ウェブ制作 仕事の進め方
2-2. 調査
戦略フェーズの調査で実施する内容は、プロジェクトによって大きく変わります。
調査をするほど理解の解像度は高まり、アイデアの材料は豊富になります。一方で、過剰な調査は予算を圧迫し、プロジェクトの長期化、意思決定の停滞、それによる機会損失を招きます。
調査で得られる結果とは、過去の出来事に過ぎません。いくら入念に調査を 繰り返しても、これから起きる未来を確実に言い当てることはできません。
元AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスは「70%の情報から意思決定する」という話をしています。調査を重ねて100%の情報を集めようとすると、いつまでたってもスタートが切れません。「軌道修正が得意ならば、間違えるコストは大したことがなく、遅いことのほうがよほど高くつく」とも語っています。
私たちも似た考えを持っています。回避可能な失敗を避けるために、ある程度の調査は必要です。ただし調査が行き過ぎると、マイナスの効果が上回るようになります。適度な調査で前進し、進めながら軌道修正していく。その方が費用や時間のより有意義な使い方になると考えます。
このように、調査を進めるうえで、調査内容の取捨選択が不可欠ですが、その障壁となるのが、多種多様な調査のバリエーションです。○○調査、○○リサーチなど、様々な名称で呼ばれているものが調査と呼ばれる行為の中に内包されています。これらはそれぞれが異なる視点で複雑に絡み合っているために、調査を取捨選択する時に混乱をきたすことがあります。このような場合においては、①調査対象、②データ形式、③調査手法、④アウトプットの4つに分類して捉えると、整理して考えることができるでしょう。
調査対象
調査の範囲や手法を決めるにあたって、そもそも何を調べたいのか、何を知る必要があるかを決める必要があります。それが調査対象です。調査対象は大きくは、マクロ要因、外部要因、内部要因に分類することができます。
マクロ要因
PEST分析の考え方を元に、ウェブサイトが対象としている企業や商材に影響を与えるマクロ要因を調査します。主に機会と脅威の把握に用います。なお、マクロ要因で対象とする事象は非常に大きなものが多く、そのことは結果的に目の前のウェブサイトやコンテンツの制作に影響を与えないことも少なくありません。そのため、どのくらい時間や費用をかけてマクロ要因の調査を実施すべきかは、冷静に捉える必要があるでしょう。
- 経済動向
- 技術動向
- 社会・文化
- 政治・法律
- 宗教・歴史
外部要因
ファイブフォースの考え方を元に、事業や商材と関与する外部要因を調査します。経営観点ではこのすべての現状把握が必要となりますが、マーケティング観点では特に顧客と競合の理解に重点を置くことが多いです。顧客に関しては、さらに細分化された様々な調査手法を組み合わせて実施することが求められます。
- 顧客(ユーザー)
- 競合
- 代理店
- 仕入れ先
- 代替品
内部要因
VRIOの考え方を元に、商材や経営資源などの観点から調査を実施します。内部要因になるためヒアリングが元になりますが、各項目について顧客の認識、競合との比較を調査する必要がある場合、ヒアリング以内の調査手法を用います。その意味では、調査という観点で厳密に捉えると、外部/内部の区別は曖昧であるともいえるでしょう。
- 商材特性
- 価格
- 流通
- 組織体制
- ブランド
- 資産・負債
- 企業文化・組織の性格
- 保有技術・インフラ
- 所有するコンテンツ
- ウェブサイト
- その他、事業上の制約
データ形式
何を知るべきかという調査対象がある程度定まったら、その対象に対して、どんな種類のデータを求めるか、あるいは取得可能かを決定します。それによって、定量系の調査をすべきか、定性系の調査をすべきかが、自然に決まっていきます。なお、定量系は主に群の理解、定性系は個の理解に比較的適しているといえます。また定量系については、計測可能な技術が存在するかも大きな判断基準となり、難しい場合には定性で代替する、という判断がなされます。
定量系
- 平均値
- 中央値
- 測定値
- 統計データ
定性系
- 感想
- 印象
- 思考
調査手法
調査の対象や求めるデータ形式がある程度定まって、調査の手法が決定します。手法ありきで調査を考え出すと、手段を目的をはき違えた無駄な調査を行ってしまいかねません。調査手法は、目的ベースで考えて決定する必要があると考えられます。
オンラインでできること
- デスクリサーチ
- インターネットアンケート
- ソーシャルリスニング
- キーワード分析
- アクセス解析
- ヒートマップ分析
- オンラインユーザビリティテスト
- オンラインアンケート
オフラインでやること
- エスノグラフィ
- シャドーイング
- サービスサファリ
- ユーザーインタビュー
- アイトラッキング
アウトプット
調査で得られるデータは、それそのものは読み解くのに時間がかかるため、多くの場合は編集されます。この編集された状態がアウトプットです。一般的には調査レポートの体裁を取ることが多いですが、他にもカスタマージャーニーやビジネスモデルキャンバスのようなものも、調査の結果生まれたものであれば、それはアウトプットの一種ということになります。アウトプット方法についても、プロジェクトの性質に合わせて、最適な形式を提案いたします。
調査結果を整理するための主なフレームワーク
- PEST
- VRIO
- SWOT
- ファイブフォース
- 3C
- 4P/4C
- ビジネスモデルキャンバス
- リーンキャンバス
- バリュープロポジションキャンバス
- ペルソナ
- カスタマージャーニー
- ユースケース
- ユーザーストーリーマップ
- サービスブループリント
- コンセプトダウアグラム
- ストーリーボード
- イメージボード
- イメージスケール
このように調査と言っても、様々な視点、様々な手法が存在しますが、ベイジでは調査の基本メニューをご用意した上で、最初にまずヒアリングを行い、お客さまやプロジェクトの実状を鑑みたうえで、不足にならずやりすぎにもならない、最適な調査の組み合わせをご提案していきます。