ウェブ制作 仕事の進め方

2-4-3. 商材

執筆 枌谷 力
代表取締役
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20

ベイジの戦略フェーズでは、まず企業を理解し、顧客を理解した後に、商材の理解に入ります。なぜなら、企業と顧客を理解していなければ、なぜその商材がそうなっているのか、その商材の価値はどこにあるのか、ということが理解しにくくなるからです。

商材については、お客さまの方が圧倒的に理解していることが多いため、ヒアリングをメインとしながら、以下のようなステップで情報を整理していきます。

  1. ビジネスモデルの整理
  2. 機能と価値の構造化
  3. 便益性と独自性の整理
  4. ブランドの構造化
  5. 競合の定義
  6. 基本ストーリーの設計
  7. アイデアの整理

なお、ウェブサイトが複数の事業、あるいは複数の商材を扱う場合、本来はすべての商材に対して、上記の検討を行う必要があります。しかしそれをすることには大抵期間と予算の問題が生じるため、現実的には、より重要な2〜3の商材に対して詳細な検討を行っていきます。

1. ビジネスモデルマップ

商材の理解は、ビジネスモデルの理解から始めていきます。

BtoBの場合、事業会社→顧客という直販型のビジネスモデルと、事業会社→販売会社→顧客という代理店型のビジネスモデルの併用が多く見受けられます。またBtoBtoCやインフラ的な性質が強いビジネスの場合、安全性やコストの観点から、より複雑なビジネスモデルとなっていることがあります。

こうしたビジネスモデルの理解は、ビジネスに関与する自社、顧客、代理店、サプライヤーなどのプレイヤーを洗い出し、それぞれがどのような価値を提供し、どのようなお金が流れているかを図式化した「ビジネスモデルマップ」を作ることによって行います。

ビジネスモデルマップには、価値やお金の流れだけでなく、初期費用は安くし、運用で利益を積み上げていくなど、ビジネスモデル上で工夫しているポイントも明記します。またこれらの実際の数字もできるだけ具体的に明記していきます。こうして、ビジネスを成立させている基本構造を視覚化し、私たちとお客さまの認識をすり合わせていきます。

ビジネスモデルを適切に理解できているかどうかは、この後のコンテンツ制作の精度にも影響します。その意味でも、ビジネスモデルは確実に抑えておきたいと考えています。

2. 機能と価値の構造化

課題解決が基本となるBtoB商材には、機能的便益が必ず求められます。

しかし無形商材や訴求テーマの抽象度が高い商材であったりする場合、「トータルソリューション」のような曖昧なコピーで機能性を表現し、結果顧客に伝わらなくなる、ということが頻発します。このような事態を避けるために作られるのが「機能構造マップ」です。

機能構造マップの根底にあるのは、すべてのBtoB商材の機能的便益は構造化できる、という考え方です。

例えば営業支援ツールであれば、「顧客情報管理機能」「パイプライン管理機能」「ファイル管理機能」「ユーザー管理機能」などに機能が大別され、より詳細なサブ機能が階層的に内包される構造になっています。

これはプロダクトだけでなく、サービス型の無形商材も同様の構造になっています。

例えばベイジのウェブ制作は、人が提供するサービス型の無形商材ですが、「戦略提案」「情報設計」「ビジュアル設計」「開発」「運用サポート」などにサービスメニューが大別され、サブサービスがそれぞれに内包されています。

このような構造を明らかにできる機能構造マップを作ることで、私たちがお客さまの商材を理解するとともに、お客さまが自らの商材を構造的に把握することを支援します。

この機能構造マップと並行で作られるのが「価値構造マップ」です。

機能というのは提供者側の視点ですが、顧客としては機能が提供する価値を感じることで、そこにお金を投資する、という判断になります。つまり、機能構造と価値構造とは、提供者視点で商材を見た時と、顧客視点で商材を見た時の違いであり、両者は鏡で映したかのように対の関係になる、というのが根底の考えにあります。

機能構造マップができあがったら、構造をそのまま活かして価値構造マップを作ります。この時、対応する価値が作れない、この価値は顧客はさほど求めていない、という機能を見直したり、商材を訴求ポイントや説明コピーに反映したりする材料にしていきます。

実際のフォーマットとしては、機能構造マップと価値構造マップは1枚のシートに併記し、照らし合わせることができるようにしていきます。

3. 便益性と独自性の整理

売れ続ける強い商材は、①ないと困る、②これしかない、③伝わっている、の3つが満たされています。

①の「ないと困る」とは便益性(便益の強さ)です。「ないと困る」と「あると便利」だと、「ないと困る」の方が購入意向が圧倒的に強くなります。さらに「ないよりはいい」という商材だと、購入意向はさらに弱まります。便益性が高いほど購入意向は強くなり、売りやすくなります。

②の「これしかない」とは独自性です。ないと困る商材でも、その商材を多くの企業が提供していると、選ばれる確率は下がります。「これしかない」があれば、選択肢はその商材だけになり、その上で①を満たせば、自動的に選択される状態になります。

③の「伝わっている」は、①②が伝わっているかどうか、という話です。ないと困るほどの商材でも、その自覚がなく、困ってるのは仕方ないと捉えている人は、その商材を買おうとはしません。本当は独自性がある商材でも「他と大差ない」と思われていれば、その商材は選ばれにくくなります。

このうち、③はマーケティングコミュニケーションの工夫で解決すべき問題です。それを実行するにまず、①②が明確である必要があります。つまりこのステップで行うのは、ウェブサイトを含むマーケティングコミュニケーションの必要な①②の明確化です。

より具体的には、機能構造マップ/価値構造マップを参考にしながら、顧客理解の中で作った「顧客タイプシート」の中の「便益性」と「独自性」の項目を埋めていきます。

顧客タイプごとに便益性と独自性を設定するのは、顧客タイプが違えば、同じ商材でも訴求する便益性や独自性が変わるためです。

例えば私たちベイジの「BtoB向けウェブ制作」という商材にも複数の顧客タイプが存在します。例としてあげる以下の2つの顧客タイプを顧客視点で見比べても、それぞれ便益性と独自性が異なります。

顧客タイプA

顧客の要望:BtoBマーケティングを理解して提案できる制作会社
求める便益性:BtoBマーケティングとウェブ制作の両方に詳しいこと
あると嬉しい独自性:BtoBのウェブ制作に最適化した独自メソッド

顧客タイプB

顧客の要望:安心して進行できる制作会社
求める便益性:ウェブ制作の進行が上手なこと
あると嬉しい独自性:ウェブ制作の進行を100のタスクに分解した独自ワークフロー

このように、顧客のタイプ分けのベースとなる「顧客の要望」が異なると、伝えるべき便益性・独自性が変わります。マーケティングコミュニケーションの典型的な失敗として、顧客タイプを無視した画一的な便益性・独自性のアピールがあります。顧客タイプ別に便益性と独自性を考えることで、こうした初歩的な失敗を回避する狙いがあります。

便益性に関しては、先ほども話したように「ないと困る」が理想です。しかし現実は必ずしもそうもいかず、以下の4段階に分かれます。

  1. ないと困る(必然的購入意向)
  2. あると便利(肯定的購入意向)
  3. ないよりはいい(消去法的購入意向)
  4. 必要ない

4であることはほぼないので1~3のいずれかに当たりますが、3に近づくほど、該当する顧客タイプに対して購入意向を維持するのが難しくなります。

また独自性に関しても、

  • 確かに独自性ではあるが、顧客にとっては価値がない
  • 企業は独自性と思ってるが、顧客には他の選択肢が存在する
  • 独自性がなく、比較された上での優位性で購入されてる
  • 独自性も優位性もなく、他の要因で買われている

のように、必ずしも「これしかない」という理想の状態にあるとは限りません。このような便益性と独自性における理想と現実を直視した上で、ウェブサイトに掲載するマーケティングメッセージの基本的な方向性を定めていきます。

4. ブランドの構造化

「ブランド」「ブランディング」という言葉に、世界的に決まった定義はありません。そのため人それぞれの「ブランドの定義」が間違いだとは断言できません。しかしともにプロジェクトを進める上では、定義が曖昧だと議論も曖昧になり、その結果ウェブサイトやコンテンツの方向性がブレることになります。

ウェブサイトリニューアルのRFPを拝見すると、「見映えを良くする」という意味で「ブランディング」という言葉が使われることがあります。しかし「ブランド」「ブランディング」という言葉や概念を突き詰めて考えると、見映えの話では終わりません。

私たちはブランディングとは、以下のような関係性を作るものという定義をしています。

まず、ブランドとは「顧客の記憶」の話であり、完全にコントロールできるものではなく、働きかけることしかできない、という前提に立っています。

その上で、「顧客の記憶」の問題であるなら、見た目を変えなくても、良質な商材を提供し、それが顧客に指示され続け、事業が成長すれば、ブランドは勝手にできていく、と考えることもできます。実際に、「意図的なブランディング」を否定し、事業を拡大させることが一番のブランディングになる、という考え方をする人もいます。

このあたりのブランド論は、本記事の中では語り尽くせません。ベイジが考えるブランド論についてはもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

BtoB企業はブランディングとどう向き合うべきか?

さて、ブランディングに関するこうした様々な見解や議論がある前提で、BtoB企業のウェブサイトにおいて「ブランド」や「ブランディング」を取り扱う際には、まず以下のような仕分けが必要だと私たちは考えます。

  1. 「いわゆるブランディング」の検討が必要か
  2. 「いわゆるブランディング」の検討は不要か

ここで「いわゆるブランディング」という言い方をしているのは、先ほどもお話ししたように、顧客を獲得する事業活動をしていれば自然にブランディングになる、という側面があるからです。ここでいう「いわゆるブランディング」とは、そうした自然獲得できるブランドではなく、アイデンティティやコンセプトを明確に定義してコミュニケーションを取っていくような、意図的なブランディングを指します。

ウェブサイトのリニューアルの目的として、この「いわゆるブランディング=意図的なブランディング」が非常に重要であり、ブランド戦略に基づくコミュニケーションと同期をとっていな帰ればいけない場合があります。これが1にあたります。

このようなときは、私たちのブランディングの手法を用いつつ、お客さまのブランドの考え方、世界観をインプットし、必要に応じて議論をしながらミッションやレゾンデートルまで遡ったブランディング検討に並走していきます。(※詳しいプロセスは「BtoBブランディング」でご確認ください)

特にリブランディングと並走して始まるコーポレートサイトリニューアルのプロジェクトの場合、単に顧客獲得向けの機能的なコンテンツやUIだけでなく、コーポレートブランディングで定められた文脈に則ったコンテンツやビジュアルを掲載していく必要が生じます。このような時は1を前提としたアプローチが必要です。

その一方で、多くのBtoB企業のウェブサイトの制作プロジェクトにおいて、以下のような理由から、「いわゆるブランディング」が重要テーマになることは比較的少ないと考えます。

  • 実態として、シェアを獲得する活動自体がブランドに直結している
  • 事業課題として「いわゆるブランディング」の重要度が低い
  • 商材特性・顧客特性として「いわゆるブランディング」の効果が薄い
  • ブランディングは重要だが、ウェブサイトの検討以前に定義されてる

これが2にあたります。

このように、ウェブサイトの検討をする上で、「いわゆるブランディング」を議論しなおすような必要が薄い場合は、ウェブサイトのコンテンツやビジュアルに必要な項目のみをヒアリングし、それを私たちのインプットをして、ブランドの検討を終えます。

こうしたヒアリングでは、ブランドストラクチャーやブランドピラミッドなどのフレームワークを用いることもあります。しかし、これらを埋めること自体が目的ではないため、適宜カスタマイズをしながら、お客さまの考えているブランドの世界観を受け取り、コンテンツやビジュアルのヒントにしていきます。

5. 競合の定義

「競合はいますか?」という質問をすると、「うちには競合はいません」という答えが返ってくることがあります。事業に没入し、愛情と誇りを持っている責任者の方ほど、そうした回答をすることがあります。しかしこれは、顧客視点で見たときに、果たしてそう言えるででょうか?

「競合はいない」という時の競合とは、多くの場合「同じ商材カテゴリの競合」を指しています。NTTドコモにおけるKDDIやソフトバンク、セブンイレブンにおけるファミリーマートのような関係性を想像しています。確かにこうした企業同士の関係性は分かりやすく競合といえます。

BtoBでもこうした競合が存在するサービスやプロダクトは多く存在しますが、BtoBは全体の顧客数が少ないことが多い上、市場をセグメントしたり、機能の打ち出し方を変えたりの工夫によって「似てる競合はいない」という状態を比較的作り出しやすくあります。

しかし「似てる競合はいない」は提供企業側の認識であって、顧客企業からすれば「事業上・組織上の課題解決をするための選択肢は他にある」ということが往々にしてあります。商材カテゴリとしては特殊で独自性が高いSaaSのプロダクトであっても、顧客の中でExcel運用と経済合理性を比較されているのであれば、例え商材カテゴリ上の競合はいなくても、課題解決の手段としての競合は存在する状態ともいえます。

このような市場環境に置かれている商材が「競合はいない」という自己認識をしていると、マーケティング施策の精度低下に繋がりやすくなると私たちの経験則的に考えます。

このような競合状況を整理するために、私たちの戦略フェーズでは「競合マップ」と命名されたフレームワークを使うことがあります。

これはマイケル・ポーターのファイブフォース分析からヒントを得て作ったもので、商材における実質的競合を「直接競合」「間接競合」「代替品」「新規参入者」の観点から整理したものです。その上で、それぞれの競合への対応方針を明確にしていきます。

また、競合を洗い出したら、その競合との関係性を、ポジショニングマップにまとめて、可視化します。

ポジショニングマップでは縦軸と横軸に差別化を作り出す要因を配置し、その象限の中での競合との位置関係を掴んでいきます。また、この縦軸と横軸について、企業側に都合のいい設定をしていると、「顧客からはそうは見えていない」というポジショニングに陥りがちです。ここでも顧客視点を前提にして定義する必要があります。

なお、この競合定義についても、便益性や独自性と同じく、顧客タイプごとに作っていきます。なぜから顧客タイプ=抱えている課題の違いによって、競合が変わり、市場が変わり、ポジショニングは変わっていくからです。

6. 基本ストーリーの設計

ウェブサイトの制作プロジェクトの中で顧客や商材の理解する一番の目的は、そこで得た示唆をコンテンツに反映することです。

しかし、ここまで議論した顧客や商材の前提からコンテンツにはまだ飛躍があり、すぐにコンテンツ制作に移行するには、難易度の高さがあります。

そこで、顧客や商材の戦略とコンテンツを繋ぐためツールとして「コア・オブ・ストーリー」というものを、ベイジの戦略フェーズの中では作っていきます。

コア・オブ・ストーリーとはその名の通り、ストーリーの核になるもので、コア・オブ・ストーリーで定義されたことを軸に、ウェブサイトのコンテンツを展開していきます。

ウェブサイトに限らず、マーケティングコミュニーションを実現するためのコンテンツに、一貫性がないということは、頻繁に起こります。ウェブサイトとパンフレットと営業資料とメールマガジンとウェビナーで言ってる内容が異なる。ということでは、せっかく複数のタッチポイントで接点を持っても、マーケティングメッセージやブランドメッセージが適切に伝わってこない、ということになります。

またウェブサイトの中でも、特長を紹介するページ、機能を紹介するページ、アフターサポートを紹介するページで、話の焦点がブレていると、「この商材の特長や強みは一体何なんだろう?」と迷わせてしまいかねません。

こうした「コンテンツの一貫性の欠如」を避けるために、コア・オブ・ストーリーは役に立ちます。

コア・オブ・ストーリーは、ダイレクトマーケティングで活用されているフレームワークを元に、「問題提起、結果、実証、信頼、安心」と顧客タイプごとに作っていきます。

「問題提起」は、想定される顧客が抱えている問題です。「よく分かってくれている」「まさにそうなんだよ」あるいは「それは気が付かなかったが確かにそうだ」という言葉を引き出せるような問題提起が理想です。

「結論」は、想定される顧客に真っ先に伝えたい結論です。ウェブサイトのメインメッセージの原案になることが多いです。

「実証」は、「結論」を証明する情報です。通常は特長やセールスポイントとして扱われるものですが、企業側の独りよがりな特長ではなく顧客が求めているニーズであること、そして問題提起を解決しうる内容である必要があります。

「信頼」は、その商材や提供企業が信頼が置けることを示すエビデンスです。企業規模、上場の有無、主要取引先、役員の経歴、第三者評価などがこれにあたります。

「安心」は、ネガティブな憶測に対する説明です。顧客の声、満足度調査のデータ、サポート体制、セキュリティなど、批判的な目で見る顧客に先回りするような情報です。

こうした問題提起→結論→実証→信頼→安心のストーリーを作り、これを満たすようにコンテンツを配置していきます。

このようにコンテンツ設計することでウェブサイトに一貫したストーリーと説得力が生まれると考えています。

7. アイデアの整理

1~6までのインプットや議論をしながら、ウェブサイトに反映しなければならないアイデアをリストアップしていきます。アイデアは『要求リスト』というスプレッドシートに整理され、ウェブサイトが満たすべき要件となっていきます。

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