アプリUI 仕事の進め方

2-5-5. ユーザーインタビュー

執筆 野上 恵里
コンサルタント
読了時間の目安
6

実際のユーザーと対面で質疑応答する形でインタビューを行い、ユーザーが求めるニーズを導き出します。

ユーザーインタビューでは、既知の行動、発言、課題感などの顕在ニーズの裏にある本質的な潜在ニーズを引き出します。たとえばウェブアプリケーションでのインタビューでは、以下のようなことを明らかにします。

  • 開発者の思い込みと、ユーザーの本当の思いのギャップ
  • システムだけではなく、ユーザーフロー全体の正確な実態
  • ニーズの優先度
  • 人前で話せないこと(上司には言えないこと、従事者同士の関係性など)

実施には以下のサブタスクが発生します。

インタビュー手法の選定

ユーザーの規模やアプリケーション特性に合わせてインタビュー手法を決めます。代表的な手法は以下の通りです。

グループインタビュー

同じ属性の2名以上に対して同時にインタビューを行います。さまざまな視点の意見やニーズを短時間で得られます。ただし、周りのユーザーに無意識に同調するケースもあるため、個人としての真意を探りづらいというデメリットもあります。

デプスインタビュー

調査対象者とインタビュアーが1対1で長時間インタビューを行います。ニーズを探りやすいものの、複数人にインタビューをしないと偏った回答しか得られない可能性があります。少なくとも3名以上にインタビューすることをおすすめします。

半構造化インタビュー

あらかじめ質問したい内容をおおまかに決めておき、回答によって、適宜質問の順序を組み替えたり、追加の質問をしたりしながらインタビューを行います。漏れなく、かつニーズをより深く探るのに効率的です。(これに対して、質問内容を完璧に決める「構造化インタビュー」、ほぼ決めない自由度の高い「非構造化インタビュー」があります)

ベイジでは「デプスインタビュー+半構造化インタビュー」または「グループインタビュー+半構造化インタビュー」の手法で実施することをおすすめしています。時間がとれるようであれば、同調のリスクがないデプスインタビューを採用します。

半構造化インタビューの仕組み

インタビュー対象者のリクルーティング

ユーザーインタビューの対象者は、現行アプリケーションの利用頻度が高いベテラン、利用を開始して間もないビギナーなどターゲットを定めて選定します。ベイジが多く担当する業務アプリケーションやSaaSに関するリクルーティングは、お客さまにしていただくことがほとんどです。

インタビュー設計

インタビューの手法が決まったら、設問の内容を検討します。1回のインタビュー時間は60~90分で計画します。インタビューでは少なくとも以下のような設問を網羅します。

  • 想定フローで間違いないか?
  • フロー前後の行動は?
  • 毎日のゴールは?
  • 一日のタスクの時間配分は?
  • やりがい/モチベーションを感じる事は?
  • 逆にプレッシャーを感じるタスク・苦労していることは?
  • 苦労していることの現在の解決方法は?

特に、現場目線の「プレッシャーを感じるタスク・苦労していること」を、インタビューの時点で確実に把握しておきます。

それ以外にも質問しておくといいのは「学習の方法」や「上手く効率的に操作するコツ」です。初心者、ベテランというユーザー属性が必ず存在し、その差異を明らかにすることが作業効率化を実現する上でのポイントとなります。これらの質問を深堀りすれば、潜在ニーズに辿り着きやすくなります。

さらに質問は、質問者側に都合の良い回答に誘導しないよう、以下の点に注意します。

  • 誘導型、YES/NO型の質問はしない
  • 抽象的な質問で自由な回答を促す
  • 1つの質問に2つ以上の要素を入れない
  • ユーザーに何が必要かを聞かない
  • 一般論ではなく実体験を聞きながら、その行動の根拠を探る

ベイジでは、ここまでで説明した設問のコツを踏まえたインタビュー設問テンプレートを準備しており、それをもとにプロジェクト固有の設問に書き換えて作成しています。設問は事前にお客さまにご確認いただき、追加で質問したい内容についてコメントいただき合意します。

インタビュー設問テンプレート

インタビュー実施

インタビューはインタビュー担当とメモ担当の2名以上で行います。メモはユーザーが口にした事実をそのまま書き留めます。最近ではZoomなどのツールを使ってリモートインタビューを行うことも多くなりました。録画が容易でありユーザーの反応もうかがいやすく積極的に活用しています。

インタビューではなるべくお客さま自身もユーザーの生の声を直接聞いていただくことをおすすめしています。さらにシステム開発の関係者(開発、営業など)も同席していただけると、開発側の思い込みとのギャップを掴むことができ、開発フェーズがスムーズに進むことが多いです。

リアルインタビューではお客さまの会議室などの小さい部屋で行うことがほとんどですが、メモ担当と同席者はなるべくインタビュー対象者の視界に入らないよう席に配慮します。オンラインインタビューでは同席者の顔は投影せず、インタビュー対象者が大勢に見られていることを意識しないよう工夫します。

インタビュー結果の分析

インタビューで拾ったユーザーの声は、ユーザーフローにもれなく反映します。内容に応じて分類し、問題の深刻度やニーズの大きさなどで解決すべきものの優先度を決めます。

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