アプリUI 仕事の進め方
2-5-2. エスノグラフィ
現行アプリケーションを利用する現場を訪問し、利用環境を観察して得られた気づきを整理。利用環境も考慮し機能の実現アイデアを検討できるようにします。
エスノグラフィとは、人が活動している現場を深く観察・理解することで、本当の姿を感覚として掴むユーザーリサーチの手法です。一般的なインタビューなどではユーザー自身が口にできる顕在ニーズしか明らかにできない一方で、エスノグラフィではユーザー自身が気づきにくい潜在ニーズを探し出せるという特徴があります。
主に以下のような発見を目的に観察します。
- 操作マニュアルと現場の乖離
- ユーザーの無意識な想定外の操作手順
- アプリケーション以外に使うもの(メモ、封筒、電卓、他ツールの参照など)
- 関係者(作業協力者、レビュー者、電話相手など)
- ユーザーの慣れで埋もれた問題点
特に複雑なウェブアプリケーションでは、ユーザーフローに問題があってもユーザーが上手く適応してしまい、問題が埋もれてしまうことも多くインタビューでは顕在化しにくいです。実際に操作の様子を観察することで、初めて明らかになります。
エスノグラフィの設計
まずはアンケートやインタビューで確認できた情報を整理し、以下を設計します。
- 観察対象にすべきシナリオやシーンの選定
- 特に注視すべき課題のあるタスクの選定
- この時点で分かっているユーザーフローの想定
- 不明点やより詳細に知りたい事項の整理
- ユーザー(現場)の選定とリクルーティング
エスノグラフィでは、観察と記録に注力します。観察者の行動を阻害しないよう、なるべく複数人で観察するようにしています。すべてを観察することは難しいため、事前に何に注意し、何を無視するかを選別しておきます。
観察観点
観察観点の参考となるエスノグラフィーフレームワークが複数存在しますが、ベイジでよく使うものは「POEMS」というフレームワークです。「POEMS」は観察観点の頭文字で構成されます。
- People(人々):登場人物とそれぞれの役割、ポジション、行動の特徴など
- Objects(目的):システム、ツール、機能などの調査対象
- Environments(環境):レイアウト、雰囲気、照明、温度など
- Messages(メッセージ):専門用語、言い回し、頻出フレーズなど
- Services(サービス):影響を与えるすべての周辺アプリ、ツール、システム、モノ
ユーザーフローのタスク順序を軸に、POEMSを活用した以下のようなテンプレートを利用し、抜け漏れなく観察ができるよう工夫をしています。
観察後には、簡単にユーザーにインタビューできる時間を確保しておきます。インタビューでは、観察で得られた新たな気づきや、行動の根拠を聞き出します。観察が終了したら、観察者全員の記録を1つにまとめて、特徴的な行動を中心に整理します。整理した結果は後述するAs-Isユーザーフロー設定に落とし込みます。