的に改善しても、それだけでは歯車が回らない、ということも起こります。そういった場合、別の個所の改善が進んだ段階ではじめて、ウェブサイト周辺がスムーズに回り始めたりします。
私たちは、ウェブサイトの専門家としてウェブサイトという分野にフォーカスするからこそ、ウェブのコンテンツやUIを鋭く研ぎ澄ますことができると考えています。ウェブサイトの仕事をしていることに誇りを持っており、その分野に焦点を絞って深く追求することが、お客さまの便益になると信じています。
一方で、特定分野にフォーカスしているからこその限界もあります。その一つが、成果への影響が部分的になることです。
そしてまた、成果とは、基本的にはお客さまの努力の結晶であって、私たちはそれを下支えするに過ぎない、とも感じています。
ウェブサイトのリニューアルで成果が出たとしても、根底にあるのはその成果に相応しい優れた商材をお客さまが作っていたからです。ウェブサイトをどんなに理想的な姿にリニューアルしても、扱っているのが魅力のないプロダクトやサービスであれば、有意義なコンバージョンは生み出せません。
もちろん、過剰演出をすることで、どこかのKPIを伸ばすことはできるでしょう。しかし、羊頭狗肉は冷静な意思決定者にすぐ見抜かれるでしょう。仮に見抜かれずに契約や購入まで漕ぎつけたとしても、事後にトラブルになって、最終的に評判を落としては、何のためのコンバージョンか、ということになります。
「必ず成果を出すウェブ制作会社」と言い切れれば、その便益性は強く伝わるでしょう。しかし、成果というものに対する様々な考え方を踏まえると、それは言いすぎだし、それは誠実な言い方ではない、と感じてしまいます。「6つの行動原則」で定義されている「馬鹿正直にフェアネス」にも反します。
では、私たちの活動をできるだけ正確に描写し、過剰な演出を加えず、フェアに表現できる言葉は何か。それが「顧客の成功を共に考える」ではないかと、思い至りました。
「共に考える」という価値
私たちは、戦略フェーズと呼ばれるパートでのコンサルティングを重視していますが、ここで行っているのは、正解を提示すること、成果に直結するミラクルなアイデアを提示すること、では決してありません。
成果を出す責任を負っているお客さまの担当者に対して、様々な仮説を提示し、前提条件を整理し、ウェブサイトのあるべき道筋を示す、というのがその実態です。成果を起点に発想する意味では、お客さまの担当者と同じですが、私たちが成果を出すわけではなく、成果を出す責務を負っている人を支援している、というのがより正確な表現となります。
実際にお客さまも、「ベイジに頼めば成果が勝手に出てくる」などと安易に考えていることはありません。ほとんどすべてのお客さまが、「成果は自分たちが出すもの」と考えています。その上で私たちに期待しているのは、専門家としての知恵であり、自分たちでは気付けない議論の視点であり、良き壁打ち相手です。もちろん私たちから「提案」をすることはありますが、それは仮説ではなく、それを精査し、選択するのは、お客さまです。
このように考えると、私たちがお客さまに提供している価値とは、「成果を出すこと」でも「コミットすること」でもなく、「共に考えること」なのだと感じるわけです。
では、私たちは、何を共に考えているのでしょうか。
BtoBサイトを作るときは、BtoB企業であるお客さまのマーケティングについて、成果を求めるお客さまと同じ目線に立ち、お客さまと共に考えます。しかし前述したように、今の私たちは、BtoBサイトだけをやっているわけではありません。採用サイトを手掛けるときは、お客さまの人事採用戦略について考えます。コーポレートサイトを手掛けるときは、経営戦略や事業戦略、組織戦略を横断的に考えます。業務システムのUIを改善するときは、お客さまの業務プロセスについて考えます。
ウェブサイトのあるべき姿を捉えるために、私たちが考えているBtoBマーケティング、採用戦略、経営や組織、業務プロセス。これらを包括的に捉えると、私たちはいったい何を共に考えているのでしょうか。
その答えが「顧客の成功」です。
BtoBマーケティング、採用戦略、経営や組織、業務プロセスを考えるさらにその先にある目的とは、事業を成功させるため。その一言に尽きます。逆に、事業を成功させるという本来の目的を忘れ、BtoBマーケティング、採用戦略、経営や組織、業務プロセスの表面的な課題だけに囚われていると、ウェブサイトはビジネスとの繋がりを失い、便益を生み出す装置にならなくなります。
「成功」とは、お客さまにとって最も価値ある視点であり、と同時に、私たち自身を望ましい方向に導く視点にもなる、もっとも本質的で相応しい言葉だと考えました。
また、この「顧客の成功」には、2つの側面があります。
1つはもちろん、私たちが契約を取り交わす、クライアント企業です。そしてもう一つが、そのクライアント企業の先にいる、クライアント企業にとっての顧客です。また時には、クライアントの先にいる顧客の、さらにその先にいる顧客も含まれます。
このような顧客価値の連鎖に目を向けなければ、持続的に成果を生み出し、長期的な便益に繋がる、本質的なマーケティング支援ができなくなります。本当に価値ある成功とは、誰かを搾取するようなものではなく、クライアント企業がその顧客と長く強い関係を築けるような、そんな成功だと思います。
だからこそ私たちは、クライアント企業にヒアリングをするだけでなく、その先にいる顧客のリサーチや分析を重要視しているわけです。また、短絡的なコンバージョンやページビューやビジュアルの表面的な印象ではなく、顧客や顧客化するプロセスを構造的に捉えた上での、本質的なコンテンツ提案にこだわるわけです。
このような様々な思考の末に、今の私たちのタグライン「顧客の成功を共に考えるウェブ制作会社」が生まれました。
この言葉に最初に触れたとき、もしかしたら、「なぜそんな当たり前のことをタグラインにしているのだろう」と思うかもしれません。しかし私たちは、その一言で一気に顧客獲得を促すような飛び道具のようなタグラインを求めているわけではありません。この言葉が入り口となり、「成功を共に考える」ための様々なプロセスや仕組みに前提となる文脈を与え、ここで解説したような意図や背景を知ったときに、「色々考えてこのタグラインに至ったのだな」ということを、じんわり理解していただければいいと思っています。