ウェブ制作 仕事の進め方
2-4-5. コンテンツ
「コンテンツ・イズ・キング」という言葉はビル・ゲイツのエッセイのタイトルだったそうですが、その後にGoogleもこの言葉を提唱するなど、「コンテンツ・イズ・キング」は常にウェブの中心的概念であり続けました。それは様々なプラットフォームやデバイスが登場して社会が変わった現在でも変わりません。そしてまた、BtoB企業のウェブサイトという特定の限られた用途のためのウェブサイトでも全く同じです。
ベイジの戦略フェーズはここにいたるまで、会社(Company)、顧客(Customer)、商材(Product)、チャネル(Channel)と、4つのテーマに沿って検討を進める流れになっています。チャネルではナビゲーション設計のための検討も行いますが、多くは最終的に「どんなウェブコンテンツを作ればいいか?」という議論に帰結します。つまり、戦略フェーズの旅の執着地点と言えるのがこのコンテンツ(Contents)のステップになります。
ここでは、以下のような3段階の検討を行っていきます。
- エントリーポイントの洗い出し
- コンテンツのリストアップ
- コンテンツの構造化
1. エントリーポイントの洗い出し
「ウェブサイトにどのくらいのコンテンツを載せるべきか?」という質問をしばしばいただきます。そんな時に私たちは「リソースが許す限りできるだけ多くのコンテンツを載せた方がいい」という回答をします。
理由は単純明快で「できるだけ多くの接点があった方が、顧客化の機会が増えるから」ということになります。
基本的なメディア特性として、ウェブサイトはコンテンツの掲載量や掲載期間によってコストが上がっていきません。これが広告との決定的な違いです。広告は掲載量(掲載面)や掲載期間に比例してコストが上がるため、無闇な出稿はできず、費用対効果の高い広告に絞っていく必要があります。
一方のウェブサイトは、いくらコンテンツ載せても理論上コストが上がらないため、コンテンツをできるだけたくさん載せ、ニッチなニーズを持った顧客にも対応する、ということができます。つまり、ロングテール戦略が取れるということです。
さらにBtoBに関して言えば、一般的に顧客単価やLTVが高い傾向にあります。例えば1ヶ月に5人しか見ないニッチコンテンツであっても、1年間に60人が見て、その中の1人が数千万円の成約をもたらすのであれば、そのコンテンツは費用対効果が高い、ということになります。このことは、BtoBにおいてはUU数やPV数でコンテンツの価値を測れない、とも言えます。
一方で「このコンテンツは1年以内に数千万円の売上になる」とは誰にも言えません。だからコンテンツをできるだけ多く掲載してチャンスを作っておく、という「エントリーポイント」の考え方が必要になります。
エントリーポイントという言葉は顧客(Customer)のパートでも登場しました。考え方は同じですが、ここではコンテンツ起点でのエントリーポイントを検討します。言い換えれば、「顧客化に繋がるコンテンツにはどのような種類のものがあるか」という議論をすることになります。
エントリーポイントは、コンテンツカテゴリとして抽出していきます。これまでの顧客や商談をヒントに、最初はできるだけ網羅的にリストアップしていきます。
2. コンテンツのリストアップ
ここでは、会社(Company)、顧客(Customer)、商材(Product)、チャネル(Channel)、およびエントリーポイントの検討の中で発案されたコンテンツをこの段階ですべてリストアップしていきます。これをコンテンツリストと言います。
その上で各コンテンツの大まかな内容、基本ストーリー、図や写真などの素材の必要性、主なターゲットなどを明確にします。また既存のウェブサイトのコンテンツがそのまま使えるのか、営業資料などのコンテンツが流用できるのか、あるいは新規に作成しなければいけないのか、なども明記していきます。
繰り返すように、ウェブサイトに掲載するコンテンツはできるだけ多い方が望ましいですが、現実的には制作リソースの問題などもあるため、「顧客化の確率」「顧客化した時の金額の大きさ」「制作の難易度」などから総合的に判断し、ウェブサイトに掲載するコンテンツを選定していきます。
3. コンテンツの構造化
コンテンツがリストアップされたら、コンテンツをグルーピングし、サイトマップの形に近づけていきます。このラフなサイトマップの状態を、ハイレベルサイトマップと呼んだりもします。
またこの段階で、詳細なサイトマップ「サイトストラクチャ」まで一気に落とし込むこともあります。(サイトストラクチャについては情報設計フェーズを参照ください)
なお、顧客獲得を主目的とするBtoBサイトのコンテンツは、概ね以下のような種類に大別されます。
- ホーム
- 特長
- ソリューション
- サービス
- 機能
- セキュリティ
- 導入までの流れ
- 導入事例
- アフターサポート
- 価格
- イベント・セミナー
- 資料ダウンロード
- お問合せ
- メディア
- お知らせ
ウェブサイトがコーポレートサイトの役割を担う場合には、ここに会社情報、採用情報、IR情報、CSR情報などのコーポレート系のコンテンツが加わります。
このような一般的な構造をベースとしながら、リストアップされたコンテンツをどのカテゴリに格納していくかを検討し、カスタマイズしていきます。
ここまで来たら、戦略フェーズはほぼ終了の段階になり、クロージングに入っていきます。