「完全移行」はなぜ伝わらなかったのか

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情報システム 野村 輝

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「完全移行でお願いします」

そう聞いたとき、あなたはどこまでをイメージしているだろうか。

テキストと画像だけ?それともデザインも含めた見た目ごと?

おそらく多くの人が「なんとなくわかるだろう」と思ったまま、確認せずに進めているのではないだろうか。

「完全」は、人によって指す範囲が違う

制作・開発の現場では、こんなケースがよく聞かれる。

「完全流用」でのデータ反映を依頼したところ、記事や画像だけでなく、旧サイトの見た目のスタイルまで再現されて納品されてきた、というものだ。

依頼側の意図は「テキストと画像は元サイトから引き継ぎ、スタイルは新サイトの体裁に合わせて登録する」というものだったが、「完全」という言葉から、見た目も含めてそのまま再現するものと解釈されていた。

「事前に確認してほしかった」という見方もあるかもしれない。ただ、「完全」と言われれば体裁も含めて再現するのが自然な解釈だとも言える。問題は担当者の読み取り方ではなく、「完全」という言葉そのものの曖昧さにあった。

「完全」を使わずに伝えるには

「完全」という言葉には、定義の余白がある。使う側は伝えたつもりでも、受け取る側はその余白を自分なりに解釈するしかない。そのズレが、手戻りや余分な工数として現れてくる。

では「完全」を使わずに伝えるとしたら、どう言い換えれば良いか。

先ほどのケースであれば、

「テキストと画像のみ元サイトから流用し、スタイルは新サイトの仕様に合わせて登録する」

と伝えれば、解釈の余地はほぼなくなる。少し長くなっても、言葉の定義を一つひとつ丁寧に確認する方が、結果的に工数を減らすことにつながる。

似たような場面として、LPのようにファイルをそのまま移設する場合がある。これは「完全移行」と呼ぶこともあるが、「現状のまま移設」と表現した方が誤解は少ない。一方、デザインの完全再現のように「比較元と比較先を完全に一致させる」という文脈では、「完全」という言葉は意味を持つ。使えない言葉ではなく、定義が必要な言葉だということだ。

認識のズレは、言葉の定義から始まる

認識のズレは、不注意から生まれるとは限らない。「完全」「流用」「移行」といった言葉は、現場では当たり前のように使われているが、人によって指している範囲が違う。それ自体は避けられないことでもある。

だからこそ、ふわっとした言葉を使ったと気づいた瞬間に立ち止まって、

「具体的には何を・どこまで・どの状態にするか」

を言語化する習慣が重要になる。確認のひと手間が、後工程の大きな手戻りを防ぐ。

「完全」という言葉を見かけたときは、一度立ち止まって、その「完全」が相手にとっても同じ意味として伝わっているかを考えてみるとよいだろう。

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