ウェブ制作 仕事の進め方

5-2. 写真撮影

執筆 池田 彩華
デザイナー
読了時間の目安
12

商材やウェブサイトの目的を考えた時に、撮影の必要がある場合には、撮影のサブプロジェクトを立ち上げます。特に社員や職場を紹介する必要がある採用サイトでは、撮影はほぼ必須です。

撮影は外部のフォトグラファーと契約して実施しますが、工程管理、現場でのディレクション、クオリティチェックなどはベイジで行います。デザイナーが中心となって進めますが、撮影当日などの人手が必要な場合は、ディレクターらがサポートに入ります。撮影のワークフローには以下のタスクが設定されています。

撮影前

お客さまへのヒアリング

お客さまとともに、撮影の目的、予算、撮影日数、写真の用途、注意事項、前提条件などを確認します。特に予算は、撮影スタッフのアサインや撮影計画に大きな影響を与えるので、確実に確認します。

カット数の確認

お客さまとともに、撮影の目的、予算、撮影日数、写真の用途、注意事項、前提条件などをカット数は、撮影計画や予算、スケジュールに影響を与えやすいため、アタリの写真を入れたデザインカンプを確認しながら、必要なカット数を決めていきます。カット数が多くて管理が複雑になる場合は、サイトマップを撮影用にカスタマイズして洗い出すこともあります。

撮影スタッフのアサイン

フォトグラファーやヘアメイクアーティストなどの協力パートナーを選定します。まず、メール等にて以下のような概要を伝え、費用や対応可能期間などを確認します。案件によっては、候補を紹介する提案資料を作成して、お客さまと一緒にどのフォトグラファーにするか、協議することもあります。

撮影スケジュールの作成

プロジェクトメンバーが決まったら、サイトの公開日などから逆算して、大まかなスケジュールの見通しを立てます。例えば以下のようなイメージです。

  • ロケハン  6/01〜05(うち1日)
  • 撮影    6/08〜12(うち2日)
  • レタッチ  6/15〜7/3
  • 画像加工  7/06〜07
  • HTML反映 7/07〜08

これを元に関係者で調整を行い、より詳細なスケジュールを決定していきます。最近の撮影はデジタルで行われるので、撮影データ自体は撮影後すぐに手に入れることが可能ですが、レタッチをフォトグラファーへ依頼する場合は、撮影データが納品されるまでの期間を、改めて確認する必要があります。

撮影計画(香盤表)の作成

スケジュールが決まったら、撮影の計画をさらに精緻化していきます。この段階では、主に以下のようなことを確認、作成していきます。

a. 香盤表

撮影当日のスケジュールをまとめた「香盤表」に情報を落とし込み、当日の計画をより精緻にし、フォトグラファーを含めた関係者に共有します。香盤表には以下のような情報があると、コミュニケーションがスムーズになります。

  • 時間
  • 場所(階、場所名)
  • 使用箇所(ページ名、該当箇所、写真比率)
  • シチュエーション(ストーリー、イメージ、必要な小物)
  • モデル情報
  • カット数

b. 撮影ラフカンプ

撮影イメージをフォトグラファーと共有しにくいカットについては、例えば以下のように各写真のストーリーやシチュエーションを元に、ラフカンプを作成します。カンプには必要な説明も加えておきましょう。

c. 撮影マップ

会場が広く迷う可能性のある場合には、どのカットをどんな場所で撮影し、そのためにどう移動していくかを、撮影マップで示します。撮影マップを作っておくと、香盤表の時間配分もより現実的なものになり、ロケハンでの確認もスムーズになります。

撮影計画の共有

撮影計画を各関係者へ共有します。主に以下のような点について、フィードバックや変更箇所がないかを確認します。

対 お客さま

  • 撮影計画のすり合わせ
  • ロケハン/撮影日の最終確認
  • 撮影場所の予約(必要な場合)
  • モデルとなる社員の確認

対 フォトグラファー

  • 参考写真や方向性の確認
  • 香盤表の確認
  • 写真比率の変動について共有(webサイトのため)
  • 懸念事項等のヒアリング
  • 撮影スケジュールの確認
  • レタッチ期間、納品日の確認

対 ヘアメイク

  • 仕上げたいコンセプトを共有
  • 当日の流れや動きの確認
  • 撮影中に考慮すべきことの確認
  • モデルへ共有事項(当日の服装・髪型など)の確認

ロケハン

ロケハンとは、ロケーション・ハンティングの略で、撮影の前に現場に行き、撮影計画と照らし合わせて確認を行うことです。撮影は、その場に行けばすぐできるわけではありません。アングル探しに時間がかかり、アングルによって必要な機材が変わることもあるので、できるだけロケハンは行うようにします。

どうしてもロケハンを実施できない場合は、アングルや光の当て方などをシミュレーションできるよう、デザインのラフカンプなどをフォトグラファーへ共有しておくとよいでしょう。ロケハンが決まったら、前日までに関係者全員に以下の内容を共有します。

  • ロケハン概要(時間、場所など)
  • 駐車場情報
  • 撮影計画資料
  • 緊急連絡先

現場では立って話すことも多いので、資料を数部印刷しておくと便利です。ロケハンが終わったら、必要に応じてフォトグラファーが撮影した画像を受け取ります。

撮影資料の最終準備

デザインカンプへ反映

ロケハンで撮影した写真をデザインに当てはめて、カットに変更がないかなどを確かめます。小物や目線、表情などを確認し、必要であれば、関係者にも共有します。

香盤表へ反映

ロケハンで変更になった箇所を香盤表へ反映し、最終版として完成させます。

モデルシート作成

採用サイトの場合、モデルが複数になることがほとんどです。その際に、名前と顔が一致していると、撮影時の指示や依頼もしやすくなります。モデルが確定し次第、お客さまから顔写真をいただくようにします。

服装については、後述しますが、事前にどんな服装か決めておきます。また、複数回登場するモデル様は、印象を変えるために服のバリエーションを決めておき、カットによって着替えていただくこともあります。

スタイリング指示書作成

採用サイトの場合、被写体は一般の社会人になるため、モデルへの要望は、事前に細かく指定しておく必要があります。服装は、サンプルを示してイメージを共有しておけば、当日の認識の差は発生しにくくなります。避けてほしい服装もあれば、事前に伝えておきます。メイクや髪型に関する要望を伝えておきましょう。

各種手配・リマインド

駐車場や機材搬入の手配が必要であれば済ませておきます。小物を準備する場合は担当者を決めて、きちんと揃っているか直前に確認します。念のため、撮影1~3日前には、以下のことを関係者全員にリマインドします。資料に変更が加わった場合には、最新版も送付しておきます。

  • 概要(日時、集合時間、集合場所、終了時間、会場情報)
  • お昼について
  • 駐車場情報
  • 撮影資料の共有
  • 緊急連絡先
  • 撮影延期の決定方針について(必要であれば)

撮影当日

撮影準備

入場

入場や準備に戸惑う可能性もあるので、撮影開始時間に対して、余裕を持って会場入りするようにします。特に自然光を扱う場合、光の状態が刻々と変化していくので、決して遅れないようにします。

事前ミーティング

関係者が集まったら、最新の香盤表などを配り、改めて当日の流れや動きを確認します。撮影にあたっての不明点や連絡事項などもこのタイミングで確認します。また、割れ物など、取扱注意の品物に触れる場合には、改めて注意喚起をします。当日は、ロケハンに参加していないメンバーが参加することもあります。必要に応じて各場所へ案内します。

現状復帰用の撮影

撮影では、部屋のレイアウト変更や備品を動かすことがあります。撮影終了後、元の状態に戻せるように写真を撮っておくと便利です。

撮影環境の準備

元の状態を記録したら、カットに合わせて部屋のレイアウトを変更します。パソコン、ペン、コーヒーなどの小物を用意し、セッティングしていきましょう。撮影の雰囲気にもよりますが、音楽をかけることができる環境であれば、 BGMを流すと現場の雰囲気が和むのでおすすめです。

撮影中

タイムキープ

採用サイトでは、特にモデルとなる一般社員の拘束時間や、会場となるオフィスの利用時間が決まっていることが多いため、時間通りに進行するように心がけます。想定外のことや予定通り進まない場合は、全体のスケジュールを見て柔軟に調整します。

テスト撮影

本カットの前にテストで何枚か撮影しながら、フォトグラファーとコミュニケーションを取りつつ進めていきます。また、モデルが必要なカットは、まず別の人が立ち、どの場所にどんなポージングで撮るかを事前に確認することで、モデルの負担を減らします。

モデルの誘導

待合室やメイクルームから、モデルを現場へ誘導します。撮影ディレクションを担当するデザイナーは、フォトグラファーと現場で絵を作ることに専念したほうがいいので、モデルの誘導は別の担当を立てておきます。メンバーが足りない場合は、お客さまの担当者に依頼してもいいかもしれません。

雰囲気づくり

採用サイトのモデルは一般の方なので、撮影に慣れておらず、カメラの前で自然な表情を作ることも難しいです。そのため、できるだけリラックスする環境を作り、表情やポージングを引き出す工夫も大事です。フォトグラファーが率先してやってくれることも多いですが、撮影ディレクションを担当するデザイナーもモデルに話しかけるなど、現場の雰囲気づくりに積極的に参加していきましょう。

お客さまへ確認

撮影現場にお客さまがいる場合は、写真の撮れ高を確認します。撮影終了後の大きな調整は現実的に厳しいため、余計な被写体が移ってないかなども含めて、撮影の現場である程度お客さまチェックを入れてもらいましょう。

撤収

予定していたカットがすべて撮れたことが確認できたら、部屋のレイアウトや備品を元の状態に戻します。その際は、事前に撮っておいた写真と比較しながら戻します。ゴミや汚れなども確認します。

撮影後

写真選定

撮影が終わったら、レタッチしていない写真データをフォトグラファーからもらい、サイトに使う写真を確定させていきます。現場で写真が決まることもありますが、デザインに当てはめながら写真を選ぶこともあります。

レタッチ

フォトグラファーにレタッチをお願いする場合は、デザインのはめ込みイメージなども添えながら、どういうテイストに仕上げてほしいか伝えて写真を仕上げていきます。仕上げたいイメージがあればできるだけ具体的に伝えつつも、フォトグラファーの良さを活かすようにします。

写真加工

納品データが届いたら、写真を作成します。webサイトの読み込みを早くするために画像を圧縮しますが、劣化しすぎることもあります。また、レスポンシブwebやリキッドレイアウトの場合、縦横比が変わり、想定した構図にならないケースも出てきます。必ずブラウザ上でチェックし、写真の良さと技術的な制約の丁度良いバランスを見極めるようにします。

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